現在の1ポンド硬貨が導入されて30年、その間の技術進歩によって偽造1ポンド硬貨が頻繁に出回っている(4500万枚と推定されている)ことから、コインパーキングなどでそれと知らずに精巧な偽造コインをつかまされた顧客がトラブルになるなど社会的な損害も無視できなくなってきた中、英国大蔵省は新しい1ポンド硬貨の導入を決定、2017年から流通させるとしている。既に、国民にかつて人気の高かった、1971年に廃止された旧貨幣制度での12角形の3ペンス硬貨とおなじ12角形の形状とすることが決められている。大蔵省によれば、偽造対策としては世界最高水準になるものと自負している。造幣はこれまでと同様、ロイヤルミント社が担当。硬貨の表(Heads Side)は女王の肖像が入ることになっており、すでに図柄も決まっているが、裏(Tails Side)のデザインはこれから公募することになっている。新硬貨は今の1ポンド硬貨とほぼ同じサイズで、スーパーのトロリー(英国では1ポンド硬貨を入れてからスーパーのトロリーを使用することが出来る。買い物終了後には返却される仕組み)、路上パーキングメーター、自動販売機などでは新旧共通して使用できる見込み。
自分は今の1ポンド硬貨が導入された時には英国に駐在していて、それまでの1ポンド紙幣から切り替わった時のことを鮮明に覚えている。そして、厚みのあるどっしりとした1ポンド硬貨に伝統と格式を感じたものだ。個人的な感想だが、通貨価値としてはそれより遥かに高い500円硬貨よりも存在感があった。硬貨の偽造対策は各国とも頭を悩ませているところであり、英国としてはこの新1ポンド硬貨導入の成功によって、世界中の大蔵省からの硬貨造幣の発注を期待しているのだろう。
今の1ポンド硬貨には愛着があるが、一方で、かつて人気のあった3ペンス硬貨を模したという偽造しにくい新硬貨の登場も愉しみだ。新1ポンド硬貨の表(Heads Side)を。