保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

私は保津川下りの「語り部」になる!はっちんの「噺家修行」

2011-07-27 23:45:08 | 船頭
保津川下りの魅力、三大要素については前回お話ましたが、その中で
一番、伝わりにくいのが「歴史のお話」だと感じています。
400年という川下りの歴史がありながら、また遡ること平安時代の
筏流しまで、京の屋台骨を支えてきた水運の歴史がありながら、
そのことがお客さんにうまく伝わっているかは疑問なのです。

美しい自然風景と豪快な舟下り、それを操る船頭の匠の技は、
お客さんの目の前で展開されますから、語るまでもなく
伝わるものですが、歴史のことは船頭が操船しながら話すので、
どうしても中途半端な説明に終わりがちです。

乗船当初は聞かれておられるようですが、イメージ付けが難しく、
しばらくすると退屈そうな顔をされるお客さんも少なくありません。

急流などのリアルな体感には勝てず、話も途絶えていきます。

船頭も話を切り変え、各自持ちネタのジョークでその場を和ませ、
気分を盛り上げていく方向に流れていきます。
笑い声もこだまして楽しい川下りではあるのですが、私にはどうも
一抹のさみしさを感じずにはいられません。
雑誌などでは「船頭さんのユニークなトークで・・・」などと
書いて紹介されるので、ついついその気になっていますが、
それだけでは保津川船頭の「会話」はダメだと思っています。

私にこのことに気付かせてくれたのは、上方落語の名人・露の新治師匠でした。
PTAの研修会で講義をされていたのですが、人権問題というデリケート
な内容のお話を、テンポのある楽しいネタを織り交ぜて話されると、
難しい顔して座っていた方々の顔もほころび、次第に会場は笑いの渦へ。
暑い夏の体育館での講演会という過酷な条件の中なのに、
誰ひとり帰る人もなく、お話に引き込まれ聞き入っていました。

この講演現場の情況を見たとき、気づいたのです。

話を伝えるには「技術」が必要だということを!
ただ知識を羅列するのではなく、目の前の人に聞いて貰える工夫が
いることを。
保津川の歴史話が退屈なのは「船頭のトークレベルの低さ」であり、
伝えるための「技術磨き」をしてこなかったからなのです。

そうとわかれば、早速「伝える為の技術・会話術」の訓練開始です。

目指すは保津川下りの「語り部」です!

保津川の様々な言い伝えや出来事のお話を「物語風」に
ストーリーをつけて話せるようにしたいのです。

保津川には面白い話が目白押しです。

保津川に舟を通そうした人々の思いや葛藤、開削での出来事、
舟の引き上げ作業の壮絶な苦労や荷物船から観光船へシフトした
時代背景、大手企業から船頭衆が独立を勝ち取る闘いの記憶や
木船がFRP船へ改良移行した時の騒動、
また船頭の操船技術を根底で支えた‘川根性’などなど、

本当に数えきれない程のエピソードがあり、お話したい内容がいっぱいです。

歴史は卓上で聞いても面白くありませんね。
やはり、その現場で聞くのが一番、臨場感があり
リアリティが湧くものです。フィールドワークと同じです。

だからこそ、必要となるのが伝える能力。

昨年一年間、PTAでも講習会、研修などを開き、その道一流の
講師の先生方から「伝える力の育成」についての勉強しましたが、
それが今、とても役に立っています。

1200年以上続く時の流の中で繰り広げられたエピソードや
人間模様をストーリ仕立てで、楽しく語っていければ
素晴らしいと思います。

話しの流れとタイミング、そして間やトーンなど、
磨くところはいっぱいあります。

そこが「船頭会話術」の腕の見せどころです。
この会話術が、400年変わらない船頭の操船術と
美しく迫力ある保津川の自然と一体化すると、まさに鬼に金棒。

保津川一の噺家「語り部」を目指します。
いや、日本舟運一の「語り部」が目標!
もちろん、多国語も勉強しなきゃ。やることがいっぱいだ!
そして、みなさん、保津川でお会いしましょう。
お待ち申しております。