いつ、どこで、誰からとは書いてなかったが、私のことを聞いたという、フランスのロレーヌ大学の数学哲学が専門の教授から今日の夕方メールがあった。教授は、西田幾多郎に影響を受けたと思われる日本人数学者、竹内外史(1926‐2017)について、日本人研究者と共同で論文をこれまでに二つ発表している。アンリ・ポアンカレ資料センターの所長でもあり、ストラスブール大学とは緊密な協力関係にある。日本哲学への関心をここ数年深めており、数学哲学の分野においてより包括的な日本哲学研究を今後展開していきたいと考えているが、相談に乗ってくれないかというがメールの主な内容であった。
西田はすでに中学生の頃から数学に強い関心を示し、大学での専攻は数学か哲学かで迷ったくらいであり、生涯数学への強い関心を保ち続け、数学者末綱如一(1898‐1970)とは親交を結び、全集には三十数通の末綱宛の書簡が収められている。
私は数学哲学に関してはまったくの門外漢だが、教授に何らかの仕方で協力することで、今まで近づいて来なかった西田哲学の側面に学術的に触れる機会が今後与えられるかも知れない。来週ストラスブール大学に来る予定があるという教授に、面談を快諾する返事をすぐに送った。
昨年あたりから、フランス人学生から日本哲学の分野での博士論文の共同指導の依頼を何件か受けている。大学ごとの規約の違いによって必ずしも実現可能ではないのだが、私が西田哲学についての博士論文を書いていた二十年余り前とは実に隔世の感がある。
博論後のこの二十年余り、研究上の業績として誇れるような仕事は何一つして来なかったことを恥ずかしく思うが、フランスにおける日本哲学に対するこのような学術的な関心の深まりにいささかでも貢献できたことは誇りに思うことを許されたい。
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