
ジャニス・イアンとの出会いで記憶にあるのは、隆盛を極めた70後期~80年代初頭。
自分にとっては、有名なドラマ『岸辺のアルバム』引用曲よりも、角川映画全盛の頃、映画化された『復活の日』のテーマ曲。
TBSラジオを夜な夜な聞くなか。
明かりを消したひとりのベッドの暗がりで、角川映画のラジオCMバックに掛かっていた「You Are love」。(1980年5月作品)
その後。。。
と思いながら、ちゃんとジャニス・イアンのレコードに向き合うことなく、歳を取ってしまった。
2008年、ビルボードライヴ東京に、ジュリア・フォーダムに会いにいった際、ジャニス・イアンも予定表にあったが、自分の気持ちはその時点でも、そこにむかえなかった。
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この金曜日~日曜日の3日間。空白の時間を与えられて、年末年始以来、自己に向かい合えた。
その傍らで、偶然発見したジャニス・イアンのベスト盤。
1つ。。。そして、また1つ。。。歌が流れていく。
本当は、その曲と曲の境目に変化があるのだろうが、ジャニス・イアンの音楽にはそれがない。
それは決して、金太郎アメのような(切っても切っても同じ音楽)という類の感覚ではない。
どの曲にも、そこに流れていることを感じるのは、彼女の落ち着いた歌声、揺らがない芯、しっかりした土台の上で発声された想いの発露。
それが、ずーっと川の流れのように、自然につづいているのだ。
そして、いつの間にか、こころの奥深いところに響いている。
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めまぐるしく情報に追い立てられる2014年の日本。その器の中に居る自分。
その中で、本当の意味の「個」人の内発的意志を保つのは、実に困難である。
つまらないことに言いがかりを吹っかけられて、その対処にコテコテしている間に、大事な時間はあっという間に過ぎ去り、その日は終わってしまう。
「また今度」「続きはまたあした」と、時間切れで、やりたかったことは後送りにされていく。
そうしているうちに、なあにもしていなかった数か月が過ぎてしまっていたりする。
これは許されないことだが、濁流に流されていく人々の姿は事実である。
「もうゴメンだ」と、そんな状況に反発して躍起になる方法もあろう。そういう心境のモードになるときもある。(刺激的電気ショック的音楽・にぎやかな音楽が有効だったりもする。)ただ、そんなこともない時だってある。
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昨日、日曜日。
疲れてしまい、頭痛激しく・やまず、一日じゅう、光を避けた部屋。
微光のみが差す室内で横になっていた。
それによって疲れが取れるわけでもなく、むしろ余計に疲れてしまい、気持ちは追いつめられるばかり。
気分は「出口なし」。ひたすら落ち込んでいく。
そういう中。
聴くつもりはなかったのに、たまたま掛けた1曲目に導かれて、ジャニス・イアンの歌声と時を一緒に過ごした。
かつて自分が中高生までの頃、音楽を聴く、という時間は、鳴っている音と自分の内面を眺め合いつつ、何かに気付く。
そういう不思議な時間だったように思う。
元から静かな音が好みの性格は、そこに戻って、しばしの解放を味わった。
■ジャニス・イアン 「From Me To You」1975■

