内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

第二回日仏ZOOM合同ゼミの報告 ― 逸脱的「アクティブ・リーディング」の試み

2020-11-17 23:59:59 | 講義の余白から

 今日の午前9時から10時半まで第二回目の日仏合同ゼミが行われた。前回よりも三十分延長した。構成は基本的に前回と同じく、個人発表、ブレイクアウト、報告・総括の三部構成。まず、ストラスブール側の二人で一つにまとめた発表。続いて法政側が二人の個人発表。この二つの発表は、前回に引き続き、和辻の『風土』における自然と風土の違いを、衣替えや古い民家など、それぞれ自分にとって身近な例に引きつけて理解しようとする試み。具体的な例に即しての簡潔で明快な発表。ストラスブール側は、すでに演習の枠内で個別に発表した内容をあらためて手直ししたもの。
 この発表は、私が予め与えた三つの問いに答えることから成っている。その三つの問いはそれぞれ派生的な一つの問いを小問として伴っている。
 問1 あなたが季節を感じるときは、あるいは、季節の到来を感じるときは、どんなときですか? 問1-1 その季節の到来は、あなたにどんな感情を引き起こしますか?
 問2 その感覚・感情は他の人と共有されている感覚・感情ですか? 問2-1 それが共有されていることをどのように確認することができますか?
 問3 その季節と分かちがたく結びついているものはなんですか? 問3-1 そのものとあなたとはどんな関係ですか?
 これら三つの問には、演習出席者全員にそれぞれスライドを用意して二週間前に答えさせた。その中から特に優れていた二つの発表を共有するのが今回の目的だった。
 上掲の問いを見てわかるように、和辻のテキストから離れ、自分たちにとって身近な感覚から問題を考えさせた。これはこれでいくらかの成果を上げることができたと思う。発表した学生たち自身は必ずしも気づいていないが、風土の問題に触れる経験が自ずとそこには含まれていた。それを引き出すのが私の役目だった。
 今回の総括の最後に私がまとめとして述べたことのうち、二点記しておく。
 一点目は、風土を固定的な所与としてとらえるのではなく、むしろ間風土性から風土を考えてみようという提案。様々に可能な自然と人間との関係が差異化されていく動的な過程として風土が形成されていく〈場所〉として間風土性をより根源的な次元として措定するというアイデアである。
 二点目は、一点目から導かれる一つの可能性として、自然と人間との関係の形成あるいは再生の方法として風土を捉えることはできないかという問いかけである。
 いずれも、和辻の『風土』の読み方としては逸脱的との誹りを免れがたいかもしれない。それを承知で敢えて言えば、私が提案しようとしているのは、テキスト読解・解釈を超えた「アクティブ・リーディング」の一つの試みなのである。