中国企業に扮したおとりインタビューでの発言で英国の前国防相、外相を務めたマルコム・リフキンド卿が政界引退を表明した。このおとりインタビューで、一時は保守党のエースとも言われた68歳の政治家は自分の個人的ネットワークを誇示した上で、見込まれる報酬額を臆面もなく発言するとともに、いかにも物欲しげな言い方を繰り返して(時間が有り余っている、自分は自営業者のようなもの、といった)見苦しいことこの上ない。さすがに首相官邸も国会の委員長職および政界引退を迫らざるを得なかった。
保守党政権下で幾多の大臣職を歴任し、貴族の称号まで得た老獪な男も、カネに対する執着心を抑えることができなかったわけで、いまさらながら人間の業のようなものを感じる。そういえば、一時は清廉な政治家のイメージのあったブレア元首相もカネの匂いに敏感な金満体質に変貌してしまった。元首相のこういう姿を見せつけられたら、リフキンド程度の人間は歯止めをなくしてしまうのだろう。実際に不正をしたわけではないが、政治家としての矜持を完璧に失ったマルコム卿を見るのはいかにも忍びない。議員辞職後は誰憚ることもなく報酬を受け取れるということで本人はすっきりした表情のようだが。