9月13日は毎年必ず思い出す。
私の厄日である。
秋の季語でもあるらしい。
60年前、私は交通事故に遭った。
その瞬間、私は「行け!」と思ったのだ。
次の瞬間時速100キロ以上の単車と衝突した。
あれは事故ではなく自殺であったのか……。
それほど悩みがあったわけではない。
お菓子問屋の三男のぼんぼんで、ぼんやりと暮らしていた。
あの日も弟の野球の練習を見たりして暇を持て余していた。
敢えて言えば、音痴だから、明日の音楽の独唱の試験がいやだった。
あの時死んでいたら、当然今の私はない。
妻と出会うこともない。
子供も孫もいない。
9月13日はいつもそう思う。
七十四才の自分はいない。
意識が戻った時、最初に「明日の音楽の試験受けんでええ」と安堵の息を吐いたのも確かだ。