2019年3月6日(水)
エロスとカオス、カラスにカボス、朝ドラが好調だ。
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「カンガか、あの人は才女じゃないや、でもルーかわいさに、何とかしちゃうだろ」
これが僕の記憶の中に定着したコブタの言葉、『クマのプーさん』原作第九話、『コブタが、ぜんぜん、水にかこまれるお話』から。洪水に閉じ込められたコブタが知り合い一人一人を順に思い浮かべ、難儀の際の反応を想定評価する。その中のカンガについてのくだりである。
いま昭和38年の第三刷を確かめてみると、正しくはこうだった。
「それから、カンガってひとねえ。あのひとは才女じゃないや。そりゃ、たしかにない。だけども、ルーかわいさに、べつにかんがえもなにもしないで、うまいことやっちゃうだろ。」
原文はこちら:
"There's Kanga. She isn't Clever, Kanga isn't, but she would be so anxious about Roo that she would do a Good Thing to Do without thinking about it."
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この一冊に、どれほど養われたことだろう!
コブタの独白のわずかな部分から、「才女」という言葉と「〇〇かわいさに」という言い回しを覚えた。母親というものが子を思う一心から、能力を超えた働きをしてのけること、それについて洋の東西のないことを、後に知って思い当たった。作品全体から受けとったものの総量は計りしれない。
A.A.ミルンの語りとE.H.シェパードの挿し絵、幼いクリストファーロビンとぬいぐるみたち、余人の摸すべくもない石井桃子さんの inspired な訳業、これらのプロセスを支えた全ての人々と最後にこの本を買い与えてくれた人。
コブタはいかに心細くとも忘れられてはいない。やがて「賢いクマ丸」が救出に漕ぎ寄せる。
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