■David Sylvian 「Late Night Shopping」(From『Blemish』2003)■
Ask me I might go
Why not take me with you?
Ask me I might go
Late night shopping・・・
We can take the car
No one will be watching
We can lose ourselves
Late night shopping・・・
Tell me what we need
Write a list or something
We don't need to need a thing
Late night shopping・・・
尋ねてくれたら 行くかもしれない
どうして、連れて行ってくれない?
尋ねてくれたら 行くかもしれない
深夜のショッピング
車に乗っていこう
誰も見ていないから
じぶんを失ってもいい
深夜のショッピング
何が要るのか、教えておくれよ
リストに書いてくれてもいい
必要なものがなくても構わない
深夜のショッピング
【1988年のじぶんのノートの裏表紙に、万年筆で書かれたいたずら書き】
既に失ってしまった、もうそこに居ない誰かに、まるで妄想のように、空気相手に独白し、尋ねて/聞いてみる。自問自答の世界。
デヴィッド・シルヴィアンのそれまであった、深遠な遠き何かを探っていく世界は無い。
ここには、淡々と過ぎ行く痛い刻(とき)の静けさ。しかし、それゆえの身近な範囲1m世界の安堵・諦念がある。
そこには見えない深海も天空も無い。地上1mちょっとの世界に、ごくごく見えるフラットな日常。
身近な「私」生活の周辺の温度と、そこからこぼれ落ちる肉薄したありのままの姿が語られる断片。それまでとは違う形での内省的世界。
茫然自失としながら、深夜のショッピングカートを押していく彼の周囲には、雪が積もっている。
深夜1時消灯。
睡眠薬を服用しながらも、明け方5時半に起きてしまう。寝た気もしないまま、以後眠れず。
外はまだ真っ暗な中、洗濯・洗い物を済ませる。次第に「世」は明けていくが、空は真っ平らな白いのっぺらぼう。
緑茶とタバコで一服し、お湯を溜めて浸かり、髭を剃る。
7時早々につくばに向かう道は、比較的暖かい。早い時間というのに、早起きの人々が電車に乗っている。
ひと仕事を終えて、都内に戻ろうと南千住で降りると、天候は一変し、突風と手がかじかむ冷え込み。
そして、粉雪が舞う。倦怠感を覚えながら、地下鉄はあっという間に都内中心へと身を運ぶ柩(ひつぎ)。
傘を持たないじぶんは、雪の舞う中、仕事場にそのまま戻る。
外界と断絶された場所で、再び仕事をし、9時近くまで。
橋を渡り、夜道を歩き、光るいくつもの酒場を抜け、電車で帰路を辿る。
夜の買い物を終え部屋に戻り、タバコを吸い缶ビールを開ける。