創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

「真鶴」川上弘美 再読

2007-02-11 11:03:08 | 読書
文學界に連載された川上弘美作「真鶴」が一冊の本になった。まとめて読むと分断される読書とは違った趣がある。この作品は深い。深い海の底に、生と死がさりげなく表現されている。再々読にも耐えられる小説だと思う。
「眠りから出られない」という文があった。
私も子供の頃からあった。私の場合は「夢から出られない」に近いけれど。この頃はかなり頻繁に起こる。心配していたけど、少なくとも主人公「京」にはある。

物語のかけら⑥第二部 アーシア

2007-02-10 10:20:32 | 創作日記
奇妙な夢を見た二日後、村に不思議なことが起こりました。泉のそばで6才ぐらいの少女が見つかりました。名前はアーシア。セーターの胸にAsia の刺繍がありました。
「あの子はどこら来たのだろうね?」
村人が挨拶代わりに交わす会話です。少女は話すことが出来ません。聞くことも出来ません。黒く大きな瞳は何も見えていないのです。突然誰かが泉のそばにそっと置いたように現れました。宿の主人がとりあえず面倒をみました。次の日、私の部屋に引き取りました。少女は少ししか食べません。トイレに行く以外は窓から泉を眺めています。しばらくすると、少女の気配すら感じなくなりました。
石泥棒さん。私はこの年になるまで人と一緒に暮らしたことがないのです。物心が付いた頃には、私だけの部屋がありました。家政婦さんが私の世話をしました。父も母も、顔さえ知らないのです。誰かが私をこの世の中にそっと置いたように。
アーシアの横顔が誰かに似ていると思いました。あの肖像画の女性によく似ています。そして、黒い瞳はあなたに似ている。アーシアを連れて世界の果てへ行こうと思います。そこが、物語の終わりなのか。そこから、新しい物語が始まるのか…。