「思いこみ」のメリット・デメリット
では、どうすれば「思いこみエラー」を少なくすることができるのでしょうか?
海保教授によると、事前に調べられるだけの情報を知識として持ち、それから相手とできるだけ話をして、自分が思いみをしていないかどうかチェックすることが必要と説いています。知識を持つこと、そしてファーストタッチのところでコミュニケーションを十分にとること。そうすれば、変な思いこみをしない。あるいは思いこみをしても柔軟に訂正できると言います。
ただ、思いこみというのは便利なものです。例えば「女性とはこういうものだ」と思いこんで見ていくと、世の中がすっきり見えます。頭の中で余計なことを考えなくてす**みます。物事を単純化するというメリットが思いこみにはあるわけです。
さらに、時間的プレッシャーがかかっていて、とりあえず第一印象で目の前の人がどういう人かを決めなくてはならない場合、どうしても思いこみをしないと瞬時に処理できないこともあります。特に初対面の人と接することが多いサービス業では、会った瞬間にお客様のすべての情報を取り込んで、コミュニケーションをして、それから対処しようというのは現実的に不可能です。
ですから、思いこむにしても、それが間違っている可能性もあるという意識、**さらに自分の思いを柔軟に度胸を持ち続けることが重要だと海保教授は言います。
Aという思い込みをしたけれど、これは間違っていたからBという思い込みをしてみよう……、要は思いこみの連続であると考えればいいわけです。人間は相手とのつきあいを深くする**過程の中で、その人の見方を変えることによってまっとうな見方ができるというプロセスを踏んでいきます。しかし、それが1分間とか30秒間などの短い時間ではAという思いこみだけで対処しなければならないケースもしばしばあるわけです。
そこで、最初のAという思いこみができるだけ妥当となるように知識を蓄積しておくことが次に大切になります。例えば、コンビニの店員さんだったら顧客層がある程度わかるわけですし、このタイプの顧客はどういう特徴を持っているかということも**知識から判断できることもあります。そのような知識を持つことによって、100%ではなくても、80%程度はその思いこみで上手くいくという状況を作り出せれば、接客は割合スムーズに進むのではないでしょうか。
初対面の人と話をする場合、お互い警戒心が生まれたり、遠慮が出てくる場合もあります。しかし思いこむことによって、それなりの対応ができ、そこから親密感が生まれてくることもあるわけです。思いこむことは誰しもあることですし、決してデメリットばかりではありません。それをエラーにしないように情報や知識を自分なりに収集しておくこと、そしてエラーしたと気づいたら柔軟に修正していく姿勢が求められているのです。