この時、祖父の考えている事、及び私の勘違いをきちんと把握していて、尚且つ自身の気持ちを通す事が出来、そう出来た事を有難いと思いながらホッとして内心喜んでいたのが、座敷に到達していた祖母だった。
2階に到達した私の方は、菓子が貰えず侘しい気分に陥りそうになる所を振り切って、菓子を諦めさっぱりとした気持ちでいたつもりだったが、ここ階上直ぐの洋間の床を踏みしめて歩いてみると、何やらむかむかと怒りの感情が湧いて来るのだった。
やはり祖母は私に意地悪をしたのではないか、そんな考えが頭をもたげて来る。結局私はいい様に揶揄われただけなのだ。お菓子にしても最初から無かったのかもしれない。そんな考えが頭に浮かんで来て、私は思わずは~っと大きな溜息を吐いた。
何だか疲労感を覚えた私は、よろよろと寝室に延べられている筈の布団に向かった。そこへ突っ伏し様と思ったのだ。次の間の入り口に立った私は和室の部屋の中を覗き込んだ。
「あれ?、」、無い!。何時もある筈の所に布団が敷かれてない。目を丸くして室内を眺めると、私達親子の寝室の間はすっきりと広く開けていて、明るい畳の目が整然と広がっていた。
「もう!。」
私は振り返り数歩戻ると、何時も布団が積み重ねてある場所に立った。そしてその重なった布団の一番上にある子供布団に手を伸ばすと、ええいと掛け声を掛けて力を込め、敷布団を引き落とした。この結果、整然と整頓された布団の積み重ねの枡形が歪に崩れた。が、私はいいやと無頓着だった。何時もなら、親のこういった行為の産物に危害を加えるという事に到底無頓着ではいられなかった私だった。
『あー、何だか腹の立つ。』。私は気持ちの儘に自分の布団を引きずって歩くと、寝室の何時もの自分の定位置にその敷布団を勢いよくぱぱっと広げた。寝よう寝よう、私は徐にぼんとその上に突っ伏した。「面白くないったら。」そう言うとバタバタと自分の四肢を布団の上でばたつかせた。
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