現在台湾の大学に留学中だというボルドー大学中国学科修士二年の学生から先週突然メールが届いた。ボルドー大学日本学科の先生からの紹介だという。準備している修士論文は『荘子』「斉物論篇」を対象とし、その読解の手がかりとして西田哲学がますます自分にとって重要になってきたので、助言がほしいという主旨であった。
メールの短い文面からだけでは、本人の意図していることがよくわからなかったのだが、「喜んで相談に乗りますよ」とすぐに返事を送った。ただ、辞書項目の執筆ですぐには時間が取れないから、一週間ほど待ってもらうことにした。
幸い、今週火曜日に大項目「形而上学/第一哲学」の第一稿(日本語に訳せば、四〇〇字詰め原稿用紙で三〇枚くらいになり、これはもう制限字数大幅超過だから、後日大鉈を振るって削らなくてはならないだろうけれど)が一応書き上がり、編集責任者に送信できたので、今週後半なら少し時間が取れると水曜日に連絡した。で、昨日金曜日にZOOMで話し合うことになった。こういう場合、テレビ会議ツールはほんとうに威力を発揮してくれる。お互い移動することもなく、話し合いそのものだけの時間を確保すればよい。その前後の仕事への影響も極小で済む。それに、まずは学生の話を聴かないことにはどう助言すればいいかもわからないから、こちらの方であらかじめ準備のしようもない。
面談はこちらの時間で午後一時(台湾とは六時間の時差があるからから、むこうにとっては午後七時)から始まった。
話を聴いてみると、意志の問題についての哲学的関心から『荘子』を研究対象にしたいことはわかったが、まだ研究方法も定まっていないし、指導教官は哲学が専門ではなく、そもそも中国学科で哲学的な問題を主題にすることは難しいようで、どう助言すればいいのかよくわからず、困惑してしまった。可能なアプローチについてあれこれ話しているうちに、話がどんどん広がっていって、話を具体的に研究の出発点に引き戻すのに一苦労した。ようやく話が一段落したと思ったら、西田の行為的直観について私が書いた論文について質問がいくつかがあると言うので、それらに一つ一つ答えていった。簡単には答えられないような大きな問題もあり、一通り説明するだけでもえらく時間がかかった。
論文の書き方についてとても参考になったと本人は大いに喜んでくれたからよかったものの、これはまだまだ前途遼遠であると言わざるをえない。最後は、先日の台湾の地震の話や冬休み中にした日本旅行の話など、研究を離れた雑談になった。面談はニ時間に及んだ。
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