エラーを未然に防ぐには
「思いこみエラー」だけでなく、どんな段階、どんな状況でもミスは起こりえます。それをできるだけ回避する手段は何かあるのでしょうか?
海保教授によると、自分で自分をコントロールする自助努力、すなわち自己モニタリング能力を高めること、そして状況の方にミスが起こらない仕掛けを作りこんでおくこと、このふたつがうまく機能すればミスはかなり防げると言います。
自己モニタリング能力を高めるには、エラーはどうして起こるのか、エラーにはどんなものがあるのかといった知識を豊富に持つことが必要です。エラーについて知ることで、「自分はこういうときにエラーを起こしそうだから気をつけよう」となるわけです。
そしてもうひとつ、自分で自分を内省する力をつけることも重要です。その訓練法としてよくあげられるのが日記や報告書です。エラーや事故を起こす寸前の「危なかった!」という時の自分の気持ちを日記に書いてみるとか、一定のフォーマットに従って報告するのです。
あるいは新聞やニュースなどで交通事故の記事が出てきますが、なぜそのようなことが起こったのかという原因をよく読んでおく。そうすることで、エラーに対する知識にもなりますし、それを機会に内省することもできます。
一方、状況の中にエラーを防ぐ仕掛けを作り込んでおく例としては、フール・プルーフやフェイル・セーフが有効です。例えば、ガスの栓は押してからひねるようになっています。そうすることによって危ない行為であることを意識させるのです。このような仕掛けをフール・プルーフ「馬鹿なことをしても大丈夫」)と言います。フェイル・セーフは一方が壊れても一方でカバーできるという方法です。「失敗しても大丈夫」という意味があります。
何か行為を行う時に、エラーをしない環境を意識的に作っておくことで、人間が自己コントロールできなくても、**それをカバーすることが可能になります。
とはいえ、不測の事態というのは起こるものです。お客様に不快な思いをさせてしまうことがあるかもしれません。そうなった場合は、素直にミスを謝罪し、迅速に善後策を練る、ひとりで解決できないようであれば一緒に働くスタッフを信じて救援を求める、など冷静で誠実な対応が求められます。エラーはあってはならないこと。しかし、エラーをしてしまった後のあなたの振る舞いこそ、お客様はしっかりと見ているのです。