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中橋修「内包~ここにいる~時と場と人の内に包まれて今ここにいる~」 ハルカヤマ藝術要塞

2012年04月29日 22時40分56秒 | 展覧会の紹介-現代美術
承前)

Osamu Nakahashi “be with-in”

 中橋修さんは1948年生まれ、札幌在住。

 当初は絵画を制作したが、1990年代後半から団体公募展をやめて立体造形、インスタレーションに転じ、個展を中心に毎年個展をひらいている。
 その活発な制作・発表については、下のリンク先の多さを見ても分かると思う。

 会場はギャラリーが多いが、個人の邸宅で開いたり、クラシック音楽奏者とのコラボレーションに取り組んだり、さまざまな試みをしている

 屋外での発表は、筆者の記憶する限りでは、初めてではないか。




 今回の作品は、写真で見てもすぐに位置関係がわかりづらいかもしれない。

 上から見ると、こういう位置関係になっている。

 ▲

● ━━━━━ ■ 


 横棒は、細長いスリット状の穴で、両の端に階段がついていて、中におりることができる。上から見ると細長いが、中央の深いV字型。まん中あたりは相当な深さがあり、階段をおりて入ってみると、左右の土壁は、相当な圧迫感がある。

 掘り出した土は、三角の場所に、山にして積み上げている。
 頂上にイタドリの芽が出ていた。

 ● と ■ のところには、塔のようなかたちの立体が立っている。
 いずれも高さは183センチ。

 アクリルのため、周囲の木々などが映り込む。
 
 溝(━━━━━)の土壁の中に、黒い玉のような石がところどころに埋まっている(下の写真)。同様の石は、あたりにもちらばっている。

 中橋さんのサイトによると

「黒い玉は人間を意味していて、地表の玉は現在を共に生きている人達で地中の玉 は過去に繋がる人達  
 掘り出された土の山は時を象徴している」

とのことである。



 中橋さんは来場者に次のように説明していた(これも、サイトからコピー)。
 ちょっと長くなるが、省略すると意味合いがそがれるので、全文を引用する。

 「このアクリルの立体の前に立つと、自分の姿が大きい自分と小さい自分の2重に写って見えます。
それは、生まれたときからの自分がずっと繋がっていてちょっと前の自分を見ていると思ってください。この山側の閉ざされた空間には自分の過去が収められています。そして、ぐっと顔を近づけると少し距離を置いて今現在の自分をしっかり見つめている自分に出会えます。そこで、今、私はここにいるというのを実感してほしいのです。
その上で、後ろに向きを変えてください」

「振り向いて、その先に見える箱の中には自分が写っていないと思います。なぜかというと、向こう側は未来だからです。これから自分が埋めていく空間なんです。その先には果 てしなく広がる海に繋がってます。それは限りのない時間も意味してるのです。大事なのはあの区切られた空間はあなたのために用意されたものだということです。そして、目の前にあるこの階段は未来に繋がる階段なんですが、今一度、自分の原点に立ち返り、身も心も軽くするための階段だと思ってください」

「過去の重荷を捨てるつもりで一歩一歩踏み締めながらゆっくりゆっくり下りてください。土に潜るというのは時を遡ることにもなるんです。それは、自分の体と目線が大地に帰るという意味もあります」

「できれば、真ん中の大きな石の上で立ち止まって、原点にいて土に囲まれている自分をかみしめてほしいです。
そうすると非日常の不思議な感覚に入られると思います。そして、そこから前を見上げると自分に用意された未来がちゃんと待っていてくれるのがわかります。だから、安心して階段を上り未来に向って進んでください」

 「階段を上って来たあとに対面する明るく果てしない空間は清々しく見えませんか。少し上部を見上げると周りの木々もきれいに映り込んでいてこの場と一体になっていることがよくわかります。ちょっと不思議な体験を楽しんでもらえて、なおかつ何だか身も心も軽くなって前に進む力が湧いてきてもらえたなら嬉しいです」


 人間の一生を、あるいは死と生とを、大づかみにする野心的な作品なのだ。

 中橋さんは会期終了後も現地に通ってメンテナンスをしている。
 今後も見られる機会がありそうだ。


中橋さんのサイト Art Works NAKAHASHI □http://www5.ocn.ne.jp/~naka565/

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