先日、国立がん研究センターが公表した10年生存率について各紙が取り上げていたが、その後、朝日新聞の医療サイト「アピタル」にこのデータをどう読み取るかという興味深い記事が掲載されたので、以下、転載させて頂く。
※ ※ ※(転載開始)
がん10年生存率どう見る 5年以降も低下なら長期観察 石塚広志、桜井林太郎(2016年1月26日07時00分)
国立がん研究センターなどの研究グループが19日に公表したがんの「10年生存率」。
がんと診断された全国の患者約3万5千人を10年間追跡して集計した数値だ。どう読み取り、活用できるのだろうか。
■がんの10年生存率58・2% 部位で差、浮き彫りに
「やっぱり10年なんだね」。21日、がん患者らでつくる鹿児島市の「がんサポートかごしま」で開かれたサロン。4人が集まり、話題は10年生存率で持ちきりだった。
参加者の一人で、8年前に乳がんを発症した40代女性は、医師に「5年の経過観察が必要」と言われ、定期的に病院に通った。しかし、5年経って病院通いをやめた2年後に再発した。
公表された乳がんの10年生存率は80・4%。胃や大腸の生存率は5年以降、ほぼ横ばいだが、乳がんは5年(生存率88・7%)以降も同じ割合で下がり続ける。乳がん患者の一人、三好綾理事長(40)は「経過観察の年数は病院や医師によって5年、10年と違う。やはり10年のフォローアップが必要と知った」と話す。
10年生存率では、がんの進行度合い(ステージ)ごとの生存率も示された=表(略)。ステージ1と4を比べると、胃や大腸では90ポイント近く離れており、早期発見・早期治療の重要性がうかがえる。一方、ステージ1でも肝臓や膵臓(すいぞう)では3割を切る。また、前立腺では、ステージ3まではほぼ100%だが、転移のある4では4割以下。転移の有無が生存率に大きく影響しているとみられる。
研究グループは、2012年から生存率解析システム「KapWeb(カップウェブ)」(https://kapweb.chiba-cancer-registry.org)を公開している。性別や年齢、受けた手術などを入力すると、自分に近い条件での生存率が出てくる。今回公表された最新データも反映されている。
1999年に初期の子宮頸(けい)がんを発症した、「愛媛がんサポートおれんじの会」の松本陽子理事長(50)は、自分の情報をシステムに入力してみた。10年生存率は91.6%と出たという。松本さんは「入力の仕方がわからない人もいる。各地のがん相談支援センターなどで対応することも必要では」と指摘する。
■新薬登場でさらに改善
今回のデータは、99~02年に診断された患者を分析した。国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「あくまで十数年前のデータとして参考にしてほしい。バラツキもあり、個人がその数値の通りになるわけではない」と話す。
当時は抗がん剤や放射線治療を併用する治療がようやく確立してきたころだ。今はがん検診を中心に早期の発見・診断が進み、新薬も登場した。実際に5年生存率を診断された年ごとにみると、99年と最新の07年では全部位で63%から68.9%と5.9ポイント改善した=グラフ(略)。
若尾さんは「08年ごろから、新しい抗がん剤や分子標的薬が出てきて、現在はもっと改善された数値になるとみられる。特に肺がんや大腸がんで期待できる。不安があれば、主治医に相談してほしい」と話す。全国に約400あるがん診療連携拠点病院には無料相談窓口もある。
10年生存率が15・3%と低かった肝臓がんの場合、C型肝炎やB型肝炎のウイルス感染が原因になることが多い。現在はウイルスを排除したり抑え込んだりする薬があり、検査を早く受ければ、がんの発症を抑えやすくなってきた。東京肝臓友の会の米沢敦子事務局長(55)は「副作用が少なく高齢の方でも使いやすい飲み薬もある。がんに対する新しい治療や薬の治験も進んでいるので、希望を持ってほしい」と話す。
今回のデータは全国16病院の約3万5千人分だが、1月からは、がん患者の個人情報や治療歴を国がデータベース化して一元管理する「全国がん登録」が始まった。全国9千近くのすべての病院などのデータを集め、発症数や生存率を把握できる。地域差や施設差が明らかになれば、その原因を探って対策をとり、生存率の改善につなげることもできる。部位やステージだけでなく、がん細胞のタイプなどによる生存率がわかれば、患者の状態ごとによりよい治療方法を選ぶための参考にもなる。
数値が患者に不安を与えることもあるが、愛媛がんサポートおれんじの会の松本さんは「こうした『見える化』は患者にとっても大事。医師との議論に活用できる。私たちが残したデータを次の世代に活用してもらうことも重要」と話す。<アピタル:もっと医療面・がん>
(転載終了)※ ※ ※
様々ながんの中でも、こと乳がんについては予後が長いことが知られている。患者会でも初発から10年以上経過した方が少なくないし、その後に再発した方もいらっしゃる。
私は初発ステージ1、温存手術後の放射線治療から3年が経過する直前、5年予定のホルモン治療(ノルバデックス内服)中に再発・多発転移が判明した。2008年の1月、もう8年前のことになる。あの時には、あと5年生きられるのかどうかと覚悟したことはこのブログでも何回も書いたとおりだ。
けれど、これまでの間、その時その時に自分自身が納得した治療を、絶やすことなく続けながらこうして命を繋ぐこと8年余り。
当時、再発治療を10年続けられるのは20人に1人と言われていた。10年生存率5%ということである。当然、今回発表された調査は、今を遡ること10年前を起点とした調査に基づく統計上の数字だから、そこにタイムラグが生じるのは上記の記事にあるとおりである。
なんとなれば、当該調査の時点では使うことの出来なかった分子標的薬等の新しい薬が次々と開発されて、10年前には使うことが叶わなかった数々の薬のおかげで命を繋げているわけだから。
だから、ここに示されている生存率はあくまでも過去のもの。今から将来を生きる私たちはもっと長くなっていてしかるべきだ。
ちなみに私のケースをKapWeb(カップウェブ)で試してみた。
2005年2月にステージ1,43歳(40代)で初発、現在まで11年が経過しているから、診断から現在までの生存日数は4000日超えているのだが、ここでは10年の3650日までしか設定できないのでそのとおり入力し、部位等を選んでみた。設定が悪かったようで時間がかかりすぎてタイムアウトとなり、結局のところ答えが出なかった。
では、と2008年1月、再発多発転移によりステージ4になったわけだから、その時の年齢(同じく40代)で入力し、診断から現在までの8年間2920日の生存期間を入れたところ、グラフは2年で止まっており、5年生存率も10年生存率も出てこなかった。
症例数は10件で、実測生存率は1年が0.7、2年が0.6であり、相対生存率(がん患者ががん以外の病気で亡くなる分を実測生存率に「かさ上げ」した補正済みの生存率)は各々0.711、0.611とあった。
1997年から2002年の5年間でステージ4と診断された40代の女性乳がん患者が既に8年生存している場合、あと1年の生存率は0.7、あと2年の生存率は0.6ということらしい。
けれど、実際に私が知っているだけでも、私よりも長い間再発進行乳がんと共存している方は一人や二人でない。だから、今回示された数字よりも間違いなく現在の生存率はアップしているのではないだろうかというのが、患者会や実際の患者仲間と接していて感ずることである。
もちろん部位により予後も異なるし、新薬の開発状況もさまざまだろうけれど、ひとつだけ間違いないことは、この10年で医療は確実に進歩しているということ。
私が初発の手術を受けた11年前と現在、状況は驚くほど変わっている。
だから、これからこの病気と共存していくことになった方たちには、ここに出ている数字を見て落ち込みすぎることなく、希望を持って頂いてよいのではないかと思うのだが、いかがだろう。
※ ※ ※(転載開始)
がん10年生存率どう見る 5年以降も低下なら長期観察 石塚広志、桜井林太郎(2016年1月26日07時00分)
国立がん研究センターなどの研究グループが19日に公表したがんの「10年生存率」。
がんと診断された全国の患者約3万5千人を10年間追跡して集計した数値だ。どう読み取り、活用できるのだろうか。
■がんの10年生存率58・2% 部位で差、浮き彫りに
「やっぱり10年なんだね」。21日、がん患者らでつくる鹿児島市の「がんサポートかごしま」で開かれたサロン。4人が集まり、話題は10年生存率で持ちきりだった。
参加者の一人で、8年前に乳がんを発症した40代女性は、医師に「5年の経過観察が必要」と言われ、定期的に病院に通った。しかし、5年経って病院通いをやめた2年後に再発した。
公表された乳がんの10年生存率は80・4%。胃や大腸の生存率は5年以降、ほぼ横ばいだが、乳がんは5年(生存率88・7%)以降も同じ割合で下がり続ける。乳がん患者の一人、三好綾理事長(40)は「経過観察の年数は病院や医師によって5年、10年と違う。やはり10年のフォローアップが必要と知った」と話す。
10年生存率では、がんの進行度合い(ステージ)ごとの生存率も示された=表(略)。ステージ1と4を比べると、胃や大腸では90ポイント近く離れており、早期発見・早期治療の重要性がうかがえる。一方、ステージ1でも肝臓や膵臓(すいぞう)では3割を切る。また、前立腺では、ステージ3まではほぼ100%だが、転移のある4では4割以下。転移の有無が生存率に大きく影響しているとみられる。
研究グループは、2012年から生存率解析システム「KapWeb(カップウェブ)」(https://kapweb.chiba-cancer-registry.org)を公開している。性別や年齢、受けた手術などを入力すると、自分に近い条件での生存率が出てくる。今回公表された最新データも反映されている。
1999年に初期の子宮頸(けい)がんを発症した、「愛媛がんサポートおれんじの会」の松本陽子理事長(50)は、自分の情報をシステムに入力してみた。10年生存率は91.6%と出たという。松本さんは「入力の仕方がわからない人もいる。各地のがん相談支援センターなどで対応することも必要では」と指摘する。
■新薬登場でさらに改善
今回のデータは、99~02年に診断された患者を分析した。国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「あくまで十数年前のデータとして参考にしてほしい。バラツキもあり、個人がその数値の通りになるわけではない」と話す。
当時は抗がん剤や放射線治療を併用する治療がようやく確立してきたころだ。今はがん検診を中心に早期の発見・診断が進み、新薬も登場した。実際に5年生存率を診断された年ごとにみると、99年と最新の07年では全部位で63%から68.9%と5.9ポイント改善した=グラフ(略)。
若尾さんは「08年ごろから、新しい抗がん剤や分子標的薬が出てきて、現在はもっと改善された数値になるとみられる。特に肺がんや大腸がんで期待できる。不安があれば、主治医に相談してほしい」と話す。全国に約400あるがん診療連携拠点病院には無料相談窓口もある。
10年生存率が15・3%と低かった肝臓がんの場合、C型肝炎やB型肝炎のウイルス感染が原因になることが多い。現在はウイルスを排除したり抑え込んだりする薬があり、検査を早く受ければ、がんの発症を抑えやすくなってきた。東京肝臓友の会の米沢敦子事務局長(55)は「副作用が少なく高齢の方でも使いやすい飲み薬もある。がんに対する新しい治療や薬の治験も進んでいるので、希望を持ってほしい」と話す。
今回のデータは全国16病院の約3万5千人分だが、1月からは、がん患者の個人情報や治療歴を国がデータベース化して一元管理する「全国がん登録」が始まった。全国9千近くのすべての病院などのデータを集め、発症数や生存率を把握できる。地域差や施設差が明らかになれば、その原因を探って対策をとり、生存率の改善につなげることもできる。部位やステージだけでなく、がん細胞のタイプなどによる生存率がわかれば、患者の状態ごとによりよい治療方法を選ぶための参考にもなる。
数値が患者に不安を与えることもあるが、愛媛がんサポートおれんじの会の松本さんは「こうした『見える化』は患者にとっても大事。医師との議論に活用できる。私たちが残したデータを次の世代に活用してもらうことも重要」と話す。<アピタル:もっと医療面・がん>
(転載終了)※ ※ ※
様々ながんの中でも、こと乳がんについては予後が長いことが知られている。患者会でも初発から10年以上経過した方が少なくないし、その後に再発した方もいらっしゃる。
私は初発ステージ1、温存手術後の放射線治療から3年が経過する直前、5年予定のホルモン治療(ノルバデックス内服)中に再発・多発転移が判明した。2008年の1月、もう8年前のことになる。あの時には、あと5年生きられるのかどうかと覚悟したことはこのブログでも何回も書いたとおりだ。
けれど、これまでの間、その時その時に自分自身が納得した治療を、絶やすことなく続けながらこうして命を繋ぐこと8年余り。
当時、再発治療を10年続けられるのは20人に1人と言われていた。10年生存率5%ということである。当然、今回発表された調査は、今を遡ること10年前を起点とした調査に基づく統計上の数字だから、そこにタイムラグが生じるのは上記の記事にあるとおりである。
なんとなれば、当該調査の時点では使うことの出来なかった分子標的薬等の新しい薬が次々と開発されて、10年前には使うことが叶わなかった数々の薬のおかげで命を繋げているわけだから。
だから、ここに示されている生存率はあくまでも過去のもの。今から将来を生きる私たちはもっと長くなっていてしかるべきだ。
ちなみに私のケースをKapWeb(カップウェブ)で試してみた。
2005年2月にステージ1,43歳(40代)で初発、現在まで11年が経過しているから、診断から現在までの生存日数は4000日超えているのだが、ここでは10年の3650日までしか設定できないのでそのとおり入力し、部位等を選んでみた。設定が悪かったようで時間がかかりすぎてタイムアウトとなり、結局のところ答えが出なかった。
では、と2008年1月、再発多発転移によりステージ4になったわけだから、その時の年齢(同じく40代)で入力し、診断から現在までの8年間2920日の生存期間を入れたところ、グラフは2年で止まっており、5年生存率も10年生存率も出てこなかった。
症例数は10件で、実測生存率は1年が0.7、2年が0.6であり、相対生存率(がん患者ががん以外の病気で亡くなる分を実測生存率に「かさ上げ」した補正済みの生存率)は各々0.711、0.611とあった。
1997年から2002年の5年間でステージ4と診断された40代の女性乳がん患者が既に8年生存している場合、あと1年の生存率は0.7、あと2年の生存率は0.6ということらしい。
けれど、実際に私が知っているだけでも、私よりも長い間再発進行乳がんと共存している方は一人や二人でない。だから、今回示された数字よりも間違いなく現在の生存率はアップしているのではないだろうかというのが、患者会や実際の患者仲間と接していて感ずることである。
もちろん部位により予後も異なるし、新薬の開発状況もさまざまだろうけれど、ひとつだけ間違いないことは、この10年で医療は確実に進歩しているということ。
私が初発の手術を受けた11年前と現在、状況は驚くほど変わっている。
だから、これからこの病気と共存していくことになった方たちには、ここに出ている数字を見て落ち込みすぎることなく、希望を持って頂いてよいのではないかと思うのだが、いかがだろう。