年下の従弟が7月になくなっていたと喪中はがきで知った。
老齢の叔父叔母からの連絡だった。
彼はいわゆるダウン症候群で、自分がものごころついたころから面白い男の子だった。
彼の兄は自分と同い年、兄からすると可愛い弟なのだけれどいろいろ葛藤もあったように聞いていた。
活発で利発な兄とダウン症の弟、いろんなんことを感じながら二人とよく遊んだ。
高校を受験するころになって従兄とは疎遠になり、会うこともなくなった。
その間、従弟は変わらずに家にいて、変わらずにドラゴンズの試合を観て、変わらずに
スコアをつけて、変わらずにブツブツ文句を言っていた。
授産施設に通っていた。
昼休みに仲間と遊ぶのが楽しい、キャッチボールをするのだといっていた。
友人の球が速くて手が痛くなるのだと楽しそうに話していた。
いつもいつも大人の真似をしたがり、煙草をふかしては消して、叔父叔母によく叱られていた。
云いたいことが伝えられないストレスで時々癇癪を起していたが、成長するにつれてそれも収まっていった。
自分の両親も彼のことが大好きだった。
夏休みには彼を呼び寄せて、よく遊びに来させていた。
父親は彼を海に連れて行き、自由に遊ばせていた。
「素直」ということが彼のもっともすぐれた点だったかもしれない。
暑いときには暑いといい、腹が減れば冷蔵庫を開けて目についたものを食べてしまう。
めぼしいものがなければ近所の店で駄菓子をいただいてきてしまう。
父親にも母親にも、彼にももう会えない。
そんな彼の行く末を誰もが心配していた。
叔父叔母とも歳をとって、彼らの心配の方が先になっていた。
自分も従弟のことを忘れていた。てっきり元気でいると思っていた。
その彼が早々に亡くなっていたことを知らされて、今泣いている。
昨晩から、ずっと泣いている。
もう会えない。会いたくなってももう会えない。
どのようになくなったのかも知らないのに、勝手に泣いている。
会っても話はないのに、勝手に泣いている。
もう一度会いたいと思って泣いている。
会いに行くこともなかったのに、会いたいと泣いている。
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