保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

修学旅行で‘いじめ’を目撃!

2006-06-12 21:48:58 | 船頭の目・・・雑感・雑記
修学旅行・・・もう遠い記憶になるが、忘れることのない楽しい思い出が詰ってる。

たぶん、このブログをお読み頂いている皆様にとっても楽しい記憶として
残っていることだろう。

5月中旬から6月初旬の保津川はその修学旅行生でいっぱいだ。

この時期は中学生の旅行シーズンで、毎日、元気な声が渓谷にこだましている。

だが、どうも楽しい記憶ばかりでもない人もいるのかも?と
認識させられる現場を目撃してしまったのだ。

それは男子ばかり22名が乗り込んだ自分の船の中で起った。

船後部座席2列に3名づつ座り込んだ男子中学生たち。

まだ、あどけなさが残る彼らは特に悪ぶったところのない何処にでもいる子供達だ。

だが、最後部の舵を持ち、彼らの動向や言動を何気なく観察していた
私は、いつもとは何か微妙に違う雰囲気を感じ出した。

彼ら6人は「急流」で大きな声をあげ、皆仲良くはしゃいでいるのだと思っていたが…

そう!後部2列の前列真ん中に座っている子だけは、最初からはしゃいでなかったのだ!

船が揺れ、水しぶきを浴びてはしゃいでいるのは他の5名だけで、
その子はピクリとも姿勢を崩さず、じぃ~と前だけを見ているのだ。

しばらくすると、後ろの子がその動かない子の背中を指で突付きだした。
だが、その子は無視して姿勢を崩さない。

周りの5人は、髪の毛を引っ張ったり、脇の下を小突いたりと
その行動が段々エスカレートしてくる。

さすがにそのやられている子も怒った様で、髪の毛に絡みついた手を
強い力で払い除け、鋭い視線で行為者を睨んだ。

すると行為者は「ヘイ~怒ってる~イェーイ!」とおちょけ出し、
周りも一斉に「わはは~」とバカにした様に笑い出した。

そうなのだ!その真ん中の子は明らかに周りの子らに‘いじめ’られているのだ。

よく見ると確かに周りの5人よりかなり真面目っぽい感じの子だ。

そういえば座席に座る時も、周りの子らに囲まれて席に座らされた様な気がする。
最初からいじめるつもりで、その子を真ん中に座らせ、周りを取り囲んだのだろう。

そのいじめ行為は、繰り返し繰り返し、およそ30分は続いていただろか。

明らかにその子は嫌がっているようだ。

私はこの船に乗っている先生らしき人物に目をやった。
その先生らしき人は、賑やかに馬鹿笑いする後部座席の方を振り返りはするが、
すぐに彼らが大人しくなるので、何も気付かず目線を前方に戻してしまう。

「この鈍感さでは、子供のSOSに気がつく訳はない。」と私は絶望した。
恐らくこの旅行中、ずっと彼らに付きまとわれているのだろう。
それが事実ならなんと辛く悲しい修学旅行なのだろう。

何とかその行為をやめさせる方法はないか?思案していた私に、その機会がきた!

彼らのしつこい嫌がらせに業を煮やしたその子は、とうとう、
固めた握り拳を振り上げ振り返り、後ろの子たちを睨んだ。

「今がチャンス!」と感じた私は、拳を振り上げているその子に向かって
「う~ん、今の裏拳凄くいい!凄く早かったな」と話し掛けた。
「君は空手をやるといい!その拳のスピードなら強くなれるよ」と言ってあげた。

それを聞いた周りの子らには一瞬沈黙が流れたが、「こいつが?無理無理…」と
またバカにした様に笑い出した。

「俺は船頭やけど、本職はケンカ空手の極真空手家や。実際、何人もの
チャンピオンも育ててる。その俺が見て、そう感じるのだから間違いない!」と
真顔で、静かに言い切った。
続けて「君の様に静かで大人しい人ほど、内に秘めた気持ちの強い人が多い。
怒りを押さえる忍耐力こそ成功者に必要な要素。挫けない心というのなら、
周りの君らよりよっぽどこの子の方が強いし、いいものを持っている」と話し
「帰ったら絶対空手を始めてみて!強くなるといいことがあるぞ!」と改めて薦めた。

するとそのいじめらていた子は、少しはにかんだ笑顔を私に見せて
「ウン」と小さく頷いてくれた。

それから嵐山までの約1時間、その子へのいじめ行為は一切なくなったのだ。

もちろん、いじめ行為に「力」で対抗しようと薦めた私のやり方には
賛否両論あるとは思うが、長年、空手道場であの年代の子らと接してきた
経験上、また、今も指導する立場で関わっている者として、本人が「力」を付けた
時の変化の大きさはいやというほど見てきたし、感じている。

それは「腕力」を付けるという道筋で、自分に自信をつけ
立ち向かう勇気と気力を養えると確信するからだ。

今の教育界はどうも「腕力」を「暴力」と混同して軽視する
傾向にあるようだ。「話せばわかる」と「言葉の力」を
あまりにも信用しすぎているのではないだろうか?
本当に「話せばわかる」のならば論理的頭脳を持つ優秀な先生方が
説かれる説教でこの国からいじめがなくなるはずだが、現実は
そうではなく、年々深刻の度合いを増しているのだ。

「いじめられた辛さに耐える力がある子」に「強さ」という自信を
つけてあげることで、立ち直った子供たちを多く知っている。

「ニート」など引きこもる若者が社会問題になる中、その子らは
堂々とこの社会で生き抜いている。

船を下りた後、その子へのいじめ行為がなくなったのか知るすべもないが、
一期一会、その子には力強く生きる道を選んでほしいと願わずにはいられない。


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19 コメント

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こんばんは! (TOMONECO)
2006-06-12 23:58:49
楽しい修学旅行にいじめは、つらくなりますね。私の学生時代の頃にもいじめはありました。いじめられた子が先生に話したときは、いじめた子が逆に話しただろと言ってました。でも最後には、いじめられた子の気持ちになって考えていた時代でした。今では毎日ニュースを聞いていても本当にひどくなっているのがわかりますね。
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勇気を与えた素晴らしい一言♪ (瑞穂)
2006-06-13 01:45:40
いじめられていたその子は、はっちんさんの船に乗船されて本当に良かったと思います。

それまでの間、どんなに辛い時間を過ごしていたかと思うと涙がこぼれます。

はっちんさんの一言でその子はどんなにか救われたことでしょう。

きっとその子にとって、一生忘れられない出来事だと思います。



はっちんさんがいじめに気づいているのに、引率の先生は気づかない…。

情けない事ですね。世の中の先生がみんなそうだとは言いませんが、

周りを見れない先生が多いのは事実です。



いじめられる子は本当は強いんです。そして誰よりもやさしい心を持っています。

人の痛みのわかる思いやりのある子なんです。だだ、少しの勇気を持っていなかっただけ…。

いじめられた子はそれを乗り越えた時、強い人間になります。

人の痛みのわかる素晴らしい人間になります。



その子が今後空手を始めるかどうかはわからないですが、会ったばかりの船頭さんに

褒めてもらえた、しかも正真正銘の極真空手家の船頭さんに・・・。

強くなってほしい、負けないでほしいと心から思います。

辛い事を乗り越えた時、素晴らしい未来が待っていると信じて頑張ってほしいですね。



いじめを受け、精神を病み、暗いトンネルから抜け出て、今は夢に向かって歩き出した

娘をもつ母として感じた事です。
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学校以外で・・ (ちせ)
2006-06-13 09:13:58
はっちんさん、おはようございます。

はっちんさんのアドバイスはきっとその子に届いています。その子がこれから空手を始めるかどうかはわかりませんが、世の中には自分を見てくれる人もいる、自分にはいろんな可能\性があるんだと感じてくれたらいいですね。

確かにどうしようもない先生はいます。日々闘っている先生はわずかかも知れません。今のその子の現状では学校は辛いだけの場所かも知れませんね。学校以外で何かを見つけられたら・・と祈るばかりです。
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はじめまして。 (ごんた)
2006-06-13 10:10:00
この記事を読んでとても感動しています。

はっちんさんが先生よりも察知して、その子に救いの手を差しのべたことは彼にとってとてもこころに残るでしょう。

これこそ、修学旅行のみならず学ばなければならないところだと思います。



これからの彼に、何かを見つけられたらいいですね。
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いじめ (めい)
2006-06-13 16:58:29
 こんにちわ1

この記事を読んで感動して少し涙が出ました。私は関東地方からの転校組でやはり最初は異邦人扱いでしたから、多少のいじめに似た感じのことはありました。

 あれって、やった人はすぐ忘れるんですよね・・・やられた人は一生覚えてますけど。

 多分その学生君も一生嫌な思い出として残るんだと思うと、悲しくなりました。願わくば、はっちんさんの一言で何かを見出してくれたら・・・だって元K1ファイター(だよね?)角田さんもいじめられっこだったと言っていましたから、そのこも心を強く持って欲しいと思いました。

 修学旅行が嫌な思い出だけで終わって欲しくないですもん。
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親の思い (Honko)
2006-06-13 18:23:43
日本が病んでいる原因の一つは、この”いじめ”では

ないでしょうか。。。

「いじめ行為に対して”力”で対抗する」やり方は

私は間違いではないと実感しています。

現に兄ちゃんは昔、いじめられっ子でした。

おっとりとした反抗しない性格だったので、

つねったり叩いたりといった、いじめを受けていたの

です。それに私が常々「人に手を出してはいけない」

と教えていたので、され放題でやり返したことがなか

ったのでした。

悩みましたねぇ。。。 今まで子どもに教えてきたこ

とで、我が子がピンチに陥ってしまった。。。と

いろいろと考え悩んだ末、自分からは決して暴力を

ふるってはいけないが、相手から暴力を受けた場合は

立ち向かえ。。。と

それから兄ちゃんは、自分で自分の身体を鍛えるよう

になりました。そして「今なら俺は絶対にいじめられない」と言っています。もちろん、それからいじめは

ありません。はっちんさんのおっしゃる通り、

腕力を付け、自分で自身をつけたのです。

悲しい事かもしれませんが、私も実際に子を育てて

きて、「話し合いで。。。」などと、きれいごとでは

どうにもならない現実を知りました。





「その子」も、はっちんさんの言葉をきっかけとして

自分に自身を付け、いじめに立ち向かって欲しいと

心から願っています。



「いじめ」は心の傷として、一生残るのです。

私もあの日、一人ぼっちで食べた塩っぱい給食の

味は、今も忘れる事ができません。







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感動しました (sizuka)
2006-06-14 02:07:00
はらはらしながら読んで、はっちんさんの行動に感動しました。

よくぞ言ってくれた!! と

はっちんさんの一言一言が、いじめられていた子供さんの心に勇気を与えて、これからの力強く生きていく力をつけてほしいと願わずにいられません。



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あっぱれ!はっちん (オン)
2006-06-14 17:23:48
いじめていた子どもたちは、いじめている事に気が付いていないが、またいじめた子どもは、忘れるかもしれないが、いじめられた子どもは一生忘れません。

しかしいじめた子どもは自覚が出るまでは、いじめても、また別の子どもをいじめると思います。

いじめた子どもは、自分がいじめられても、自分より弱い子どもをねらって、ストレスのはけぐちにするでしょう。

弱いものをいじめてはいけないと教えるのは、大人です。

今はその手本になる大人が、弱いものをいじめています。

いじめられた子どもが、弱いものをいじめる世の中を変える力になって、よい手本のはっちんのような世直しする大人に勇気をもってなって欲しいです。

本当に強い大人は、弱いもの(人間や環境や動物など)を助けるものだと、教えてやってください。

この話を読んで、出来れば、いじめを知らないアホな先生にはっちんが教えてくれたら、と思いました。

いい話をありがとう。
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現場 (はっちん)
2006-06-16 00:16:47
TOMONECOさんへ。



今、噂のいじめの現場を目の前で目撃すると

やはり心が痛みました。



学生といえどもお客さんなので、関わるのは

難しく気を遣いますね。



いじめている子たちを注意するのではなく、

本人に話し掛けようと思ってました。



ほんとに変わろうと思ってくれたら嬉しいです。
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今の先生 (はっちん)
2006-06-16 00:28:31
瑞穂さんへ。



本当に最近の子供と先生の垣根が崩れていると

実感しますね。生徒に呼び捨てにされ、ニコニコ

笑っている先生が多いのには驚きます。

生徒に聞けばそれが「人気のあるいい先生」だ

そうです。何か違うと感じます。



いじめの現場にちゃんと対処できるのか、心配

になりました。



子供のいうことを聞きすぎる、ものわかりの

いい大人が多すぎることにも問題の本質が

あるのではないでしょうか?
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