創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

『ほの暗い永久から出でて』 上橋菜穂子・津田篤太郎

2017-12-28 17:35:51 | 読書
『ほの暗い永久から出でて』 上橋菜穂子・津田篤太郎
とても示唆に富む往復書簡である。
七十才を超えると、『生』や『死』について考えることが多くなった。自分の人生とはなんだったのだろうと考えたりもする。
第一書簡の「蓑虫と夕暮れの風」が特に印象深い。

自分も蓑から出られない人間という蓑虫かもしれない。

オオミノガに見る究極の性
「蓑虫の性」について詳しい。

『枕草子四十段 虫は』
にも「蓑虫」のことが書いてある。
【原文】
四十段 虫は
蓑虫、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、「親に似て、これも恐ろしき心あらむ」とて、親の、あやしき衣ひき着せて、
「今、秋風吹かむをりぞ、来むとする。待てよ」
と言ひおきて、逃げていにけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、
「ちちよ、ちちよ」
と、はかなげに鳴く、いみじうあはれなり。
【現代語訳】
 蓑虫は、とても哀れだ。鬼が生んだと言うことだから、「親に似て、子の蓑虫も恐ろしい心を持っているだろう」と、親のみすぼらしい衣を引き被って、「すぐに、秋風が吹いたら、来るつもりだ。待てよ」と言い置いて、逃げて行ってしまったのも知らず、風の音を聞き分けて、、八月頃になれば、「ちちよ、ちちよ」と心細い様子で鳴く、実に哀れだ。

今の科学から見ればおかしい点もあるが、蓑虫の哀れさは名文に乗って伝わってくる。

【語り(抜粋)】
 鈴虫→松虫。松虫→鈴虫。そのままという説もあります。(枕草子・小学館)。きりぎりす→コオロギ。はたおり→キリギリス。われから=小さな節足動物。ひを虫=カゲロウ。歌の世界から聞こえてくるのかもしれませんが、見聞きしたのも。
「蓑虫」は面白い。「親のあやしき衣ひき着せて……」=素晴らしい想像力ですね。「ちちよ、ちちよ」=父よ、父よ。それとも、乳よ、乳よ。
「蓑虫」は「ミノガ科のガの幼虫。葉や小枝を糸で綴り合わせた蓑のような巣を作り,雄は羽化して飛び出すが、雌は成虫になっても蛆(うじ) 状で蓑の中で一生を過ごす。鬼の子。[季]秋。《―の父よと鳴きて母もなし/虚子》」→大辞林。
 芭蕉の俳句に「蓑虫の音を聞きに来よ草の庵」があります。「枕草子」を読んでいたのでしょう。九十四段にも芭蕉と清少納言の話を書きました。また、そこで。
 

「『枕草子』読み語り」池窪弘務著

2017-12-26 15:38:54 | エッセイ
記憶って砂みたいなものかもしれない。
積み上げた瞬間から崩れていく。
元の形には永遠にならない。
しかし、砂粒は足の先から絡みついていく。
人は記憶の砂浜でいくつもの砂を積み上げている。
他人が見ることの出来ない無数の砂山。
積み上げた瞬間から崩れていく砂山。

今日の一句

2017-12-25 13:14:27 | 俳句
今日の一句
四人部屋のカーテン開かず冬至かな
二泊三日で入院してました。
痔の手術です。
人の気配はするのですが、四人部屋のカーテンはきっちり閉められています。
手術の日が冬至であったことに後で気づきました。
痔の手術の詳報は後日。ご期待を! 
誰も期待していないか……。

南方熊楠と家族の日記 知られざる最期の日々

2017-12-24 16:46:27 | テレビ
知恵泉
南方熊楠と家族の日記 知られざる最期の日々
妻から娘に引き継がれた南方熊楠の日常を淡々と記録した日記。
最後の一日に1行だけ自分の気持ちが書かれている。
「朝から見舞客多くて困る」

   海金剛(和歌山県東牟婁郡串本町樫野)

『三島由紀夫未公開インタビュー 告白』 講談社

2017-12-07 14:14:14 | 読書
しおり紐はQの字に丸まっている。
図書館の中で誰にも読まれず眠っていた本である。
憂国忌は今年も何事もなく過ぎていった。
表紙の精悍な顔写真はとても懐かしい。
彼はいつもこんな顔をしていた。
写真顔とでも言うのだろうか。
彼が生きていれば92才か……。
今の世の中をどう思うだろう。
又、どう論じただろう。
わたしも71才の老人になった。
ふと、50年近く前のことを思い出した。
「三島由紀夫が好きです」
と、私は言った。
間髪を容れず、彼女は、
「わたしは嫌いです」
と、言ってどこかへ行ってしまった。
友達が紹介してくれた初対面の女性だった。
この頃つまらないことばかり思い出す。