創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

『雪の階(きざはし) 』・奥泉光 著

2018-08-26 16:21:13 | 読書
謎の心中事件から始まり、時刻表を辿る恋人未満の素人探偵の捜査は、松本清張の『点と線』を思わせる話かと。
しかし、事件は意外な方向に。
終盤二・二六事件に流れ込んでいく大河のうねりのような物語の展開は圧倒されます。
とても面白いのですが、一つお願いです。
簡単な登場人物表を付けて下さい。
頭の悪い私は、「これだれだっけ? この読みは?」の連続でした。

今日の一句

2018-08-12 15:34:01 | 俳句
今日の一句
蜻蛉釣り一人二人と友消ゆる
蜻蛉釣り2です。
1は『蜻蛉釣一人二人と友増ゆる』でした。
蜻蛉釣りは孤独な遊びでした。
わいわい騒ぐのではなく、ひたすら西の空を眺めていました。
昔の子供は貧乏でした。
仕掛けの「ほいらん」は木綿糸、小石、飴の包み紙で安上がりです。
それにトンボを傷つけません。
それぞれが工夫した仕掛けを作りました。
紙の色、重りの大きさ、糸の長さを工夫しました。
そして、銀やんまが飛んできた一瞬に賭ける。
銀やんまは羽をピリリとも動かさず水平に真っ直ぐに飛んできます。
いくつものほいらんが放たれます。
闇が降りると、子供たちは三三五五帰って行きます。
大人もいたなあ。
番頭さんは、誰も来ない空き地で、「ほいらん」を構えて空を見上げていた。
子供の目をして……。

鴻風俳句教室八月句会に参加させて頂きました

2018-08-08 17:27:43 | 俳句
鴻風俳句教室八月句会に参加させて頂きました。
題は「天」と「七夕、星祭」で二句と自由句二句でした。
八月句会投句
池窪弘務
星祭午前零時の列車待つ
昼の月ぽつかり空いた天の穴
初蟬や豪雨の土地に思ひ馳せ
蜻蛉釣一人二人と友増ゆる
成績は5点。
実力通りです。
ただ、『蜻蛉釣一人二人と友増ゆる』が0点だったのが残念です。
自信作だったのになあ。
『蜻蛉釣り 今日は何処まで行ったやら』の亜流と思われたのかもしれません。
一言言わせて貰えば、「蜻蛉釣り」は動きません。
じっと同じ処で空を見上げているのです。
銀やんまは真っ直ぐに同じ方向から飛んできます。
高さは屋根の上ぐらいです。
その眼の前20センチぐらいに「ほいらん」という仕掛けを投げるのです。
大阪にも空き地が沢山あった頃、夢中になったもんです。
かかった時の喜びはどう言ったらいいのか。
いつの間にか一人二人とマニアが増えてきます。
誰も目を輝かせ無言で空を眺めている。
あいつら今頃どうしているだろうなあ。
八月になると蜻蛉釣りの季節は終わります。

『土の記上下』高村薫著

2018-08-06 16:30:41 | 読書
私は高村さんの小説を読了したことがなかった。
読み始めても最初の方で挫折する。
何故か分からない。
相性が悪いというほかない。
高村さんは「ワープロがなかったら、小説を書かなかった」とどこかで書いておられた。
これはよく分かる。
同感である。
正直な人だなあと思った。
『土の記上下』は初めて読了した高村作品である。
でも、やはり、かなり苦労した。
私の両親は大宇陀の出身である。
馴染みのある地名や生活が出て来て興味を引かれた。
大宇陀漆河原(うるしがわら)は奈良県の農村で大宇陀嬉河原(うれしがわら)をモデルとしているという。
嬉河原の旧名が漆河原なのでややこしい。
登場する地名や神社をネットサーフィンするのも面白い。
屑神社なんか行ってみたいですね。
とにかくこの入り婿はよう働く。
同年代の私なんかがこんなに働いたら、間違いなく過労死です。
小説は主人公上谷伊佐夫(72才)の土へのこだわりと、垣内(小集落としてまとまった地縁集団)について描かれます。
そして物語と東日本大震災がクロスします。
――十五時間前、漆河原から八百キロの地でマグニチュード9とも言われる大地震が起こった。
しかし地球は公転も自転も止めたわけではなく、今日も夜は正確に明け、新しい一日が始まる。
もっとも人間のほうはさすがに昨日と全く同じではあり得ず、
生き残ったものはそれぞれ有形無形の異変を身体に刻んで、
恐る恐る自分の暮らしに戻ったというのが正解だったかもしれない――
長い引用ですが共感します。