碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「ドクターX」を支える、定番だからこその新規性

2019年11月28日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

シリーズ6弾「ドクターX」を支える

定番だからこその新規性

 

2012年に始まった「ドクターX~外科医・大門未知子~」も、今期で第6シリーズとなる。いかなる場合も最後は天才外科医の活躍で大団円。それは視聴者も承知の上だが、以前と変わらないだけでは飽きてしまう。

基本的な世界観は維持しながら、常に意外性を盛り込んでいくことが肝心だ。このシリーズはその努力を忘れていない。

第4話では有名陸上選手の「滑膜肉腫」に対処しながら、同時に外科部長・潮(ユースケ・サンタマリア)の母親(倍賞美津子)が、「認知症」ではなく「水頭症」であることを突き止めた。

また先週の第6話。難病である「後腹膜原発胚細胞腫瘍」の少女を登場させたが、本命の手術は売名のために少女を支援していた青年実業家(平岡祐太)の「肝細胞がん」のほうだった。

いわばストーリーの2車線化だ。ある患者の難しい手術が見せ場と思わせて、途中から別の患者のもっと困難な現場へと移っていく。高速道路で一気に追い越し車線に入っていく感じだ。

しかもこの回の大門は、少女の腫瘍摘出と左肺下葉切除という2つの手術を連続で行ったことで、盟友である麻酔医・城之内(内田有紀)と対立してしまう。制作陣は「神の手」を支える女神、城之内との関係を揺さぶることで見る側に緊張感を与えたのだ。定番だからこその新規性。それがこのドラマを支えている。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2019.11.27