今宵は、こんな昔話なぞいかがでしょう。
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その島は、あの男が現れるまでは、とても平和でした。おまけに、金銀はじめあらゆる財宝をたくさん持つ、豊かな島でした。
島民たちは、とても働き者でした。小さい島がここまで繁栄できたのは、みな「海外」へ出て仕事をし、そして大成功をおさめたからです。
そんな島をまとめる領主さんは、とても優しく、毎晩、島民をねぎらうために、みなを集めて宴会を開くほどでした。
その島の名は「鬼が島」。
そこへ、ある日、一艘の船が流れ着きました。船には、一人の立派な格好をした男と、見たこともない獣が3匹、乗っておりました。男の背中には「日本一」と書かれたのぼりがくくりつけられていました。
「悪い鬼たちを、退治しに来た!」男はそういうと、いきなり持っていた刀で、出迎えにやってきた「鬼」を斬り殺したのです。と同時に、部下に引き連れていた獣たちも、顔をひっかき、噛みつき、目をつつきだして、「鬼」たちは、ただなすすべもなく、次々たおれていったのです。
たまりかねた島の領主は、ただちにやめさせたい、しかし下手に手向かえば仲間同様に殺される、早く帰ってほしい、しかしどうすればよいかとおろおろし、ついには半泣き状態で「参りました、私たちが悪かった、謝ります」と、何もしていないのに、男に土下座したのです。
男はそれを聞くと「そうか」と刀を納めたが、まだ何か不満そうな様子でした。それを見た領主、
「私たちの持っている、金銀財宝を、あなた様に差し上げますから、どうかお許しを・・・」
男はそれを聞くと、目の色を変え、領主が持ってきた金銀宝石だけにとどまらず、島民だれも知らなかった領主の持つ「財宝」を根こそぎ持っていき、「ばーん万歳、万々歳・・・」と陽気に歌いながら、ようやく島を後にしたのでした・・・。
めでたし、めでたし(どこが~!!)
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むろん、これはかなり誇張したフィクションでありますが、もしあの昔話も、逆の立場から見れば、こんな話になってたかもしれない。
そう考えると、歴史というのは、決して一方向だけからの見方をしてはいけないんだなと、また同時に、出来事一つをとっても、立場によっては正反対の解釈をされるわけだから、万国共通の「正しい」歴史というのは本来ありえないと思うのだが。