Remains of The Accidents

アクシデンツなページ

【読了】 天使の代理人  山田宗樹

2011年06月09日 | 読書

妊娠中絶・堕胎をテーマにした作品
作者は「嫌われ松子の一生」で強くて弱い不思議な女性像を描いていたひと

天使すなわち赤ちゃんの代理人と称して堕胎希望の妊婦を説得していく活動を
描きながら、人間はどこからどこまで人間であるのか
生まれるということは幸せなことなのか、不幸なことなのかと問う

人生が誰にとっても楽しいもので、「能除一切苦」と唱えずとも
懺悔の言葉を口にせずとも生きていけるのならばよいのだろうけど
なんだか今の世の中を見ていると、また実際に生きていると
生きてくるということ、生まれるということを単純に賛美する気持ちにはなれない

昨日も3歳の男の子が餓死していたことが報じれていた
体重はわずか5kg前後で、平均的な3歳児の1/3程度だという
恐らく満足に食事を与えられていなかったのだろう
理由はわからないが、幼い子どもが長時間にわたってひもじい思いを
続けていたということだけでやるせない気持ちになる

この小説の先には、生まれてきた子どもに対する厚い社会の保護が
続いているのだろう
小説の中でも福祉について記載されてはいるが
「生ませる」には生ませるだけの環境が必要なのだ

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【読了】 急な青空  南木佳士

2011年06月02日 | 読書

南木佳士の作品が好きでよく手にする
彼は現役の医師ながら芥川賞作家であり
その人生において病いに冒されてもいるという

このエッセイでも、疲れた心が山に向かい
少しづつ開放されていくところが感じられる

遠く信州にいる作家の快復など関係ないと
云えば関係ないのだが、彼のエッセイなどを
読んでいると同じような病いの入り口に立つ
自分を感じ、自分の肩をなんとか娑婆の方に
向けさせることができるので離れられない

作者には申し訳ないのだけれど
拝金・独善の世の中にいて、なんとか立って
いる自分にそっと「おまえはまだまし」と囁ける
ように利用させていただいている

とかくこの世は窮屈だ

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