■■連載小説 経営コンサルタント竹根好助の先見思考経営 06
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【本書の読み方】
この小説は、これまで経営コンサルタントが主役になった小説がなく、脇役的な存在であることが多い、経営コンサルタントが主役です。「経営コンサルタント竹根好助シリーズ」の第4作目で、400字詰め原稿用紙120枚ほどの中編経営コンサルタント小説です。
本書は、現代情景と階層部分を並行して話が展開する新しい試みをしています。読みづらい部分もあろうかと思いますので、現代情景部分については【現代】と、また過去の回想シーンについては【回想】と表記します。
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■■ 1 親子のいさかい 2
【回想】
時代も流れ、一九七〇年代に育太郎の会社に入社したての頃の育雄は、大手印刷会社での三年の経験と自分の会社とのギャップの大きさに辟易していた。育太郎が創業したラッキーは戦後二十五年以上がたったというのに、ガリ版刷り一本である。ガリ版印刷と言っても、さすがに創業時のように鉄筆で手書きというものではなく、文字はタイプ用原紙に、和文タイプライターで打って原盤を作成し、電動の謄写輪転機という機械で印刷する。時代遅れも甚だしく、国民の生活レベルが向上するにつれ需要も急速に落ちていった。
育雄常務の問題に加え、育太郎は売上の減少にも頭を抱えていた。起死回生といわないまでも、従業員を養うだけの売上はなんとしても確保したいと考えていた。
頭ごなしに怒鳴られた育雄であるが、戦後の混乱期に育太郎が不自由ない生活を家族にさせてきたことについては感謝をしているし、敬意も払っている。怒鳴られたとはいえ、感情的になっては、どんな方向に発展してしまうかわからないと懸念をした育雄は抑え気味に言った。
「親父、このままではいずれ倒産だよ。」
怒鳴り声を上げた育太郎であるが、さすが年を重ねているだけあって自分の気持ちをコントロールすることができる。
「印刷は、日本の文化を支える重要な産業だ。そう簡単に会社を倒産させてはならない。」
「だけど、売上は落ちているし、このままじゃ絶対に生き残れないよ。一層のこと工場をつぶしてアパートにでもした方が親父の老後は安泰だろう。」
「印刷屋をやめて、おまえは何をするつもりだ。」
「俺か、俺はまたサラリーマンに戻るさ。」
「一旦会社を辞めて、履歴書に傷がついた人間なんて、おいそれと雇ってくれるところなんて見つからないよ。それが日本の社会構造なのだ。」
「社会構造とは、大げさだな。とにかく、このままじゃだめだ。親父の印刷に対する文化論は、俺も賛成だ。だけど、これからどうする気なのだ。」
「まだまだお客さんだって、うちの仕事に満足している。その気になって探せば新規のお客さんだって開拓できる。」
「何言ってんだよ、親父、これからはお客さん自身が、簡単な印刷物は内製化していくよ。」
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