ちょうど1年前の今日、「芸術のパラドックス」という題名で、芸術と政治、あるいは自由との複雑で皮肉な関係を思いつくままに書いた。ソチ五輪の直前で、すでにロシアとそのほかのG8諸国の亀裂は大きかったけれども、まだどこかに解決の糸口があるのでは、との期待があった。それから1年、ウクライナをめぐる対立がこれほどまでにエスカレートするとは、想像もできなかった。そしてここ数日の、ウクライナ東部での内戦は、中東での戦闘を見ているようでおぞましいの一言に尽きる。今思えば、ほんの一年前、世界はまだ平穏だったのだ。
ここ数日、NHK BSで「アウシュビッツ解放70年」というドキュメンタリー番組が再放送されている。もう30年以上も前になるが一度だけ、アウシュビッツの跡地を訪れてその歴史の重さに圧倒された。その時の感覚が突然よみがえったのは、911で倒壊したワールドトレードセンターの跡地に立った時のことだ。自分はあまり霊感の強い方ではないと思うのだが、この2回は、まるで後ろから何者かに背中を突かれたような衝撃を覚えた。どこかにこの二つに何か通じるものがあったのかもしれない。