創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

2017-09-11 15:46:14 | 

窓に張り付き居間を覗く大きな蛾
まだそこにじっとしている
窓硝子を叩いても逃げない
蛾は亡き母かもしれない
輪廻転生
朝になりふと気づく蛾の不在
また夜が来る
闇をバックに僕の顔が映る
移ろう窓に無数の蛾がいる

『騎士団長殺し』村上春樹著

2017-04-05 17:18:09 | 
楽しく読んでいます。
第2部に入ったところです。
読んでいる間は書評は読まない。
ひたすら自分一人の為に書かれた作品のように読む。
でも話題作。
あちこちに活字が踊っています。
著者本人が語っているのも……。
無視。

今日の二句

2017-03-30 15:43:50 | 
今日の二句
春風や愁いを含む阿修羅像
時超ゆる阿修羅の祈り春の風
興福寺の乾漆群像展に行ってきました。
一堂に会す仏像群は圧巻です。
阿修羅像は美の極致です。
半べそをかいている童のような表情。
どんないたずらをしたのでしょうね。
国宝館で何度も見ていますが、ここが阿修羅の空間です。
心の中で般若心経を唱えながら異空間を楽しみました。

2016-11-24 10:14:34 | 


僕も
君も
あなたも
元は一個の卵だった

朝ご飯
目玉焼き 君を落とす 岩塩パラパラ
プレーンオムレツ とろりとしあげる
炒り卵 牛乳を加えてパラパラに

毎朝、君の姿は変わるけど
元は一個の卵だった




君への手紙

2016-11-15 11:23:13 | 
僕への手紙と対になっています。

君への手紙
君は僕のことなど何も覚えていない。
でも、いつも君は僕の心の中に住んでいる。
不公平だなあ。
君は僕の母になり、恋人になり、姉になり、妹にもなり、妻にもなった。
そう、全ての女性になった。
朝礼で君の名が呼ばれ、君はいつもの眩しそうな目をして、生徒の間を通り抜け、校長から表彰された。
細い小さな少女。
それが君だった。
「朝鮮人やて」
噂は僕の耳にも入った。
結局一度も話したことはない。
離れて見ていた。
あの時話しかけたら、世界は変わっただろうか。
何も変わらなかったと思う。
変わらないで欲しいから僕は話しかけたりなんかしなかった。
君は他の少女といても、目立たなかった。
控え目で、静かに微笑みを浮かべていた。
君も七十才になっただろう。
生きていないかも知れない。
でも、いつも君は僕の心の中に住んでいる。
僕が死ねば、誰かが君のことを語り始めるだろう。
ひとり死んだらひとり語部が現れる。
そう思いたい。

僕への手紙

2016-11-07 13:39:30 | 
僕への手紙
一歳の僕へ
ボール箱に入れられていた。
十歳の僕へ
よだれたれ。
二十歳の僕へ
二十歳で死ぬと言っていたのに生きている。
三十歳の僕へ
妻が僕を「お父さん」と呼ぶようになった。
四十歳の僕へ
つまらない仕事をしている。
五十歳の僕へ
嫌われないように定年を待つ。
いい人と言われて定年を待つ。
誰かがどうでもいい人と僕のことを言っていた。
六十歳の僕へ
「おじいちゃん」と呼ばれるのにも馴れた。孫にも気をつかう男。
七十歳の僕へ
いつも死を恐れている。
八十歳の僕へ
いつまで生きているのと言われた。
九十歳の僕へ
死んでいる。
百歳の僕へ
知らない人が花を供えてくれた。なんだ君か……。