出力トランス(OPT)の変更で、このアンプの粗が見えてきた様です。
音が荒っぽく、ボーカル物を聴くと、どれもハスキー・ボイスになってしまいました。
要因を考えていたところ、思いつく事がありました。
それは、オープン・ループ・ゲインです。
この回路は、元々6AS7G用であり、その出力管を5998に変更したのですが、そもそもこの2つの球は増幅率μ(ミュー)が違うのです。
μ: RCA 6AS7G ---「2」 、 Tungsol 5998---「5.5」 で、倍以上の差が有ります。
そのため、オープン・ループ・ゲイン(無帰還の裸増幅率)が大きくなり過ぎていたのです。
実際に裸増幅率(Non NFB)を測定してみると、
6AS7Gの時、160倍
5998に変更後、580倍
となっていました。
これは大き過ぎますし、ここまでの増幅率は必要ありません。
しかもクローズド・ループでは、20dB近くの負帰還が掛かった状態でした。
そこで、初段管をμの低い物の交換する事を考えました。
今の12AX7(ECC83)がμ=100なので、これを12AU7(ECC82) μ=20に変更してみる事にしました。
それに私の経験上、12AX7は少し硬い音、12AU7は柔らかい音の印象を持っています。
この球は、初段と次段直結のPK分割に使っており、12AU7に置き換えるには、電圧・電流設定のやり直しです。
ロード・ラインを引きながら設定しました。ここで先日紹介した本「真空管アンプの素」が役立ちました。
参考までに、出来上がった設定でのロードラインです。
※このロードライン設定は後に再調整しております。
変更後の裸ゲインは「100倍」になりました。まあ、こんなもんでしょう。
ここからざっとNFBを「8dB位」かけて、クローズ・ゲインは「40倍」に調整。
矩形波確認においても、12AX7の時に少し見られた立上がりのリンギングが無くなりました。
12AX7の時(10KHz、LR ch SP端子、8Ωダミー)
12AU7に変更後(10KHz、上は入力波形、下はSP端子 8Ωダミー)
実際の音を聴いてみても、良い感じになりました。私の耳も満更でも有りません。
この時ついでに、各段の増幅率と波形確認、出力段のドライブ能力に余裕があるかも確認しましたが、大きな問題は無さそうです。
しかし、さらに音質を良くするため、更に追い込みました。
次のステップへ。まだまだ続きます。
次はPK段の電源電圧波形確認で少し気になった所が有ったので改善しています。