B'zと橋本環奈は圧巻でも
「けん玉」「ドミノ」はいつまでやる?
「紅白歌合戦」が今回も低調な原因
「第75回NHK紅白歌合戦」(NHK総合)の視聴率が発表された(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)。第1部(19:20~8:55)は過去最低を記録した前年と同じく29・0%。第2部(21:00~23:45)は32・7%で、同じく過去最低を記録した前年の31・9%から0・8ポイント持ち直したものの、ブービー賞に過ぎない。
良かったのか、悪かったのか、メディア文化評論家の碓井広義氏に聞いた。
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今回の「紅白」では特別企画で初出場したB'zが現在放送中の朝ドラ「おむすび」の主題歌「イルミネーション」をスタジオで披露した後、NHKホールに登場して「LOVE PHANTOM」と「ultra soul」を生演奏。会場を沸かせる圧巻の演出が際立った。
碓井氏は言う。
「司会者にも知らされていなかったサプライズで、客席は老いも若きも盛り上がっていました。あれこそ音楽が持つ力の象徴だと思います。藤井風のニューヨークからの中継では、4分半にわたるワンカットの演出もなかなかでした。
また、昨年前期の朝ドラ『虎に翼』の出演者たちによるドラマ仕立てで歌う米津玄師も良かったし、矢野顕子のピアノ伴奏で歌うMISIAも圧巻でした」
今回の司会は、「おむすび」のヒロインで3年連続となる橋本環奈、2年連続の有吉弘行、「虎に翼」のヒロインの伊藤沙莉、そして鈴木奈穂子アナが務めた。
「とにかく今回も橋本の手練れぶりが光った『紅白』でした。有吉のトチリ、伊藤のミス、何が起こっても動じず、橋本がすべてを引き取って先へ進めるMCぶりは見事と言うしかありません」
見どころは多かったということだ。
企画中心の演歌勢
「今回のテーマが『あなたへの歌』ということで、様々な“あなた”に対応した多様性のある『紅白』ということなのでしょう。しかし、演歌勢には企画モノを被せてくる演出が目立ちました」
三山ひろしのけん玉、水森かおりのドミノは、「紅白」の名物になりつつある。
「彼らが歌うシーンはワイプで、メインの映像はけん玉やドミノです。また、山内惠介のバックダンサーには、アルコ&ピース、とにかく明るい安村、もう中学生といった司会の有吉の手駒の芸人たちが務め、彼らが練習しているVTRまで流しました。
坂本冬美も輪島市に出張して住民の方々と握手しながらの歌唱でした。能登半島地震から1年というのはわかるし、それなら番組も能登一色でやってもいい。ことほど左様に、演歌勢は企画ナシでは歌わせてもらえないのかと思えてしまう演出でした」
ムード歌謡の純烈も群馬に出張した。
「同じ出張でも、ニューヨークからの藤井風のような力強い演出は感じられませんでした。本当に歌を聞かせたいのか、企画の処理が優先なのか……」
NHK自身が歌の力を見失っているということだろうか。
PRばかり
「そもそも4時間半もの長時間の枠が必要なのかが疑問です。西野カナや氷川きよしの復帰企画もありましたが、『紅白』は復帰でいきなり出てこられる番組なのでしょうか。
また、旧ジャニーズ勢の穴を埋めるべく韓国グループの多さも目立ちました。もちろん彼女たちが日本で人気なのはわかるし、見たい人がいるというNHKの言い分もあるでしょう。
確かに、たくさんの“あなたの歌”は並べてありました。それでも演歌は企画中心だし、GLAYなら『誘惑』でTHE ALFEEなら『星空のディスタンス』、南こうせつなら『神田川』というのがNHKの認識です。
これらをズラーッとならべ、本編の放送前から『まもなく紅白 今年もすごいぞスペシャル2024生放送! 出場歌手続々登場!』(17:00~18:50)を2部に分けてずーっと放送していました。NHKは夕方から夜中まで『紅白』で潰したわけです」
「まもなく紅白」の前には「もうすぐ放送100年! 大みそかスペシャル」(12:15~14:00)を2部制で放送。これも「紅白」も加えたNHKの番宣番組だった。
「他に放送すべき番組はないのでしょうか。『紅白』放送中も『受信料を今年もお支払いいただき、ありがとうございます』といったPRに力を入れていましたが、力のかけ方が違うのではないかと思わずにいられません」
大晦日のNHKは番宣とPRばかりだった。B'zの「紅白」出場だって不調が続く朝ドラ「おむすび」のPRの一環であることは言うまでもない。
「『紅白』という番組を考え直す機会が来ているように思います。白組のトップバッターを務めたこっちのけんとは“ギリギリダンス”の『はいよろこんで』を披露しましたが、イントロの“トントントンツーツーツートントントン”が意味するのはSOSです。もはや『紅白』もギリギリのSOSを発している状態だと思います」
双極性障害のこっちのけんとは「紅白」出演後、Xに《若干躁期でした。今後は跳ね返りと戦うために当分休みます》と投稿した。
「元気に出直すため、『紅白』も一度休んだほうがいいかもしれません」
【デイリー新潮編集部】