かれこれ10年くらい前になるが、都市ガスの配管工事のために庭のつつじを撤去し、工事が終わった後に植えた沈丁花は、どちらかといえば日陰を好むせいなのかなかなか大きくならない。まだ咲き始めで可憐な花だが近づくと間違いなく香りがしている。花言葉の栄光や不滅、というのはこの小ぶりな花が縁起の良いものから来ているのだろう。
この花は西洋では香りのダフネと言われている。キューピッドから金の矢を射られたアポロン、やはりキューピッドから鉛の矢を射られたダフネは、アポロンの追跡を逃れて結局は月桂樹に身を変えた。ギリシャ神話の時代から追いかける男と、意にそわない男から逃げる女の構図があったということ。でも、月桂樹にまで身を変えたダフネの心情はどんなものだったろう。アポロンが追いついたときには既に月桂樹に変身しつつあったというダフネだが、逃げおおせただけでも善しとしなければならないとすれば切ない話だし、ダフネを思って終生月桂樹の冠をつけたというアポロンの話も切ない。
そしてアポロンの月桂樹の冠が古代オリンピックにつながり、今はウクライナ問題の陰に覆われたソチでの五輪となっているわけでなんだか複雑な感じだ。