入院中の母親は、体のナトリウムだとかカリウムだとかの数字が正常に戻っても、目は熱のある間と同じく焦点が合わないままで、しかも声にならない叫びを上げたような表情をずっとしていました。
おまけに一週間の入院は体を著しく衰えさせてしまい、退院時の体の動きは入院時よりややましと言った程度で、退院後の二日間の世話は今まで以上に大変でした。
しかし、今まで母親は幾度となく繰り返された入院の時の『もうこれで寝たきりか』のつぶやきを跳ね返しており、今回もやはりそうだったのです。
今朝は食卓までの距離を、手を添えなくても数歩までは歩くことが出来ました。
朝食は箸こそ使っていませんでしたが、手になじむスプーンを与えたら自分で食べ始めました。
今までは食事中片時も母親から目を離すことのなかった親父が、今朝はのんびりとテレビを見ているのです。
親父の母親に対する心配りは、薄っぺらな『愛』で語られるものではないでしょう。
しかし親父は、母親に優しい言葉をかけている訳ではありません。
『だめだなー!』『こんなこともできないのか!』はしょっちゅうなのです。
しかし、きつい言葉とは裏腹に母親の体を拭く手は優しく、オムツこそさせたままですが体と衣服はいつも清潔に保たれていました。
長い間には夫婦の間で色々と波風もあったようですが、今までがどうであっても長年連れ添った妻を、ボケたことを理由に見捨てたりしない親父には頭が下がります。
おまけに一週間の入院は体を著しく衰えさせてしまい、退院時の体の動きは入院時よりややましと言った程度で、退院後の二日間の世話は今まで以上に大変でした。
しかし、今まで母親は幾度となく繰り返された入院の時の『もうこれで寝たきりか』のつぶやきを跳ね返しており、今回もやはりそうだったのです。
今朝は食卓までの距離を、手を添えなくても数歩までは歩くことが出来ました。
朝食は箸こそ使っていませんでしたが、手になじむスプーンを与えたら自分で食べ始めました。
今までは食事中片時も母親から目を離すことのなかった親父が、今朝はのんびりとテレビを見ているのです。
親父の母親に対する心配りは、薄っぺらな『愛』で語られるものではないでしょう。
しかし親父は、母親に優しい言葉をかけている訳ではありません。
『だめだなー!』『こんなこともできないのか!』はしょっちゅうなのです。
しかし、きつい言葉とは裏腹に母親の体を拭く手は優しく、オムツこそさせたままですが体と衣服はいつも清潔に保たれていました。
長い間には夫婦の間で色々と波風もあったようですが、今までがどうであっても長年連れ添った妻を、ボケたことを理由に見捨てたりしない親父には頭が下がります。