ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2016.1.28 少しずつ社会は変わる

2016-01-28 20:51:20 | 日記
 昨日に続き、朝日新聞医療サイト「アピタル」の記事で気になるものがあったので、以下、転載させて頂く。
 がんになってもどうか仕事をすぐに辞めないで・・・これは私がずっと思い続け、実際に実践していきたいと日夜奮闘していることである。だからこういう記事を見ると嬉しい。素直に嬉しい。
 少しずつ、少しずつ社会は変わる-そのことを実感出来たことに改めて感謝したい。

※   ※   ※(転載開始)

「がん発覚、仕事すぐ辞めないで」 両立支援の動き(神沢和敬、末崎毅)(2016年1月26日05時40分)

 2人に1人がかかるとも言われるがん。厚生労働省は治療と仕事の両立をめざして指針をつくるが、本格的な対策はこれからだ。独自に就労を支援してきた医療機関やNPO法人もあるが、仕事を辞めざるを得ない人はいまも多い。

■がん退職しないで済む社会に 医師と企業連携など対策へ
 大阪市の40代のプログラマーの男性は2015年冬、ゲーム開発会社を退職した。10年以上前に見つかったがんは治っているが、免疫力が落ちて疲労がたまると感染症などにかかりやすい。二つのプロジェクトリーダーを任されて忙しくなり、仕事量を減らすよう頼んだが、上司には理解されなかったという。
 働き続けたいと思ったが、仕事を減らすなら正社員の雇用形態は続けられないと言われて、辞めざるを得なかったという。病院と会社は十分な情報交換ができていなかったと思っていて、「病院と企業の距離が近くなれば違う結果だったかもしれない」と話す。
 千葉県銚子市の食品卸会社では数年前に40代の社員ががんと診断され、短時間勤務などで配慮してきた。2年ほどで通常勤務に戻ることができたという。桜井公恵社長は「社員30人ほどの会社では、一人一人の経験は代えがたい。できる限り働き続けられるよう本人と話し合ってきた」。
 医療機関は支援に力を入れつつある。全国に約400あるがん診療連携拠点病院には「がん相談支援センター」があり、電話でも相談を受け付けている。そのなかで大阪市立総合医療センターは13年から就労支援に力を入れる。徳永伸也医師は「早期発見や医療の進歩で治る確率は高まっていて、社会復帰はますます重要になっている」と語る。
 14年からは企業の人事・労務担当者のために研修会を始めた。がんと診断された際に、勤務時間に配慮して辞めさせないよう促している。15年11月の研修会では乳がんを例に、手術をして初期の薬物療法が終われば、健常者と同じ生活が送れることなどを説明した。「思っていたよりも副作用が軽かった。この調子なら仕事が続けられる」といった患者の声も紹介された。
 会場からは「本人があまり話をしてくれず情報が少ない」という意見もあった。センターの担当者は「偏見を恐れて話したくない人も多い。確認したいことがあれば会社の人が診察に立ち会うケースもある」とこたえた。センターのがん専門相談員で看護師の東島早百合さんは、指針で企業と病院が情報交換がしやすくなることを期待する。
 自治体でも先行事例がある。東京都は14年度から優れた取り組みの企業を表彰。支援に前向きでも具体的な方法が分からない企業は多いといい、指針は歓迎する。埼玉県は企業向けのハンドブックをつくっていて、相談窓口を設ける自治体も広がっている。
NPO法人がんと共に生きる会(大阪市)の社会保険労務士の関孝子さんには、お金の相談が絶えない。「がん=死」と受けとめ、パニックにおちいって辞める人がめだつ。医療費がかさむなか収入が減ることになり、治療を断念するケースもある。関さんはいったん会社を去ると再就職はしにくく、すぐに辞めないよう呼びかける。
 専門家に相談することも重要だ。辞めるとしても、注意点はたくさんある。退職日に無理をして職場に行くと、傷病手当の支給が受けられなくなる可能性もある。退職日に仕事ができない状況であることが条件だからだ。「社会保障制度には細かいポイントがある。専門家に教えてもらわないと、知らずに損をしてしまう」と関さんは訴える。

■国立がん研究センターの高橋都・がんサバイバーシップ支援部長の話
 がんを告知された患者は、動揺して頭が真っ白になってしまうことがあります。働く人の権利や会社の制度を知らないまま慌てて辞めると、後悔する人が多い。対応する時間はありますから冷静になって判断しましょう。
 会社側も引き留めることができれば、大事な働き手を失わずにすみます。傷病手当金制度などの公的支援に加えて、その会社が持っている支援制度を早期に示すことが大事です。
 がんの治療では通院時間の確保など職場の配慮が必要です。患者は上司や人事担当者らに相談にのってもらいましょう。その際に説明がたりないと、過度の配慮により、できる仕事からも外されかねません。自分が情報管理の要になり、できること、配慮してほしいことをはっきり伝えることがポイントです。
 同僚には言いにくいかもしれませんが、ある程度説明したほうが、長期的には理解と納得が得られます。業務が円滑に進むような気づかいや、仕事をカバーしてくれた同僚に感謝を伝えることも人間関係の潤滑油になります。

(転載終了)※   ※   ※

 辛い治療が続き、その後も副作用に悩まされ、苦渋の判断の末、仕事を辞さなければならなかったであろう沢山の方たちのことを思うと、胸が痛む。
 そして、初発から11年、再発治療8年の私をこうして正規職員として引き続き雇用してくれている職場に改めて感謝の意を表したい。
 皆が皆、私のように恵まれた環境でないことは十分承知している。けれど誤解を恐れずに言えば、環境はある程度自分で作ることも出来るのではないかとも思う。

 高橋先生のお話にもあるように、働き手としての自分の権利や自分が働く組織の制度を勉強することは、患者として生きていくうえで必要なことだ。なんとしても働き続けたいと思ったらなおさら、情報は自分で取ってくる必要がある。

 そして、病気になる前までの働き方も当然加味されることだろう。雇用主もこの職員を手放したら自分たちにとって痛手だ、と思えば支援体制を考えてくれることだってあるのではないか。何しろ2人に1人ががんになる時代である。これまで資金をかけ、手塩にかけて育ててきた働き盛りの職員が、治療のために不本意ながら職場を去らなければならないとなれば、それは雇用主にとってもただごとではない筈。

 お前の代わりはいくらでもいる、と思われないように仕事に工夫をして、何か付加価値をつけていくことは出来ないだろうか。それが本人のモチベーションアップにも繋がると思うのだけれど。

 これもまた何度も書いてきたことだけれど、自分の病気について周りに理解を得ること、これもがん患者として働いていく上で、とても大切なことだと思う。
 色々な偏見があり、がん=死という間違ったイメージが払拭されているわけでもないのは哀しいかな、事実だ。けれど、そういった社会の風潮を変えていけるのは他でもなく、今、病気と共存している働き手自身ではないだろうか。

 伝えるべきことを伝えるべき時にきちんと伝える。それが自分を守り、自分が仕事を続けていける土台になる。むろん、病気だからといってあれもこれも出来ません、と甘えるわけでは決して、ない。
 出来ることは先取りするくらいの勢いできちんとこなす。穴は開けない。けれど、どうしても難しい時、突発的なことが起こりそうになった時には、その事情を説明してどうしたら出来るのか、どうしたら乗り切れるのかということを、周りに理解して頂けるように可能な範囲で準備する。長い目で見れば、その方がずっと働き易いのではないかと思うが、どうだろう。

 初発治療ならなおさら、のこと、どうかがんサバイバーとして働き続けてほしい。エンドレスの再発治療をしながら働いている人は決して少なくはない。
 治療中であっても、いつもいつも副作用や体調不良で寝込んでいるわけではない。QOLを落とさないように、ごくごく普通の生活を送ることが出来るのだということを、一人でも多くの方たちに見てほしい。そして理解して頂きたい。

 少しずつ、少しずつだけれど社会は必ず変わっていく。2人に1人ががんになる時代、親兄弟親族を含め、がんという病気は自分には全く関係ないと言い切れる方はどれだけいるだろうか。
 そのことを前提に、社会は変わらなければ早晩立ち行かなくなるのではないだろうかと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする