創作日記&作品集

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新潮九月号「穴」・小山田浩子著

2013-10-20 17:42:12 | 読書
久しぶりに文芸雑誌を図書館から借りてきました。殆どの場合読まずに(読めずに)返していますが今回、この小説は珍しく最後まで読みました。夫の転勤で姑の隣に越すことになった主婦の話です。小説から離れますが、定年後、妻との二人の生活が続いています。二人でいると、時々ふと思うことがあります。40年前、結婚しなければ、今は全く違ったものになっただろうと。妻も私もここにいない。二人が居間にいる光景が奇妙に歪んでくるのです。小説に戻ると、姑の隣に住むことを主人公は、最初たいしたことではないと考えています。でも、事実は全く違う。姑の家は想定内ですが、姑の家と空間を共有することによって奇妙なことが起こります。同居でなく隣に住むだけで全てが違ってくる。それが、前述した「二人が居間にいる光景」と重なりました。違いは具体的に現れてきます。奇妙な動物。その動物が掘った穴。存在さえ知らなかった義兄。高齢化した町を闊歩する子供たち。この小説は単なる奇妙な町の話ではないと思います。比喩と言えない現実味を含んでいます。いたる所に穴はあるのかもしれない。ご一読を。
今、遅まきながら、「不思議の国のアリスWith artwork by 草間彌生」を読んでいます。この小説にも穴に落ちたアリスが出てきます。そして、私は「不思議の国のアリス」にインスパイアされて「普通の国のアリス」を頭の中で書いています。