『ほの暗い永久から出でて』 上橋菜穂子・津田篤太郎
とても示唆に富む往復書簡である。
七十才を超えると、『生』や『死』について考えることが多くなった。自分の人生とはなんだったのだろうと考えたりもする。
第一書簡の「蓑虫と夕暮れの風」が特に印象深い。
自分も蓑から出られない人間という蓑虫かもしれない。
オオミノガに見る究極の性
「蓑虫の性」について詳しい。
『枕草子四十段 虫は』
にも「蓑虫」のことが書いてある。
【原文】
四十段 虫は
蓑虫、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、「親に似て、これも恐ろしき心あらむ」とて、親の、あやしき衣ひき着せて、
「今、秋風吹かむをりぞ、来むとする。待てよ」
と言ひおきて、逃げていにけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、
「ちちよ、ちちよ」
と、はかなげに鳴く、いみじうあはれなり。
【現代語訳】
蓑虫は、とても哀れだ。鬼が生んだと言うことだから、「親に似て、子の蓑虫も恐ろしい心を持っているだろう」と、親のみすぼらしい衣を引き被って、「すぐに、秋風が吹いたら、来るつもりだ。待てよ」と言い置いて、逃げて行ってしまったのも知らず、風の音を聞き分けて、、八月頃になれば、「ちちよ、ちちよ」と心細い様子で鳴く、実に哀れだ。
今の科学から見ればおかしい点もあるが、蓑虫の哀れさは名文に乗って伝わってくる。
【語り(抜粋)】
鈴虫→松虫。松虫→鈴虫。そのままという説もあります。(枕草子・小学館)。きりぎりす→コオロギ。はたおり→キリギリス。われから=小さな節足動物。ひを虫=カゲロウ。歌の世界から聞こえてくるのかもしれませんが、見聞きしたのも。
「蓑虫」は面白い。「親のあやしき衣ひき着せて……」=素晴らしい想像力ですね。「ちちよ、ちちよ」=父よ、父よ。それとも、乳よ、乳よ。
「蓑虫」は「ミノガ科のガの幼虫。葉や小枝を糸で綴り合わせた蓑のような巣を作り,雄は羽化して飛び出すが、雌は成虫になっても蛆(うじ) 状で蓑の中で一生を過ごす。鬼の子。[季]秋。《―の父よと鳴きて母もなし/虚子》」→大辞林。
芭蕉の俳句に「蓑虫の音を聞きに来よ草の庵」があります。「枕草子」を読んでいたのでしょう。九十四段にも芭蕉と清少納言の話を書きました。また、そこで。
「『枕草子』読み語り」池窪弘務著
とても示唆に富む往復書簡である。
七十才を超えると、『生』や『死』について考えることが多くなった。自分の人生とはなんだったのだろうと考えたりもする。
第一書簡の「蓑虫と夕暮れの風」が特に印象深い。
自分も蓑から出られない人間という蓑虫かもしれない。
オオミノガに見る究極の性
「蓑虫の性」について詳しい。
『枕草子四十段 虫は』
にも「蓑虫」のことが書いてある。
【原文】
四十段 虫は
蓑虫、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、「親に似て、これも恐ろしき心あらむ」とて、親の、あやしき衣ひき着せて、
「今、秋風吹かむをりぞ、来むとする。待てよ」
と言ひおきて、逃げていにけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、
「ちちよ、ちちよ」
と、はかなげに鳴く、いみじうあはれなり。
【現代語訳】
蓑虫は、とても哀れだ。鬼が生んだと言うことだから、「親に似て、子の蓑虫も恐ろしい心を持っているだろう」と、親のみすぼらしい衣を引き被って、「すぐに、秋風が吹いたら、来るつもりだ。待てよ」と言い置いて、逃げて行ってしまったのも知らず、風の音を聞き分けて、、八月頃になれば、「ちちよ、ちちよ」と心細い様子で鳴く、実に哀れだ。
今の科学から見ればおかしい点もあるが、蓑虫の哀れさは名文に乗って伝わってくる。
【語り(抜粋)】
鈴虫→松虫。松虫→鈴虫。そのままという説もあります。(枕草子・小学館)。きりぎりす→コオロギ。はたおり→キリギリス。われから=小さな節足動物。ひを虫=カゲロウ。歌の世界から聞こえてくるのかもしれませんが、見聞きしたのも。
「蓑虫」は面白い。「親のあやしき衣ひき着せて……」=素晴らしい想像力ですね。「ちちよ、ちちよ」=父よ、父よ。それとも、乳よ、乳よ。
「蓑虫」は「ミノガ科のガの幼虫。葉や小枝を糸で綴り合わせた蓑のような巣を作り,雄は羽化して飛び出すが、雌は成虫になっても蛆(うじ) 状で蓑の中で一生を過ごす。鬼の子。[季]秋。《―の父よと鳴きて母もなし/虚子》」→大辞林。
芭蕉の俳句に「蓑虫の音を聞きに来よ草の庵」があります。「枕草子」を読んでいたのでしょう。九十四段にも芭蕉と清少納言の話を書きました。また、そこで。
「『枕草子』読み語り」池窪弘務著