昨年12月、インドの女性外交官Devyani Khobragade を、彼女が採用した女中の給与をめぐるビザの不正取得、書類虚偽記載の疑いにより逮捕、裸にしての身体検査を行ったことで米印の一大外交問題にまで発展した事件で、管轄の米国の地区裁判所は同人に外交特権を認めてニューヨーク地方検察庁の訴追を却下したことが判明した。事件後、インド政府は更なる事態の悪化を避けるため釈放後ただちに同人をインドに帰任せしめ、現在はデリーのインド外務省で勤務している。
本件は、当初からNY地検の勇み足、あるいは日頃からの外交官に対する悪感情に基づく愚挙と思われていたが、米国政府機関の行為であり、米国務省もはじめは地検の行動を黙認していた。しかし、インド側としては到底容認できるものではなく、インドにおける米国外交官へのきびしい報復処置にまで発展するに至って、ケリー長官も落としどころを探ってきたもの。
地検は更に本件追及の可能性を否定していないがこれは単に面目を施すための常とう手段でしかない。要するに地検を悪人にして幕引きを行ったものだが、米国にとっては外交上の失点であることには違いない。ウクライナでプーチンのロシアの陽動作戦に手も足も出ないオバマ政権の無策ぶりだけが目に付くここ数日だが、この幕切れも米国の威信のさらなる低下をもたらすものとなるのだろう。