彦根の歴史ブログ(『どんつき瓦版』記者ブログ)

2007年彦根城は築城400年祭を開催し無事に終了しました。
これを機に滋賀県や彦根市周辺を再発見します。

『幕末土佐人物伝』講演聴講報告

2011年05月27日 | 講演
5月26日に、
ひこね市民大学講座 歴史手習塾の セミナー7『幕末を駆け抜けた志士たち!』
2回目の講演として「幕末土佐人物伝」と題されたお話がありました。
講師は高知県立坂本龍馬記念館主任学芸員の三浦夏樹さん。


土佐藩の身分制度が、『龍馬伝』で描かれたような過酷さではなかったこと、土佐藩では天明庄屋同盟というものがあり、庄屋は天皇直属の家臣であるという考えから尊王思想が高くなり、その中から吉村虎太郎や中岡慎太郎の活動があったこと。
武市家は、江戸初期からの土佐藩の家臣であり、藩に対する忠誠が高く、坂本家は江戸中期に郷士となった新規郷士であり、龍馬は次男坊だったために脱藩しても罪には問われる立場ではなく、武市半平太とはおのずと立場が違ったこと。
などの話がありました。

また、土佐の人々の気質は、個人の信念が強く、藩として纏まれなかったために大きな勢力にはなりえなかったそうです。
吉田東洋を中心に藩を纏めていけば、もっと大きなことができたのかもしれませんね。


そして恒例の《質疑応答》
(質問者)
脱藩についてお話があり、長男は罪を受けるけど次男はそうでもない。というのは土佐藩だけだったのでしょうか?
海援隊は脱藩した者を受け入れましたが、追手はいなかったのでしょうか?
また、国を出るときにどういうルートを通っていたのでしょうか?
(三浦氏)
他の藩でどうだったのかは、個別に当たったことがないのでわかりませんが、おそらくほぼ同じような状況だったと思います。跡取り以外は正式な藩士ではないので、龍馬の身分は慶応3年でも最後の最後まで、“土佐藩郷士坂本権平弟”であり“郷士坂本龍馬”ではありません。これはどの藩でも同じだと思います。次男坊以下はよほど大きな事件を起せば別ですが、そうではない限りは一家に類が及ぶことは他の藩でもあまりないと思いますが、それぞれの藩で微妙に法律が違うので、多少の違いはあると思います。
追手があるかどうかですが、脱藩した人について土佐藩は厳しい目を光らせています。それは脱藩した者が朝敵になるかもしれないことを恐れました。土佐藩出身者が朝敵になれば朝廷に対して悪い印象が起こるわけです、ですから常に密偵をつけていますが、無理やり連れ戻すことはありません。多くの場合は国を想って出ていますのでよほど道から外れない限りは処罰をすることはありません。
ただ、関所を越えようとしたときに簡単には越えさせないので、そこで見つかれば連れ戻されます一旦出てしまえば、無理やり連れ戻すことはしていませんが、関所の越え方も大きな問題で、脱藩が秘密の行動なので記録を見たことがありませんが、おそらく関所を迂回するか、場所によっては関所の役人自体が理解を示して見逃してくれますが、記録には残りません。

(管理人)
彦根藩と関わる話として『人民平等の理』が出てきますが、お話の最後で「高知県の人たちは個人的な意見があり、議論が多く、纏まりがない」とのことでしたが、『人民平等の理』から自由民権運動にいたるまで、上士から自由民権運動が起こり、高知が纏まったと思うのですが、このときはなぜ纏まって行ったのでしょうか?
(三浦氏)
ひとつには薩長の世の中になって行く中に維新で大きく活躍をした土佐が入り込む余地がないところから、薩長に対抗する意識から纏まったのではないかと思います。
自由が抑えつけていた上士から出たのは不思議なところがありました。諸藩に先駆けて『人民平等の理』が出て来て実践していくのも土佐です。それまでは山内家と土佐の侍が纏まることはできなかったのですが、やはり戊辰戦争を経て、薩長に対抗してひとつの藩の力として纏まるのは、タカがひとつ外れたのだと思います。それまでは身分の問題を乗り越えることができなかったのですが、明治維新でそれを捨てるときに、上士ももっと早く捨てたいという想いがあったのでしょうができず、戊辰戦争がひとつの契機になったと思います。非常に難しい問題です、下士からそれが出たとなると説明しやすいですが、上士からというのは私も不思議な問題です。

(管理人)
井伊直弼には、どのようなイメージをお持ちですか?
(三浦氏)
私は、吉田東洋と井伊直弼は非常に似た立場だと思っています。二人とも政治家としては有能で、当時としてやるべきことをやった人物です。井伊直弼のやったことは、今までの徳川家の政治を見ると当然のことをしていて、将軍継嗣問題での血の濃さも当たり前のことだと思います、しかし幕末という特殊な時代ですから他の考え方が出てきたわけですが、東洋も直弼も、もっと評価が高くなるべきだと思いますが、そのあと権力を握る人たちによって虐げられたと思います。




来週は、『幕末薩摩人物伝』です。
コメント
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