内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

悩ましき遠隔試験

2020-11-09 23:59:59 | 講義の余白から

 今日から遠隔授業第二週目が始まった。第一週の先週は、今回がはじめての遠隔授業だった教員も数人いたにもかかわらず、全体としてさしたる問題もなく終えることができた。
 すでに万聖節の休暇中から教員間で話題になっていたことは、試験をどうするかという問題である。私が担当する文明系の講義は遠隔にも比較的に対処しやすい。そもそもカンニングなどまったくしようのない試験問題を作ることができるからだ。ところが、語学系は、遠隔試験の場合、いかにカンニングを防ぐかに頭を悩ませなくてはならない。
 というのも、いくら教員たちが口を酸っぱくするようにして、不正が確認された場合、零点、悪質な場合は、査問委員会にかけ、最悪、次年度大学に登録できなくなることもある、と警告しても、いっこうに不正はなくならないからだ。
 簡単な翻訳問題など、ネット上の自動翻訳でかなり精度の高い翻訳が一瞬にしてできてしまう。ある教員など、教室の試験の答案は、学生の答案を採点していることになるが、遠隔の場合、自分が採点しているのは、実のところ、グーグルやDEEPLの翻訳でしかないと嘆いている。
 もう一つの問題は、遠隔試験中に学生たちがSNS等を使って答えを教え合うことを防ぎようがないことである。高度な翻訳問題の場合、完全に同一な答案が二つ以上あれば、疑いをかけることができるが、初歩的な問題では、答えが同じになることはむしろ当然であり、学生が自分で解いたのか、友だちに聞いた答えを写しただけなのか、区別しようがない。
 これらの問題への対処法として、筆記試験をやめて、遠隔での個人面談方式の口頭試問に切り替えることも不可能ではない。しかし、それはクラスの人数が比較的少ない場合にのみ可能である(それでも、一斉の筆記試験に比べて、少なく見積もって、その十数倍も試験時間がかかる)。登録学生が何百人もいる講義では、そもそも実際問題としてそれは実行不可能だ。
 これから一週間ほど、でこの問題に対して学科としての基本方針と具体的な対処法を策定しなくてはならない。