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阪急は「コスト減より安全」…子会社駅員ら840人本社雇用

2008-12-18 22:35:44 | 鉄道・公共交通/安全問題
阪急は「コスト減より安全」…子会社駅員ら840人本社雇用(読売新聞)

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 私鉄大手の阪急電鉄(本社・大阪市、社員約1800人)は、子会社に在籍する駅員や乗務員ら約840人を来年10月1日付で本社の直接雇用に切り替える方針を決めた。

 駅業務などの分社化でコスト削減を進めてきたが、「安全強化を図り、社員の士気を高めるには、本社による一括雇用が必要と判断した」としている。景気の急変で「派遣切り」などの雇用問題が深刻化している。阪急電鉄がコストアップ覚悟の直接雇用に踏み切ったことは、リストラ優先の他産業の動きに一石を投じることになりそうだ。

 阪急電鉄によると、直接雇用に切り替える対象は、駅の業務などを請け負う子会社の「阪急レールウェイサービス(HRS)」所属の約1700人の社員のうち、正社員、契約社員410人、時給制のフルタイム社員230人、学生アルバイトなどの臨時社員200人の計約840人。HRSの正社員は電鉄本社の正社員、契約社員はやはり契約で、というようにHRSでの処遇そのままで転籍させる考えだ。

 16日に労組が受け入れを正式に決定したほか、17日には、HRSの関係社員に電鉄本社への転籍が伝えられた。HRSは駅の売店や駐輪場の運営会社になる。

 HRSが設立されたのは2001年。同年7月に拠点の梅田、中津、十三(じゅうそう)の3駅の業務を受託したのを手始めに03年から全84駅の運営を引き受けている。この方式は首都圏の大手や横浜市営地下鉄にも広がった。

 阪急の特徴は車掌業務にも手を広げたことだ。HRSの社員は、最長3年間の契約社員で入社した後、車掌資格を得るなどしてHRSの正社員に採用される。しかし、電鉄本体の正社員は運転士だけで、電車運行の仕事で電鉄の正社員になるには、運転士に登用される以外に手だてがなかった。

 車掌職には、HRS所属の車掌と電鉄所属の熟練車掌が混在し、HRSの車掌は、親会社の電鉄に“逆出向”する形で乗務する変則的な態勢を取っていた。その結果、HRSと電鉄本体では、同じ車掌なのに賃金や福利厚生で大きな格差が生じることにもなった。

 しかし、JR福知山線の事故で安全性強化の必要性を痛感。最近は鉄道がテロの対象になる恐れも強まってもいる。さらに乗客同士のトラブルなどで運転指令、駅、乗務員が連携して対処する機会も増えたが、駅員への指示はHRSを介さなければ「偽装請負」を疑われ、迅速に対応できない恐れも出てきたという。

 阪急電鉄人事部は「直接雇用によって情報伝達を一元化すれば災害やトラブルに素早く対応できる。駅の機能も高められる」と説明する。来年10月までの間に、待遇格差圧縮の交渉に入る労組も「この時期に雇用安定を図る会社側の決断を歓迎したい」と話している。
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尼崎事故の際、JR西日本が最も批判された点のひとつが「阪急との競合で強引なスピードアップをし過ぎた」というものだった。阪急にしてみれば「安全運行しているこっちと一緒にするなよ」という気持ちもあったに違いないが、その阪急も、鉄道業務分社化という意味では同じであり、JR西日本はただ単に先駆者の後を追っただけなのかもしれない。

その阪急が、尼崎事故を反面教師として分社化から直接雇用に戻すというのだから、なるほどこれは大きな逆転だといえるだろう。

鉄道の現場は安全が第一であるとともに、事故などの異常事態が起きた際は迅速な対応も必要である。その迅速な対応が、偽装請負を疑われてできないというのだから、分社化は人件費を抑えたい経営陣にメリットはあっても鉄道現場にはなんのメリットもないわけだ。

当ブログは以前から、鉄道は車両も施設も保安装置も、そして人間も渾然一体となった高度のシステムであり、それだけに一体として運営すべきだと主張してきた。日本同様、国鉄を分割・民営化した英国でも、複雑な分社化の中で責任の所在が曖昧になった結果、ハットフィールド事故を起こすことにつながった。

責任を持って取り組まなければならない仕事を「みじん切り」にするような分社化は、どの業界でもほどほどにすべきだが、それが安全に直接関わる鉄道の場合はなおさらである。このような観点から、当ブログは阪急の今回の決定を歓迎する。願わくばJRも、現場を混乱させるだけの複雑な分社化に別れを告げ、阪急の英断に続いてほしい。

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