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抗生物質が効く時代はあとわずか 続

2019-07-15 10:28:24 | 健康・医療
前回臨床の場で抗生物質が効かない耐性菌が増加し、近い将来抗生物質が役に立たない時代になるという記事に、反論しましたが、その続きとなります。

その根拠の一つが昨日も書いた、抗生物質耐性の獲得はあくまで「突然変異」であるという点です。これは偶然の「突然」の変異ですので、何か目的をもって変わるという事は絶対にありません。

また変異の数は何かの遺伝子の1,2カ所ですので、抗生物質を分解するような新たな酵素を作り出すという事もあり得ません。

例えばβ-ラクタム類で言えば、細菌のタンパク質あるいはペプチド分解酵素の遺伝子に変異が生じることにより、基質特異性が変わりβ-ラクタムを分解できるようになることで耐性菌となります。

これをβ-ラクタマーゼと呼んでいますが、新たな酵素ではなく、あくまでプロテアーゼのような生命維持に欠かせない、細菌が持っていた酵素の一部が変わったものにすぎません。

ですから抗生物質があるから耐性菌が出現するのではなく、多くの変異株のうちたまたま抗生物質を分解するのもできたというべきでしょう。

抗生物質はすべて菌を殺すイメージがあるかもしれませんが、あくまで分裂しようとする菌を殺すにすぎません。そのため抗生物質は殺菌ではなく静菌作用と呼んでいます。ですから抗生物質を投与しても、大部分の菌はなくなりますが一部は残ってしまいます。

通常はこの残った菌(耐性菌も含みますが)が、ヒトの免疫機構によって排除され完治するという事になります。従って基礎疾患があったり非常に弱っていて免疫機能が落ちているような人は、非常に長期間の抗生物質投与となり、この場合は耐性菌だけが残るという状況になります。

耐性菌というのは重要な酵素が変異した菌ですので、ある意味弱く他の菌がいるとその競争に負けて増殖できないものです。ですからその他の雑菌も入らない清潔な環境、つまり病院以外では耐性菌が繁殖することはあり得ません。

ですから問題になるのは、糖尿病の末期や肝硬変の末期といった入院患者が運悪く感染症になった時だけといえます。以上ことから、自然界に耐性菌が蔓延することは絶対になく、普通に生活している限り感染症になっても、抗生物質で簡単に治癒できると考えられます。

新しい抗生物質が発見されても、1年もたつと耐性菌が出現するといういい方をしますが、実際は抗生物質が発見される前からそれを分解できる菌は存在しており、そういったいわゆる「耐性菌」を見つけ出すまでに1年程度かかるというのが正しいと考えています。


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