月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

<月刊「祭」2012.12月 第9号>全てはこの瞬間(とき)のために -差し上げたときに方位が一致する屋台-

2012-12-15 17:25:25 | 屋台・だんじり・神輿-装飾の題材-

今回は2011年12月2日に行われた第31回 京都民俗学会年次大会で発表した内容の中の一部に焦点をあてて、より詳しく紹介します。

●南面する太鼓台・だんじり・屋台

 太鼓台・だんじり・山車などは、天子南面するという道教の思想に従って、前面を南として作られます。例えば、四神ならば南を表す朱雀が前、玄武が後ろ、白虎が右、青龍が左というふうになります。十二支だと、南の午が前、北をあらわす子は後、酉が右、卯が左となります。その決まりに即して、四神や十二支の刺繍や彫り物が配置される太鼓台やだんじりは多数見られます。

また、高欄掛の退治物でも、朱雀に通じる鷲退治は前、白虎に通じる虎退治などが左、青龍に通じる八俣大蛇退治などは左となります。もしくは、鷲を酉として右、八俣大蛇を巳として南をあらわす前、虎を寅として右というようにしているところもあるかもしれません。

  

 

前方に朱雀に通じる鷲退治の高欄掛けを用いる。両側面は白虎に通じる虎退治、青龍に通じる八俣大蛇退治を用いる。

 いずれにせよ、方角を現すモチーフが屋台やだんじり、太鼓台に用いられる場合、南が前、北が後ろという大原則に即して作られるものがほとんどです。しかし、その原則ではなく、自分たちの屋台やだんじりが宮入して、神前に奉納したときに方角が一致するように作られている太鼓台がいくつか見られました。そのこだわりのしかけを紹介していきます。

 

 

●大阪府貝塚市感田神社堀之町太鼓台

 感田神社の太鼓台は、楼門を潜ることができないので、境内には入ることはできません。ですので、大通りに面した東門から神社内に太鼓台をむけ、神社側、つまり前面をさげる=頭を垂れることで拝礼します。
 南西を向く楼門に向かって拝礼したときに、布団締め金具の十二支の方位が合うように飾り金具がつけられています。 

(下図訂正・ 誤「東門」 正「西門」

 

                                                                                 左側の中心に戌(犬)が配置される布団締め金具

 西門前で拝礼する堀の町太鼓

 

●奈良県柏木天満宮太鼓台

 これは、祭礼自体は未確認ですが、南面する神社は太鼓台が通るスペースは到底ありません。また、神社に面している通りは東西の通りで、太鼓台の正面をむけることはできません。それにあわせるように、側面に北と南を現す玄武・朱雀が配置されています。そして前後面に青龍、白虎が配置されていますが、どちらが前面かが写真ではわからなくなってしまいました・・・ 

 いずれにせよ、側面をむけて差し上げたときに、四神の方角が一致するように作られたものと思われます。

   

柏木天満宮太鼓台と側面の北を表す玄武の彫刻

南面する柏木天満宮 神社境内に太鼓台は入れず。

前の通りは東西の通りで太鼓台の側面をむけて神社に参ることになる。

 

●榛原市墨坂神社楽太鼓台
 左に玄武(写真)、右に朱雀、前面を青龍、後を白虎の彫刻を配し、北面する神社本殿に差し上げます(図)。
 南側の神社本殿(写真向こう側)に対し差し上げる楽太鼓台。写真の手前側は北側になり、それにあわせて玄武の彫刻が配されています。

  

北面する本殿に向かって差し上げる楽太鼓台と、そのときに北側にくる玄武の彫刻