珍しく拙宅付近のもつ鍋屋さんで咽をうるおしていたところ
いっしょにいった同僚が不調を訴えだした
初めは冗談かと思っていたけれど彼の表情がみるみる
青ざめて汗が噴出してきた
救急車に同乗して市内の病院へ
搬送中も意識はあったが胸が苦しい、酸素をくれという
脈拍低下、血圧乱高下
心筋梗塞だった
①幸い消防署が近くで救急車がすぐに来たこと
②救急救命士の判断がよかったこと
③心臓血管外科/設備の整った病院に搬送できたこと
で、血管を拡げる処置ができて命はとりとめた
病院の関係者にきいたところ、その日だけで8人目の
心筋梗塞の急患がいたそうだ
夏になると発汗などによる脱水症状が起こりやすく
脱水によって血液がドロドロになり血栓ができやすいそうだ
また、いまどき血栓・狭窄・梗塞は誰にでも起こりやすくて
1回目の発作が[いつ][どこで]起こるのかで運命が分かれると
今回、彼は「運」がよかった
駆けつけた奥さんの傍らには、小さな男の子が2人
治療中に一度心臓が止まったけれど
運命は彼らから父親を奪い去らなかった
救急車の中で血圧が低下してモニターが赤く点滅しだしたとき
自分はまだ見えもしない病院のことを話していた
「おう、そこの角をまがったらもう着くからな、大丈夫や、すぐや」
「もう見えてきたぞ、近いもんや」
ヘタな芝居を思い出すと赤面してしまう
翌日、元気になった彼に逢ったとき
彼が少し冗談を云って笑わせてくれた
ホッとしたと同時に、前夜の苦しんでいた顔が浮かんで
堪らなくて「仕事もあるからゴメンな」と言い訳して
集中治療室を辞した
駐車場まで出て運転席に収まったとたんに
堰をきったように涙があふれた
助かってよかった