万聖節の休暇明けの今日から遠隔授業が一斉に始まった。休暇中に遠隔への全面的な移行が決まったから、いくらかは準備の時間があったし、すでに三月からの第一回目の大学閉鎖時の経験があるから、初日の今日、教員の側にも学生の側にも、大きな混乱はなかったようだ。
しかし、朝、Moodle への接続が集中したせいで、一時間あまり、接続がきわめて不安定になり、これでは使いものにならないと、学生たちにはメールでBBBのURLを別途知らせた。結果としては、午前11時の授業開始10分前には Moodle の当該ページが開けるようになったので、ほぼ全員開始時間には接続できていた。
今日のところは、まずは安定した接続を確保するために、学生たちのカメラとマイクはオフにさせ、私の方だけカメラをオンにし、授業を始める前に学科の今後の方針についてフランス語で説明してから、日本語での授業を始めた。まずホワイトボードを使って、「今の自分の気持ちを日本語一語で表現してみてください」と書くと、「疲労」「心労」「不安」「心配」「怖い」「ストレス」などの言葉が並んだ。
後は、準備しておいたパワーポイントを使って、教室でと基本的に同じパターンで授業を展開していった。日本語ワンポイント・レッスン(「必ずしも」「けっして」「しかも」「したがって」の使い方)、日本文明・文化を理解するためのキーワード(「見ゆ」から「思ふ」へ 〈眼〉から〈心〉へ ― 万葉集から古今和歌集への世界認識の転回点)、本日のメインテーマ「戦争と日常」(『この世界の片隅に』をめぐって)、今週の詩(吉野弘「夕焼け」)。最後に、日本語作文の課題として、「他人のつらさを自分のつらさのように感じることはできるでしょうか」という問題を出した。提出期限は今度の日曜日。
授業に先立って、大学のサイト内にパッドを開設しておき、学生たちはいつでもそこに自由に書き込みできるようにしておいた。そちらを使って質問してもよいことにしてある。こうしておけば、私の方で定期的にパッドをチェックして、質問があればそれにその都度答えを書き込むだけでよく、いちいちメールのやり取りをしなくて済むし、同じ質問を避けることができる。
前期はもうおそらく教室での授業には戻れない。遠隔一本という条件下、学生も教員もあまり無理せず、できるだけインターラクティブな授業を展開し、出口の見えない閉塞感を僅かなりとも軽減させたい。