碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

『トットちゃん!』は、予想以上に楽しめる「昭和ドラマ」

2017年10月19日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



テレビ朝日系「トットちゃん!」
予想以上に楽しめる「昭和ドラマ」になっている

放送前、「大丈夫か?」と勝手に心配していたが、杞憂だった。帯ドラマ劇場「トットちゃん!」(テレビ朝日系)である。

このドラマは、あの黒柳徹子さん(84)の物語だ。累計800万部の大ベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」や続編「トットチャンネル」などで、黒柳さんの半生は広く知れ渡っている。また昨年、NHKで満島ひかり主演「トットてれび」も放送されている。「手あかのついたネタ」と言われても仕方がなかった。

しかし始まってみると、予想以上に楽しめる「昭和ドラマ」になっている。黒柳さんが生まれる前の昭和4年にまで遡り、両親の出会いから丁寧に描いてきたことの効果だ。

バイオリニストでNHK交響楽団のコンサートマスターも務めた父、黒柳守綱(山本耕史)。現在の東京音楽大学で声楽を学んだ母、朝(松下奈緒)。

2人の若き日のエピソードを、まるで彼らが主人公であるかのように、じっくりと見せてきた。おかげで視聴者は時代背景を理解すると共に、トットちゃんというヒロインに出会う準備が十二分にできたのだ。

第2週で、ようやく黒柳夫妻に赤ちゃん誕生。一気に小学生となり、常識という枠におさまらないユニークな言動にも磨きがかかってきた。幼少期のトットちゃん役、豊嶋花の達者な演技に拍手しながら、主演女優・清野菜名(23)の登場を待ちたい。

(日刊ゲンダイ 2017.10.18)



【気まぐれ写真館】 久しぶりの晴れ間  2017.10.18

2017年10月19日 | 気まぐれ写真館
明日はまた雨模様らしいのですが・・・

書評した本: 矢野誠一 『新版 女興行師 吉本せい』ほか

2017年10月18日 | 書評した本たち



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。


矢野誠一
『新版 女興行師 吉本せい~浪花演藝史譚』

ちくま文庫 734円

10月に始まったNHK連続テレビ小説『わろてんか』。ヒロイン・藤岡てんのモチーフは吉本興業創業者の吉本せいだ。本書では、本人はもちろん桂春団治やエンタツ・アチャコなどの実像も活写される。山崎豊子の小説『花のれん』(新潮文庫)との併読も面白い。


吉本ばなな 『人生の旅をゆく 3』
NHK出版 1512円

ベルリンへのリアルな旅も引っ越しという移動も、このエッセイ集では大切な「人生の旅」だ。その途上で遭遇する父(吉本隆明)や母など親しい人との別れが、読後に強い印象を残す。何かを失い、再び立ち上がろうとする人には、収載の「手を動かす」を薦めたい。


木村 誠 
『大学大倒産時代~都会で消える大学、地方で伸びる大学』

朝日新書 821円

来年から始まる18歳人口の本格的減少。毎年10万人もの受験生が消えていくことで、大学はどうなるのか。教育ジャーナリストの著者が、早慶から地方の国立大学まで、その経営、研究、志願者獲得策などを探っていく。中でも大学と地域社会の関係は重要課題だ。

(週刊新潮 2017.10.12号)


丁寧に作られた昭和ドラマ「トットちゃん!」

2017年10月17日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評



しんぶん赤旗のリレーコラム「波動」。

今回は、ドラマ「トットちゃん!」(テレビ朝日系)について書きました。


丁寧な「昭和ドラマ」

放送が始まる前、「大丈夫なのか」と勝手に心配していた。だが、杞憂だったようだ。先週始まった帯ドラマ劇場「トットちゃん!」(テレビ朝日系)である。

何しろ前作「やすらぎの郷」が、あまりに斬新だった。現在のテレビを支える“大票田”でありながら、高齢者層はずっと無視されてきた。そこに高齢者による、高齢者のためのドラマが出現したのだ。脚本家・倉本聰による一種の反乱、いや真昼の革命だった。

しかも高齢者しか楽しめなかったかと言えば、そんなことはない。秀逸なストーリーと魅力的な登場人物たちが多くの人をひきつけた。 

第2作となる「トットちゃん!」は、あの黒柳徹子さんの物語だ。累計800万部の大ベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」や、続編「トットチャンネル」などによって黒柳さんの半生は広く知れ渡っている。映像化についても、昨年NHKが満島ひかり主演のドラマ「トットてれび」を放送したばかりだ。「手垢のついたネタ」と言われても仕方がなかった。

しかし始まってみると、予想以上に楽しめる「昭和ドラマ」になっている。黒柳さんが生まれる前の昭和4年にまで遡り、両親の出会いから丁寧に描いてきたことの効果だ。

父の黒柳守綱(山本耕史)はヴァイオリニストで、NHK交響楽団のコンサートマスターも務めた音楽家。母の朝(松下奈緒)も現在の東京音楽大学で学んだ声楽家だ。

制作側は、そんな両親の若き日のエピソードを、まるで彼らが主人公であるかのように、じっくりと見せてきた。おかげで視聴者側は時代背景を理解すると共に、「トットちゃん」というヒロインに出会う準備が十二分にできたのだ。

今週に入って、ようやく黒柳夫妻に赤ちゃんが誕生した。男の子を待望していた父が用意した名前が「徹」で、女の子だったため「徹子」とした話も微笑ましい。

またドラマの中では一気に小学1年生となり、後の黒柳さんを思わせる、学校という枠におさまらないユニークな少女が、ハラハラするような“活躍”を始めている。幼少期のトットちゃん役、豊嶋花の達者な演技を堪能しつつ、主演女優・清野菜名の登場を待ちたい。

(しんぶん赤旗 2017.10.16)

君は「カマキリ先生」を見たか!?

2017年10月16日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評


毎日新聞のリレーコラム「週刊テレビ評」。

今回は、NHKEテレ「香川照之の昆虫すごいぜ!」について書きました。


「香川照之の昆虫すごいぜ!」 
君は「カマキリ先生」を見たか!?

それは突然、やってくる。何しろ「不定期放送」なので、油断していると見逃してしまうのだ。主人公は、人にして人にあらず。その名を「カマキリ先生」という。演じるのは名優、香川照之。そして栄えの冠番組が「香川照之の昆虫すごいぜ!」(NHKEテレ)である。

タイトル通りの昆虫番組だが、子供向けという既成概念を超えたインパクトがある。あの香川が、カマキリの着ぐるみ(その監修も香川自身)姿となり、原っぱや河原で昆虫採集にまい進するのだ。

聞けば、香川が民放のトーク番組で無類の昆虫好きを表明し、「Eテレで昆虫番組をやりたい!」と望んだのだという。確かに捕虫網を操る技術はもちろん、昆虫に関する知識も半端ではない。

前回の放送は8月で、テーマは「タガメ」。昆虫少年の頃に一度触っただけで長いご無沙汰となり、40年ぶりの再会だった。きれいな水にしか生息しないにもかかわらず、小魚やカエルを食べてしまう、どう猛なタガメ。香川はタガメを「殺人犯」に、自らを「タガメ捜査一課長」に見立て、全国の子供たちにも応援をお願いして大追跡を敢行した。そして有力な目撃情報に導かれて栃木まで出張(でば)る。結局、4時間かけて全長7センチの犯人を現行犯逮捕したのだった。

今月9日に放送された最新作では、日本最大のトンボ「オニヤンマ」の捕獲に挑んだ。神奈川県某所の森に入ったカマキリ先生は、オニヤンマを発見するやいなや、まるで座頭市の仕込みづえのような速さで捕虫網を切り返し、次々と大物を捕獲していく。

オニヤンマが時速60キロという猛スピードで飛べるだけでなく、4枚の羽根を巧みに動かして、ヘリコプターがホバリングをするように空中で停止する妙技の秘密も解明。さらにオニヤンマ以上の速さで飛行しながら、エサとなる虫を捕まえるギンヤンマの離れ業を体感しようと、香川はクレーンでつり上げられた状態で、時速70キロのボールをキャッチする実験を行うのだ。その根性には頭が下がる。

番組の面白さを支えているのは一にも二にも香川の狂気、いや本気だ。何かを徹底的に好きになるって、こんなにすてきなことなのだと教えてくれる。また、「人間よ、昆虫から学べ!」というカマキリ先生の主張は、「スマホの中だけが世界じゃないよ!」という子供たちへの熱いメッセージだ。

歌舞伎の世界では「九代目市川中車(ちゅうしゃ)」である香川だが、今後「市川虫者」を名乗るのもいいかもしれない。ちなみに番組を見逃した人のために、21日午後4時半から、うれしい再放送があるそうだ。

(毎日新聞 2017年10月13日 東京夕刊)


この秋、「注目の若手女優」が出演しているテレビCMは!?

2017年10月15日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


●「DODA」の清野菜名さん

先日、あるテレビ局の役員と雑談していて、「最近注目している若手女優は?」と聞かれました。とっさに名前を挙げた一人が、清野菜名(せいのなな)さんです。

最初に「このひと、誰だろう?」と思ったのが、昨年、唐沢寿明さんと共演していたミツカンのCMでした。それはメガネをかけた店員役で、爽やかな笑顔が印象に残りました。

次に目を引いたのは、清水富美加(現・千眼美子)さんも出演していた映画『暗黒女子』です。清野さんは、表向きの明るさとは異なり、心に闇を抱える早熟な女子高生を好演していました。

また先月終了したドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)では、石坂浩二さん演じる脚本家と、かつて恋愛関係にあった新進女優とその孫娘の二役に挑みました。

そしてこの秋から、『やすらぎの郷』と同じ枠で始まった『トットちゃん!』で、(まだ出番が来ていませんが)あの黒柳徹子さんを演じます。まさに旬の若手女優の一人と言えるでしょう。

DODA(デューダ)の新作CM「それぞれの転職」篇では、真剣に転職を考えるOLさんに扮しています。目指しているのは「もっと自分を活かせる会社」。

「明日の自分」を自ら創っていこうとする、そのはつらつとした姿に、ステップアップを続ける清野さん本人が重なって見えます。


●「ACジャパン」の飯豊まりえさん

家族などをかたる、振り込め詐欺の手口を聞くと、「なぜ、こんなものに引っ掛かるのだろう」と思ったりします。

しかし、侮ってはいけません。昨年度の被害額は、なんと375億円! しかも被害者の多くが高齢者です。

その対策として有効なのが、家族の間で決めた合言葉、いや「愛言葉」なのだそうです。

たとえば、ACジャパン・NHK共同キャンペーン「合言葉 家族を守る愛言葉」篇の飯豊まりえさん。彼女は、一人暮らしのおばあちゃんに電話をかける時、まず「タマ(祖母の飼い猫の名前)、まっ白け」と言います。

他人には何のことか分からなくても、これで、間違いなく「本人」だと確認できるんですね。優しくて、気が利いて、お茶目なおばあちゃんと談笑する飯豊さんは、まるで本当の孫みたいです。

今年の夏、飯豊さんはドラマ『パパ活』(FOD×dTV共同制作)で、親子ほど年の離れた大学教授(渡部篤郎さん)を好きになる女子大生を、リアルな空気感で演じていました。(今週から水曜深夜に、フジテレビで地上波放送も開始されます)

また深夜ドラマ『マジで航海してます。』(TBS系)では、船を操縦する航海士を目指す、モーレツに元気な女子学生がドンピシャでした。

シリアス系とコミカル系、どちらもイケる実力派であり、今後が楽しみな若手女優として、前述のテレビ局役員に伝えたもう一人が、この飯豊さんです。

実は、映画『暗黒女子』には飯豊さんも出ていて、清水富美加さんとの「ダブル主演」でした。この作品には、他に平祐奈さんや玉城ティナさんなども出演していました。思えば、なかなか見事なキャスティングによる、若手女優「虎の穴」だったんですね。

放送から50年 『ウルトラセブン』アンヌ隊員に出会った!?

2017年10月13日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム



今からちょうど50年前、1967年10月1日(日)の夜7時から、『ウルトラセブン』(TBS系)の放送が始まりました。

当時、この武田薬品提供の30分枠では、前作が『ウルトラマン』、その前が『ウルトラQ』という具合に、円谷プロの制作による特撮テレビ映画が続けて放送されていました。

『ウルトラマン』シリーズは、その後、平成に至るまで長く続くことになりますが、個人的に最も印象に残っているのが『ウルトラセブン』です。

怪獣が主な相手だった『ウルトラマン』に比べ、『ウルトラセブン』では宇宙人や宇宙怪獣と対峙することになります。

主人公は「ハヤタ」から「モロボシ・ダン」へと変わり、活躍するチームが「科学特捜隊」から「ウルトラ警備隊」となりました。また内容も、子どもだけを意識したものではなく、大人をも巻き込むようなテーマ性がありました。

そして、ウルトラ警備隊の紅一点が「友里アンヌ隊員」です。モロボシ・ダンとの淡い恋模様も描かれた『セブン』ということもあり、視聴者の少年たちにとっては“憧れのお姉さん”的な存在だったと思います。

この時、アンヌを演じた女優、ひし美ゆり子さんは20歳でした。


「アンヌ隊員」と「女優・ひし美ゆり子」

そんな「アンヌ隊員」に、50年の時空を超えて(笑)、お会いする機会がありました。慶應義塾の機関紙『三田評論』10月号での、「三人閑談 ウルトラセブン50年」です。

「慶應丸の内シティキャンパス」シニアコンサルタントの桑畑幸博さんと私が、ひし美さんにお話をうかがうという形でした。

以下は、その貴重な証言の一部です。


碓井  ひし美さんご自身は、出演する前に、ウルトラQとかウルトラマンをご覧になっていたんですか。

ひし美  いや、全然見てないです。

碓井  いきなりこのセブンに。

ひし美  いきなりセブンです。ただ、ウルトラマンを一話だけ見せられました。そのとき、あのオレンジの隊員服がいいなと思っていたら、ブルー・グレイの服になって(笑)。

碓井  でも、あの制服が格好よかったんですよねえ。

ひし美  その当時は、もっと華やかな色がよかった。だけど考えてみると、あのブルー・グレイの服は、私みたいな胴が太い人は、目の錯覚でちょっと「キュッボン」に見られるのでよかったんですけれど(笑)。スタイルよくないのに、みんな錯覚してくれる。

桑畑  でも、それでアンヌ隊員が初恋だ、みたいな男の子はいっぱいいるわけですよ。

碓井  そうそう。当時はワンクール(三ヶ月)ではなく、一年間の放映ですから、見ている少年たちにも、しっかりアンヌ隊員が刷り込まれてしまうわけで。ひし美さんとアンヌを、僕らはもうほとんど一体化して見ていました(笑)。

ひし美  でも、当時、放送されるとテレビというものはもうそれきりなんで、意外と私たち俳優は、終わったら「はい、終わった」という感じなんですよ。森次晃嗣さん(モロボシ・ダン役)なんか先に撮影終わったら、もう次の撮影に行ってしまう。

碓井  以前、『北の国から』で蛍を演じた中嶋朋子さんとお話したときに、何歳になっても「蛍だ、蛍だ」と言われ続けて、嬉しいけれども、「別の私も見てよ」という反発もあった、と仰っていました。そういうことはありませんでした?

ひし美  私は「アンヌだ、アンヌだ」と言われたことない。

桑畑  そうなんですか?

ひし美  子供番組だから、子供がそんなこと言えないじゃないですか。大人になると、ほかに、麻丘めぐみだとか興味がどんどん変わっていって(笑)。だから、「アンヌだ」って騒がれたりしたことは全然ない。


・・・ひし美さんはその後、73年のドラマ『プレイガール』(東京12チャンネル=現・テレビ東京)に出演します。結構セクシーな場面もあり、少年たちは「真面目なアンヌが不良になっちゃった」と、びっくりしたものです(笑)。


師匠・実相寺昭雄監督の現場

『ウルトラセブン』は、私たちのようにリアルタイムで見ていた人間が今見返しても、何かしらの再発見があり、今の若い人たちが見ても、彼らなりの発見がある作品です。

また、ある種、普遍的なテーマというものがちゃんと込められていました。日曜の夜7時放映という、基本的には子供向けの枠にもかかわらず、重たいテーマも物語の中にしっかり取り込んでありました。

たとえば、私の師匠である実相寺昭雄監督が演出した「第四惑星の悪夢」(四三話)は、AIやロボットがどこまで進化するのかという話で、完全に時代の先取りでした。


桑畑  印象に残った回はありますか。

ひし美  いっぱいあり過ぎるくらい(笑)。「第四惑星」なんかすごいと思いました。昔は嫌いだったんです。昔の戦争のニュース映像でよくあった目隠しして公開処刑するようなシーンが挿入されるでしょう?

碓井  あれは強烈ですよねえ。

ひし美  強烈すぎ。子供番組にあれを出すってすごい。実相寺さんと晩年対談したとき、「私、あれがあるからあの話はあんまり見たくなかったの」って言いました(笑)。

桑畑  でも、このお話の中では、それを目撃した隊員は、本当のことだと思わずに、何かのロケをやっているんだろうと考えているんですよね。そのへんが逆に薄ら寒い感じがします。なぜ実相寺さんはわざわざそのシーンを入れたのか。

ひし美  やっぱり鬼才ですよ(笑)。

碓井  撮影現場での実相寺監督はどんな感じでしたか?

ひし美  あまりしゃべらない監督さんで、芝居もどちらかというとカメラ目線に立って「はい、グラス上げたー」とか「はい、下げたー」とかよく指示していました。例えばグラスにビューッとカメラが寄ったり、物越しに何かを撮ったりすることばかり気にして撮影してらして、芝居がどうこうはあまりおっしゃらなかったですね。

碓井  まさにそういった実相寺演出の現場を、ひし美さんに伺ってみたかった。

ひし美  逆にやりやすいですよ。ペロリンガ星人の回(四五話、円盤が来た)のとき、フクシン君と私で河原で撮るシーンがあったんです。二人でずっとしゃべらせておいて、望遠で知らないうちに撮られていたという感じでした。だから、逆にナイスショットが結構ある。お芝居、お芝居してなくて。

碓井  当時はフィルム撮影ですから、アフレコ(無音の映像に合わせて、後から声を収録)のときに、「あ、こうなっていたのか」とわかる感じなのでしょうね。

ひし美  そうなんです。実相寺さんの初日、お化粧して待っていたのに、後で映ったものを見たら反転になっていて、私たちは影になっているのね。「ええー」と思って。ああいう撮られ方されていると思うと、逆に緊張しないで済む。

碓井  「こういう監督なんだ」とわかってリラックスしたというのが、いかにもひし美さんらしい(笑)。

ひし美  そうなんですよ。私は最初、実相寺さんにびくびくしていたんです。フルハシ隊員が、「今度来る監督は鬼才で、すごいんだぞ」と脅かす。私は「鬼才」って、鬼監督のことだと思って(笑)。それで、いつも顔を合わせないようにしていた。そうしたら、対談したときに、「ひし美君はいつもロケバスに僕が乗っていると、機材車に乗っていたね」と言われた(笑)。

碓井  実相寺監督の場合、(役者さんより)画が第一という感じが明らかにわかるから、出演している方は頭にきているかと思ったんですけどね。

ひし美  そうでもないんです。気が付いたらニキビのアップがあったり。

碓井  監督、アップ大好きだから(笑)。


・・・というわけで、古希を迎えてますますお元気な、そしてチャーミングな「アンヌ隊員」でした。

綾瀬はるかの美人妻&アクション「奥様は、取り扱い注意」

2017年10月12日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載中のコラム「TV見るべきものは!」。

今週は、綾瀬はるか主演「奥様は、取り扱い注意」について書きました。


日本テレビ系「奥様は、取り扱い注意」
美人妻とアクション
綾瀬はるかをダブルで楽しめる

綾瀬はるか(32)が、「奥様は、取り扱い注意」(日本テレビ系)で民放ドラマに久々の登場だ。何しろ昨年1月の出演作「わたしを離さないで」(TBS系)の原作者はカズオ・イシグロ。今回のノーベル文学賞受賞で、ドラマも綾瀬本人も再注目という上げ潮になった。

まず物語の冒頭部分でびっくりだ。中国某所に監禁されていた綾瀬が、素手で屈強な男たちを次々と倒し、脱出に成功する。その戦いぶりは「え、秘密諜報部員?」「腕利きの暗殺者?」と聞きたくなるほど。まるで“女性版ジェイソン・ボーン”みたいなカッコよさだ。昨年から放送中の「精霊の守り人」(NHK)の成果としか思えない。

そんな秘密の過去をもつヒロイン・菜美(綾瀬)が、IT企業経営者である伊佐山勇輝(西島秀俊)と結婚して専業主婦に。退屈だけど平和な日々を過ごすかと思いきや、トラブルに巻き込まれた善良な人たちにとっての救世主となっていくのだ。

初回では、料理教室で知り合った主婦(倉科カナ)の窮状を見かねて、彼女のDV夫(近藤公園)を懲らしめる。見た目は綾瀬はるかなのに(当たり前か)、ボクシング経験者の夫を完全制圧。また包丁で野菜を切るのは下手なくせに、武器として使わせたら完璧だ。このギャップがいい。

“隣の美人妻”と“秒殺アクション”。綾瀬はるかをダブルで楽しめる。

(日刊ゲンダイ 2017年10月11日)

【気まぐれ写真館】 3つの夕景  2017.10.10

2017年10月11日 | 気まぐれ写真館
四谷キャンパスから見た新宿方面


ライトアップされた北門


四谷駅前交差点

週刊新潮で、北野武監督「テレビ東京」連続出演について解説

2017年10月10日 | メディアでのコメント・論評


「北野監督」と「たけし」が出ずっぱり
テレビ東京の真骨頂

テレビ業界はすでに、衆議院議員総選挙の開票特番の情報集めに勤(いそ)しんでいる。中でも気合いの入っているのはテレビ東京である。

「9月28日に行われたテレ東の定例会見で、小孫茂・新社長は今回も池上彰さんを使って選挙特番を放送することを明言。それに対し、議員の一口メモが他局にマネされていることについて聞かれると、『ウケたものがマネされるのはテレビ東京の宿命』と余裕を見せましたからね」(社会部記者)

一口メモに限らず、バス旅やカラオケ対決など、確かにテレ東でヒットした企画はよくパクられる。

「東京キー局も予算が減っている中、テレ東の企画はやりやすいんですよ」(同)
そのテレ東、他局ではマネ出来ない企画を打ち出した。10月2日~6日まで、朝の生放送にビートたけし(70)を持ってきたのだ。タイトルは「おはよう、たけしですみません。」――。

「もちろん7日に公開される北野武監督『アウトレイジ 最終章』の宣伝も兼ねるのでしょう。たけしさんは各局に宣伝のため出演していますが、この企画は、朝のワイドショーが固定化された他局には、絶対に出来ません」

とは上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)だ。

テレ東は「アウトレイジ」シリーズ全3作に出資しているが、9月27日の昼には、シリーズ第1作と公開直前SPを放送。30日には「出没! アド街ック天国」の足立区の回に監督自らゲストで出没。10月1日は「たけしのよくできてるTV」に映画出演者と共演した後、シリーズ第2作を流す……。

「『よくできてるTV』も完全にPR特番でしたからね。かつてフジが映画出演者ばかりを使って批判されましたが、監督自ら出て、それがたけしさんなのですから強い。出演料も格安の筈ですし、テレ東としても出資を回収しつつ、社内の士気も上げられる。うまくいけば朝のシニア向け番組制作のデータにもなる。まさに、攻めのテレ東です」(同)


池上ならぬテレ東無双。

(週刊新潮 2017年10月12日神無月増大号)

【気まぐれ写真館】 信州で見かけた、赤とんぼ  2017.10.09

2017年10月09日 | 気まぐれ写真館
この秋の初対面!

土曜の修士論文中間発表会 2017.10.07

2017年10月08日 | 気まぐれ写真館
四谷見附交差点から大学方面を見る

書評した本: 新村 恭 『広辞苑はなぜ生まれたか』ほか

2017年10月08日 | 書評した本たち



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。


国民的辞書・広辞苑 その編者の軌跡

新村 恭 『広辞苑はなぜ生まれたか~新村出の生きた軌跡』

世界思想社 2484円

新村出(しんむらいづる)は『広辞苑』(岩波書店)の編者として知られている。しかしその名前はともかく、どのような人物だったのかを知る人は少ないのではないだろうか。本書は孫でフリーエディターの著者が記した、新村に関する初の本格評伝だ。

大きく三部構成となっており、まず「新村出の生涯」の章でその歩みを知る。1876(明治9)年生まれの新村は元々言語学者だった。東大助教授を経て京大教授。キリシタン語学や語源語史の研究で実績を残している。また25年にわたって京大図書館長を務め、学問や教育に対するリベラルな姿勢から利用者の自由度を高めていった。

次の「真説『広辞苑』物語」では、あの国民的辞書が編まれた過程をたどる。『広辞苑』第一版の刊行は1955(昭和30)年だが、新村はそれ以前に『辞苑』(博文館、35年)という名の国語辞典の編集に携わっていた。その改訂版に着手していたところ、戦局の悪化で出版が不可能となる。戦火を免れた校正刷をもとに制作されたのが『広辞苑』だ。

もちろん辞書作りは一人ではできない。広範なジャンルの執筆者たちの協力、岩波書店の人々の支援、そして新村の次男でフランス文学者、言語学者だった猛の存在も大きい。著者は残された日記や膨大な原稿などを踏まえ、新村の人物像と仕事の実相を明らかにしていく。浮かび上がってくるのは権威ある学者というより、「言葉」を真摯に愛し続けた一人の学徒の姿だ。

最後の「交友録」には、親しかった歌人・川田順が登場する。川田は弟子だった女性との「老いらくの恋」で騒がれた人物。しかも新村にとって初恋の人だった徳川慶喜の娘・国子が結婚後、不倫関係に陥った相手が川田だったのだ。孫だからこそ率直に書けるエピソードである。

新村が亡くなったのは67年8月。没後50年の節目に上梓された本書で『広辞苑』への親近感が増した。


ジャック・アタリ:著、林昌宏:訳
『2030年 ジャック・アタリの未来予測』

プレジデント社 1944円

思想家、経済学者などの顔をもつ、現代を代表する知性による未来への処方箋だ。政治と経済の自由に基づく社会システムの機能不全。民主主義の空虚化。怒りの蔓延などを踏まえ、アタリは「個人」が変わるべきだと説く。10段階の変化を経た先にある行動とは?


久坂部羊 『院長選挙』
幻冬舎 1728円

国立大学病院の頂点に立つ天都大学附属病院。前病院長の死により、院長選挙が実施される。候補者は4人の副院長。いずれも性格破綻の妖怪ともいうべき人物ばかりだ。清浄であるはずの医療現場で、駆け引きと陰謀が渦巻く“笑う大選挙戦”が展開されていく。

(週刊新潮 2017年10月5日号)



最後まで等身大だった、有村架純「ひよっこ」

2017年10月07日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


日刊ゲンダイに連載中のコラム「TV見るべきものは!」。

今週は、ゴールしたNHK朝ドラマ「ひよっこ」について書きました。


NHK朝ドラマ「ひよっこ」
最後まで等身大
有村架純「ひよっこ」が教えてくれたこと

ついに幕を閉じたNHK連続テレビ小説「ひよっこ」。開始直後は「主人公も話も地味」といった声もあったが、半年間で名作というべき一本となった。何より明るくて気持ちのいい朝ドラだったことが大きい。

最大の功労者はヒロインの谷田部みね子(有村架純、最後まで好演)だ。架空の人物であるみね子は雑誌を創刊したり、子供服メーカーを興したりはしなかった。

また「何者」かになることを目指していたわけでもない。しかし家族や友達を大切にしながら懸命に働き、いつも明るく生きていた。そんな等身大のヒロインだからこそ、視聴者はみね子の「日常」を見守り続けたのだ。

次に時代設定がよかった。暮らしも社会も緩やかだった昭和30年。経済大国へと変貌していく40年代。その境目の昭和39年から物語が始まったことで、私たち日本人が何を得て、何を失ってきたのかを感じさせてくれた。

同時に「タイムトラベル」も堪能した。東京オリンピック、ビートルズ来日、ミニスカートブーム等々。同時代を生きた人には懐かしく、知らない世代には新鮮なエピソードの連打だった。

終盤、何組ものカップルが誕生した。やや駆け込み乗車的なバタバタ感もご愛嬌。脚本の岡田恵和が丁寧に書き込んだ、愛すべき“名もなき人々”が、それぞれ幸せになるハッピーエンドに拍手だ。

(日刊ゲンダイ 2017年10月4日)

週刊朝日で、元「SMAP」3人のウェブ戦略について解説

2017年10月06日 | メディアでのコメント・論評


なぜ今SNSなのか…
稲垣・草なぎ・香取が挑むウェブ戦略の勝算

9月22日に公式ファンサイト「新しい地図」の開設を新聞の見開き広告で発表、大きな話題を集めた稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人。

その後、稲垣はブログ、草なぎがYouTube、香取がインスタグラムと、それぞれウェブを活用した活動も発表された。

11月2日にはインターネットテレビ「AbemaTV」で、72時間連続の生番組「稲垣・草なぎ・香取 3人でインターネットはじめます『72時間ホンネテレビ』」を放送予定、3人が共演することも決まった。

3人の新たなメディア戦略に、ある人気放送作家は、

「今まで活用してこなかったSNSを使った。彼らのプロモーションとしては一番キャッチーな形になったと思う」

と言う。

「新しいことがスタートするんだという意識づけがうまくできたと思います。ファンにとっては、自分たちがやってほしかったことを3人がやってくれるかもという思いは強いでしょうね」(放送作家)

3人が行動を共にすることにも期待感が高まっている。

「ファンは、仲間意識というか、一緒にがんばっている姿にキュンキュンするところがあるので、72時間の生放送など、絆があるんだと実感できたと思います」(同)

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、

「一方的に情報を発信するテレビに対して、双方向でコミュニケーションをとれるウェブというメディアが非常に有効であると判断したのではないかと感じました。自分たちが主体性をもってやりたいことができることは大きい」

と分析する。

「彼らのファンの多くが、ウェブ、SNSを通じて彼らを応援する声を届けたということも、強く意識していると思います」(碓井教授)

動画でのアピールといえば、くしくも小池百合子都知事も同時期に衆院選を見据えたメッセージ動画を配信し、大きな話題を集めた。偶然のタイミングとはいえ、

「同じ方向への流れが重なって、道が広がっていくケースもありますね」(同)

ところで冒頭の新聞広告は、アナログメディアの代表のような存在であるが、それを選んだことも、彼らのメディア戦略のひとつではないかと碓井教授は言う。

「ウェブを使わない層のファンにも、僕たちはここにいるよ、元気でいるよと、実際に手に取れる形でアピールすることができた。メディアの向こうにいる受け取り手を考えた戦略、ここに、彼ら3人の優しさが表れています」


3人によって芸能界におけるメディアのあり方が、一気に進化する可能性は高い。【本誌・松岡かすみ、太田サトル、秦正理、永井貴子/黒田朔】

(週刊朝日 2017年10月13日号)