今回は屋台に関することばをあれこれ考えていきます。主に、三木と姫路・高砂の比較になります。
●太鼓台の呼称
まずは、担い式太鼓台とよべる、祭りに担がれる(担がれていた)練り物の呼称
・屋台(播州の一般名称)
・ヤッサ(姫路市東部、中部、高砂市-練り合わせ型神輿屋台分布地、神輿屋根・布団屋根分布地域か)
・ヤッタイ(姫路市網干区など チョーサ型神輿屋根屋台分布地域か)
・タイコ(三木市、大阪府など)
・御先ダンジリ(三木市吉川町若宮神社)
・千歳楽(岡山県など)
・化粧屋台(加西市)
・ちょうさ(香川県豊浜市)
古文献などにも色々な呼び名があるみたいです(祭が行われていた神社・年代)。
・神輿太鼓-「八幡宮御神事御規定(松原八幡宮・1728)」 「本朝歳時故実(大阪天満宮・1746)
姫路と大阪の催し大鼓が同じ名前なのは興味深いですね。
・屋台太鼓 「美嚢郡史(大宮八幡宮・大正15年)」
●四本柱上部の枡組の間などにある彫刻
・欄間(三木市)
・狭間(姫路市・高砂市)
本当の呼び名は狭間だと言われてしばらくは、狭間と呼んでいました。今では、三木の呼称を好んで使っています。
●楽器の太鼓
・鳴り太鼓(三木市岩壺神社氏子地域)
屋台の愛称のタイコと区別するためのものだそうです。この地域では、鳴り太鼓を取り付ける時に、泥台下から取り付けるのを太鼓に対する不敬として好まず、欄干の上から取り付ける屋台も多いと聞きました。
●担ぐための棒
練棒(姫路市、高砂市など)
・縦の本体についた棒
本棒(姫路市、高砂市など)
中棒(三木市)
・縦の外側の棒
脇棒(姫路市、高砂市など)
外棒(三木市)
→上記、縦の二種類の棒は三木市でも本棒、脇棒と呼ぶことが増えているように感じます。
・進行方向垂直に取り付けられた棒
かんぬき・閂(姫路市、高砂市など)
横棒(三木市)
→姫路では本棒に穴を開けて、垂直に棒を差し込みます。なので、かんぬきと呼ぶのでしょう。
三木の場合は穴をあけずに、縄でくくりつけるのでかんぬきとは呼びませんが、姫路の方はそれを見て「かんぬき」と呼ぶ方が多いようです。
●屋台を担いで激しくゆらすこと
がぶる(姫路市、高砂市など)
しゃくる(三木市)
●編集後記
かなり遅れての6月号です。
今回は言葉に注目しました。
祭に関する言葉も、インターネットやテレビなどの情報を得やすくなったことの影響か、画一化が進んでいるように感じます。それは、さながら方言や少数民族の言語のように、多数派にかき消されつつあるようです。
多数派や大きなものに憧れてその言葉を使ううちに自分達の独自性を失うのは、やはり寂しく感じます。とはいうものの、かつての自分も、姫路の屋台に憧れて、自分達のタイコをヤッサと呼んだこともありました。欄間のことを書籍の影響で狭間と呼んでいました。
しかし、日本文化は一つじゃありません。播州の屋台文化も一つじゃありません。正しいとされる「日本文化」に倣った呼び名より、自分達の呼び名に誇りを持つことが、大切だと感じる今日この頃です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます