踊る小児科医のblog

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「未成年の喫煙防止」には社会的規制を含む包括的な取り組みが必要~日医報告書より

2005年12月14日 | 禁煙・防煙
日本医師会の禁煙推進委員会(プロジェクト)による「未成年者の喫煙防止対策」についての答申が発表になりました。

日本禁煙推進医師歯科医師連盟会長の大島先生を含む委員会の先生方による、私たちが取り組まなくてはいけない課題を簡潔明瞭に網羅した素晴らしい報告書だと感じました。

ここでは、医師会館や医療機関の禁煙化、医師自身の禁煙(※)などについてはごく簡単に触れているに過ぎず、その大部分をさいて、社会的規制の強化やタバコ税増税、禁煙治療の保険適応化など、日常診療の外にある社会的問題の解決に向けて医師会が強いイニシアチブを発揮すべきことが強調されています。
(ちょうどタバコ税増税が、私たちが望んだような「大幅かつ継続的な増税」とはかけ離れた、ほとんど意味のない形で決定したというニュースが飛び込んできたところですが)

本文中にも、
『国際的に見ると、たばこ規制の取り組みは、未成年者に対する喫煙防止教育や喫煙者に対する禁煙治療のような個人の行動変容への働きかけにとどまらず、公共の政策によって実現する環境改善への働きかけへと移りつつある。』
『喫煙は、たばこ会社による広告・販売促進活動によって助長され、未成年者の間に始まる依存症であるととらえる必要がある。未成年者の喫煙を防止するためには、単に未成年者に喫煙防止を働きかけるだけでなく、喫煙するのが当たり前の社会から喫煙しないのが当たり前の社会へと、社会規範を変えていかなければならない。このためには、環境改善への働きかけを含む包括的な取り組みが必要である。この対策には、たばこ価格の引き上げ、公共の場所における禁煙、自動販売機の撤廃などの政策が含まれる。』
と明確に書かれており、私たちの問題意識ともぴったり合致するものです。

(ちなみに、上記のような観点から、11月19日のデーリー東北「追跡こだま」欄に掲載された「未成年の喫煙 地域、学校、家庭で監視を」という記事は全く意味のない時代遅れの最低なものでした。誰が誰に取材したらあんな的外れな記事が出来上がるのか、全くもって理解できません。その前の投書に対する反論を書こうとしているうちに、あのようなとんでもない記事が出てしまったのでした。)

なお、これは日医の委員会から会長への答申であり、会員のみがダウンロードできるページに置かれているのですが、医師以外の医療関係者や一般の方にもぜひ読んでいただきたい内容だと思いました。

本文13ページと長くない報告書ですので、プリントして読んでいただくのが一番なのですが、どうしてもPDFだと印刷せずに画面でもちゃんと読まずに終わってしまいがちだし(←私のこと)、二次利用されにくいので、勝手にHTML化してみました。
http://aaa.umin.jp/data/nichii_kinnen2005.html

赤字、下線、太字部分は私が独自につけたものですのですが、重要なところだらけで真っ赤・真っ黒になってしまいました。
是非ご一読下さい。

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目次
1.はじめに …………………………… 1
2.日本における喫煙の現状 ………… 2
3.包括的取り組みの重要性 ………… 3
4.急ぐべき課題 ……………………… 4
 (1) たばこ価格の引き上げの実現に向けての働きかけ
 (2) 自動販売機の撤廃に向けての強力な働きかけ
 (3) 禁煙治療の制度化に向けての働きかけ
 (4) 学校における喫煙防止教育の強化に向けての働きかけ
 (5) 胎児、乳児、幼児の受動喫煙防止と喫煙開始防止に向けての働きかけ
5.すでに一部実施されてはいるが、さらに強化を求めるべき課題 … 9
 (1) 学校の敷地内禁煙をはじめとする公共の場所における禁煙推進のための働きかけ
 (2) たばこ広告規制の強化に向けての働きかけ
 (3) たばこパッケージの警告表示の強化に向けての働きかけ
6.たばこ規制対策推進に向けての政府と関係組織団体との連携 … 12
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(※)医師の喫煙については、ノバルティスファーマ発行の Smoke Free Today No.18 2005.12「9学会合同禁煙ガイドライン」の記事の中で、
『医療従事者の喫煙率が欧米に比べて格段に高いわけですが「医師の喫煙はタバコの最大の広告である」ということを深刻に受け止めなければなりません』
と書かれています。
私も小中学校で防煙教育の授業をさせてもらってますが、未成年の喫煙は不良や非行などととらえるべきではなく、家庭・地域・社会全体の責任であり、その中で医療関係者の喫煙が及ぼす影響の大きさについて憂慮せざるを得ません。