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場所によるが、今週半ばにはセミの声を、一気にピタッと聞かなくなった。
太陽は日没が17時台に入り、朝夕の涼しい日々。
狂ったような暑さはなくなったものの、平日昼の温度は32~33℃を指していた。
でも、もう公園など野外にいても、ジリジリとした暑さはもはや無い。
たぶん幼い頃の夏はこんな具合だったんだろう。
こんな日を幼い頃は暑いと言い、今では涼しいと思っている、そんな感覚。
今までの流れなら、すでにパンク状態の都内随所が、さらに異常な人と騒ぎでごった返したはずの夏。大型催事が火に油を注ぎ、その前後に犯罪や異常が起きる可能性があった。
しかし、祈りが通じたか、未だかつてない静かな夏が終わろうとしている。
かすかに夏であり、秋めいても来た時期。
どちらの志向も持ち合わせた音楽には、例えばヴァージニア・アストレイの音楽がある。
彼女のレコードが初めて国内発売された1983年秋、アルバムには「It's Too Hot To Sleep」(暑過ぎて眠れない)といった夏の夜の情景描写もあれば、鐘鳴る森の道で聞こえてくるピアノ「A Summer Long Since Passed」(過ぎ去りし夏)もある。
うるさい世間や喧騒、救いようのない世界。
そこから離れた場所で、このレコードが静かに聴こえてくる。
その幸せを噛み締める夏の終わり。
■Virginia Astley「A Summer Long Since Passed」'82■
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