踊る小児科医のblog

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子どもは歩く禁煙マーク~子どものための無煙社会推進宣言

2005年12月10日 | 禁煙・防煙
子どものための無煙社会推進宣言(日本小児科学会・小児科医会・小児保健協会)

 私たち小児科医と子どもに関わる保健医療福祉の専門職は、子どもたちが健やかに成長していけるよう手助けし、アドボカシー(advocacy)の精神にたって子どもたちの代弁者として、安全に安心して暮らせる社会の実現を図ることを使命としています。その重要な使命の一つとして、これまで「小児期からの喫煙予防に関する提言」(日本小児科学会、1999年12月)等の提言・宣言(*)により、子どもたちをタバコの害から守る活動を提唱し実行してきました。

 一方、2005年2月27日に、公衆衛生領域では世界初の国際条約である「たばこ規制枠組み条約」が発効し、わが国も条約を遵守するため国内法の整備を進めることとなりました。この条約は、タバコの消費が健康に及ぼす悪影響から現在及び将来の世代を保護することを目的とし、タバコの使用(能動喫煙)及びタバコの煙にさらされること(受動喫煙)を継続的かつ実質的に減少させるための規制を締約国に義務づけています。

 こうした世界的潮流の中で、私たちはこれまでの活動を発展させ、より確実に子どもたちをタバコの害から守るため、タバコの無い社会(無煙社会)の実現とタバコを吸わない世代(無煙世代)の育成を目指し「子どものための無煙社会推進宣言」を行います。

1.私たち小児科医と子どもに関わる保健医療福祉の専門職は、自らが非喫煙者であることをめざし、また周囲の者への禁煙支援をおこなう。

 さらに医学生、看護学生など将来の保健医療福祉専門職への禁煙教育充実を推進し、率先して無煙社会推進宣言を実行する担い手を育てる。

2.子どもに関わる全ての専門職、すなわち保健医療福祉関係だけではなく、教育関係・行政関係の諸学会、諸団体に無煙社会推進宣言への賛同を求め、それらの学術集会など諸活動を完全禁煙のもとに行い、そのことを活動の案内文、会場等に明示するよう求める。

3.胎児期から成人に至るまでの全てのライフサイクルにおける受動喫煙を防止するため、妊産婦や子どもが生活するあらゆる空間、すなわち家庭・教育機関(幼稚園から大学院まで)・保育所を含んだ福祉施設・医療機関・地域における「無煙化(smoke-free)」を促進する。

1)全国の教育機関、小児科・産科医療機関における「敷地内禁煙」の完全実施を求め、その実現のため関係者への禁煙支援を行う。

2)小児科医は、診療時に家庭内の喫煙状況を必ず確認し、家庭内での喫煙を強く戒め、また喫煙者に対する禁煙支援を積極的に始める絶好の機会を有していることを自覚し、その地域にある他の禁煙外来との連携も推進する。

3)未成年者喫煙禁止法を遵守するためにも、未成年者が自動販売機からタバコを買えないよう、通学路や子どものアクセスしやすい場所にある自動販売機の撤去をまず求めると共に、コンビニエンスストアなどでの対面販売でも、未成年者への販売が行われないような具体的対策の実行を、政府などの関係各方面に求める。

4)公共の場や人が大勢集まる場所での受動喫煙から子どもたちを守るため、喫煙室、喫煙場所、喫煙車両へは子ども連れの入室禁止が原則であること及びその際の管理者責任を明確にし、路上禁煙地域の拡大を推進するとともに、少なくとも通学路は全て禁煙とし、通学路標識に付随して「歩行中禁煙」の表示を行う。また、保護者を含んだ全ての喫煙者に対して、「子どもは歩く禁煙マーク」であることの認識を持たせ、子どものそばでの喫煙が許されない行為であるという自覚を促す。

4.子どもの喫煙者に対しては、叱責や処分ではなく、ニコチン依存症としての治療を第一とする新しい考え方を教育現場に普及させ、全国どこででも適切な対応が可能となるよう、「子どものための禁煙治療外来(卒煙外来)」のネットワーク確立を推進する。

 これら活動を推進し実現するための諸施策について、政府などの関係各方面への働きかけを協働して積極的に行い、タバコ税増税といった政策的な対策も求め、無煙社会の早期実現をめざす。

2005年12月6日
                   社団法人 日本小児科学会
                   社団法人 日本小児科医会
                   社団法人 日本小児保健協会
(順不同)

(*)「子どもの受動喫煙を減らすための提言」(日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会、2002年1月)、「日本小児科医会宣誓」(2003年1月)、「未成年者の喫煙を無くすための学校無煙化推進」(日本小児保健協会学校保健委員会、2003年9月)、「禁煙推進に関する日本小児アレルギー学会宣言2004」(日本小児アレルギー学会、日本小児科学会、2004年11月)。

院内版感染症情報~2005年第47週(11/21~11/27)

2005年12月09日 | こども・小児科
 9月から10月にかけて咳がひどくなるタイプの風邪がメインになり、現在も続いています。10月下旬から、これも毎年11月頃に流行するウイルス性胃腸炎(嘔吐・下痢・発熱)が増加してきています。この時期のウイルス性胃腸炎は真冬に流行して重症化しやすいロタウイルスではなく、比較的軽症で済むノロウイルスが主体です。嘔吐は大体最初の一晩でおさまります。吐いているときには何も飲ませずに数時間から一晩待って、吐き気がおさまってから水分を再開するようにしましょう。点滴は通常必要ありません。

 流行耳下腺炎(おたふくかぜ)と水痘(みずぼうそう)小流行が保育園などで残っています。10月初旬にかけて喘息発作が一番多い時期を迎えましたが、その峠も過ぎて、発作時の治療からコントロールのための治療に移りつつあります。ダニやホコリなどの環境対策も一緒に続けていきましょう。

 インフルエンザは八戸でも発生が報告され、例年より早めの流行が危惧されます。全国的にも流行や脳炎・脳症の発症例も報告されています。

あれから25年~ジョン・レノンの死ではじまった1980年代

2005年12月08日 | ART / CULTURE
実はこのタイトルには偽りありで、1980年はポールが来日して大麻所持で逮捕され公演中止になった事件で幕を開けたのでした(私はそのチケットを持っていた)。そして12月8日にジョンが射殺されてから今年で25年(真珠湾から64年)。高校3年、受験勉強の最中にそのニュースをFENで聞いたのが思い出されます。「つい昨日のように」と書きかけて、思いとどまりました。四半世紀。ジョンが死んだ歳も厄年も通り過ぎて、体力以上に気力の衰えが気になる年齢になってしまいました。ジョンが生きていれば65歳。ポールは来年64歳になるという。。(まさか本当にその日が来るとは)

ところで「あれから25年」ってどこかでみたような、、と思ったら、今年のお正月にシルクロードから25年 [ ART / CULTURE ] / 2005年01月02日で同じようなことを書いてました。(^^;;

ジョン・レノン・ミュージアム
1980年[ザ・20世紀]

ボルネオの森で発見されたミステリアスな肉食獣

2005年12月07日 | NEWS / TOPICS


昨日(6日)WWFから発表になった"Mysterious carnivore discovered in Borneo's forests"というニュース。根が単純なのでこういう話にはワクワクしてしまうのですが、よく読んでみるとそんなに楽しい話でもない。(よって、ほのぼのではなく普通のNEWSのカテゴリーに入れました)

例によって政府による大規模開発(オランダの面積の半分にも達する世界最大のパームオイルのプランテーション=中国開発銀行融資)の手が迫っていて、このまま二度と発見されずに永遠の謎に終わってしまう可能性がある。しかも、この地域は海抜1000~2000mもあるのですが、専門家によると oil palm は海抜200m以上では生産性が低く植生に適さないのだという。

ところで、カリマンタン島とは聞き慣れない名称ですが「英語ではボルネオ(Borneo)、インドネシア語ではカリマンタン(Kalimantan)の呼称を使うのが一般的」だということです。

「新種」の肉食動物発見 ネコ大、カリマンタン島で
 【ジュネーブ6日共同】世界自然保護基金(WWF、本部スイス)は6日、インドネシア・カリマンタン(ボルネオ)島の熱帯雨林で、ネコほどの大きさの「未知の肉食動物」を発見したと発表した。WWFは「全くの新種か、テンないしジャコウネコの知られざる仲間」の可能性があるとしている。
 WWFによると“新種”動物の姿は同島の山岳地帯にあるカヤン・メンタラン国立公園にWWFが設置したカメラが2003年、夜間に2度だけとらえた。体毛の色は濃い赤で、ふさふさした長い尾を持つ。耳は小さく、後足が発達している。
 WWFは追跡調査を続けているが、その後は目撃されていない。
 WWFが今回、発見情報を公開したのは、インドネシア政府が今年7月にカリマンタン島でのアブラヤシ大規模栽培計画を発表したため。WWFは生態系が損なわれ、この動物の正体も永遠の謎で終わってしまう恐れがあると憂慮している。

すでに到来している「健康格差社会」~地獄の沙汰も金次第

2005年12月06日 | こども・小児科
「悲惨な犯罪を防ぐことと小泉“所得格差拡大”改革(2005年12月03日)」「子どもの命は「超高コスト社会」で守る(2005年12月05日)」の続きですが、近藤克則氏(日本福祉大学社会福祉学部教授)の「健康格差社会-何が心・社会・健康を蝕むのか-」月刊保団連2005.11)からいくつかのデータや主張を紹介してみます。

この論文の詳細は『健康格差社会 何が心と健康を蝕むのか』(近藤克則 医学書院 2625円)に記されているようですが、まだ入手していないので「内容紹介」を引用しておきます。
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豊かな日本でなぜ? 健康社会実現のヒントに満ちた1冊
心と社会と健康はつながっている。近年、そんなエビデンスが蓄積されている。本書では、わが国でも広がる「健康格差」に注目。ゆき過ぎた経済格差社会は「負け組」だけでなく「勝ち組」の健康までも悪化させること、また人間同士の温かなつながりや信頼、安心感が健康を促進させる事実を、社会疫学の理論と実証データで示した。心の病いが増加する現代において、健康社会実現のヒントに満ちた1冊。
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以下は、上記論文よりいくつか目についた部分の引用です。
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●所得階層別の要介護高齢者の割合
 男女とも、全ての年齢層で、最低所得者層が最も要介護者が多い。
全体で
 最高所得者層 3.7%
 最低所得者層 17.2%
と、5倍もの開きがある

●高齢者における所得階層別の抑うつ群の割合
最低所得者層と最高所得者層の格差は
 男性で6.9倍
 女性で4.1倍

●検診受診と社会経済的地位の関係(男性 所得を3区分して比較)
検診を受診していない者
 高所得者層 16.1%
 低所得者層 24.1%

 教育年数13年以上 14.5%
 教育年数6年未満 34.6% ←2.5倍に増える

●1日歩行時間が30分未満と運動量の少ない者も、喫煙者も、社会的地位の低い者に多い。

●国際的な経験で、医療費の自己負担が増えると、不要な受診だけでなく適正な医療も抑制することが、貧しい人々に特に顕著に作用することが明らかになっている。

●心理的ストレスは最底辺層だけでなく、より高い層に比べて「相対的に低いこと」によっても増える。
リストラからまぬがれた者
 「次は自分かもしれない」という心理的ストレス
 「自主的な」長期間労働など

●「効率」偏重の経済政策の限界
ここ10年間日本で追求されてきたことを表すキーワードは
「景気回復」「経済成長」「小さな政府」「競争」「効率化」
これらのために、社会経済格差の拡大は必要悪として容認されてきた
それが「幸福」をもたらすと信じられていたから
    ↓
しかし現実は
「体感治安の悪化」「自殺」「うつ」「過労死」「長期間労働」「単身赴任」「(父親不在で)育児不安を抱える母親」「老後の不安」「将来に希望が持てない若者・ニートの増加」など
これらは社会経済格差の拡大と無縁のものだろうか
「いま以上の格差拡大」がより多くの人々に「幸福」をもたらすものか
ヨーロッパなどの前例から、むしろ格差を是正し、安心感を高める社会政策拡充の方向へと舵を切る方が「幸福」になる人は多いのではないか
人間的な労働条件を守るルールの下で競争し、生み出した富の再分配を強化するような労働政策・社会(保障)政策を拡充すべき
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#紹介は以上ですが、現在の小泉改革の目指す方向性が何をもたらすのか、いや、すでに何をもたらしたのか、私たちが認識している以上に過酷な現実が各種調査を通してきっちりと提示されています。全体として、アメリカ型市場経済かヨーロッパ型の社民政策かという方向性で考えれば、より後者に近い方が国民の「総幸福」(ブータン)は増加するという考えで、医師会や保険医協会が主張してきた方向性と一致します。「大きな政府か小さな政府か」などという中身を伴わないキャッチコピー的な二者択一論に惑わされているうちに、国民の「総幸福」はどんどん低下し、犠牲者は増え続けています。そして、いま議論されている“医療改革”なるものでそれに拍車がかかることは間違いありません。

子どもの命は「超高コスト社会」で守る

2005年12月05日 | こども・小児科
子どもの安全の問題をもう少し考えてみます。詳しいことは他サイトや報道サイトなどにお任せするとして、突き詰めて考えると子どもの安全を確保するにはアメリカのように全てスクールバスにするしかないかと。

しかし、6学年全員でなく1・2年だけと考えても、日本中の全ての小学校に1~数台のスクールバスを配置して運転手を雇うなど不可能と考えて間違いない。運転手は先生がやるとしても従来の業務に支障を生ずるし、たとえば1・2年だけで開始して3年生4年生に被害が出れば、必ず全学年に拡げろという声が出る。

それ以外の、集団登下校や親の送迎、それらの組み合わせなどは今回のように必ず穴が生じるし、地域の通学路の家庭で下校時に外に出て見守るなど、これからの季節の北国では不可能。監視カメラは犯罪発生後の捜査には役立つかもしれませんが、全ての道に設置する『1984年』社会でなければ意味はない。

スクールバスを買う予算などこの国のどこにもないので、実質的に家庭の負担増になり、更にエスカレートしていく。結局、子どもを安全に育てていくためには超高コスト社会にならざるを得ない。

なんでこんな社会になってしまったのか。スクールバスなんて絶対に反対なのですが。。
ただでさえ体力が低下している子どもたちが、登下校も歩かなくなったらこの国は滅びます。そして、行き帰りの道ばたの雑草や石ころや、雪道や水たまりといった子どもたちの体に馴染んだ風景、車の往来の中で安全に歩くのを学ぶこと、友達との雑談やけんか、いつもと違う寄り道、駄菓子屋さんでの買い食い(最近はコレはない)、こういったものは子どもが「健全に」育つためには不可欠なはずですが、どんどん失われ、子どもの手から奪われていくことになる。

私たちが子どもの頃は、うちに帰らずにランドセルを公園のすみにまとめて置いて、日が暮れるまで野球をしてから帰ったものですが、いまはそういうことはできない。私たち親としても、真っ直ぐ帰ってもらわないと困るし、心配です。最近では中学生同士では学区外に行くことすらできないのだという、、これはいくらなんでも過剰な規則だと思いますが。。

結局、「小さな政府」で「格差拡大社会」を目指せば、安全は自分で守らなくてはならず、際限なく国民の負担が増えていく超高コスト社会に陥っていく。子育て支援の涙金なんかで子どもを生みたいと思う人が増えるわけがありません。

風疹ワクチンは3月までに(院内報より)

2005年12月04日 | こども・小児科
 次号以降でもう一回お伝えしたいと思いますが、来年の4月から麻疹・風疹(MR)混合ワクチンの2回接種(1歳と入学前)がはじまり、麻疹や風疹単独のワクチンは公費ではできなくなります。麻疹だけ済ませて風疹がまだの方がいらっしゃるかと思います。八戸市内の方には通知が行くはずですが、3月までに必ず接種を済ませるようにしましょう。また、2月に1歳の誕生日をむかえる子は、2月に麻疹、3月末までに風疹を済ませるようにするか、4月まで麻疹も待ってもらうかのどちらかになります。3月に1歳になる子は、その前後で麻疹の流行がない場合は4月まで待ってもらうことになります。そうでなければ、風疹は自費の任意接種になってしまうのです。

 このような「移行措置」を設定せずにシステムを変更する国のやり方に対しては、小児科学会や小児科医会でも繰り返し申し入れをしていたのですが、全くもって「現場の混乱を考慮していない官僚の考えたやり方」には腹が立ちます。いい加減にしてほしいものです。

悲惨な犯罪を防ぐことと小泉“所得格差拡大”改革

2005年12月03日 | こども・小児科
今回の広島と栃木・茨城の悲惨な事件については筆舌に尽くしがたく、亡くなられた被害者の女の子のご冥福を祈るという言葉さえ書くのが憚られてしまいます。犯人の一刻も早い検挙と再発防止策の徹底についてはここで改めて議論するまでもありません。

ところで、小泉首相がこのニュースを聞いて「何とむごい…」という言葉を発せられたとの報道があったようです。確かにむごい。親にとってこれ以上の悲しみはありません。それは間違いないし全く問題のない発言です。

しかし、別の視点に立てば、小泉首相のすすめている“諸改革”で、(比喩的表現ではなく)現実に命を失っている人が増えているし、これから更に増加していくことは間違いない。“医療改革”なるものの実態は、単なる国民の負担増に過ぎず、確実に低所得者や高齢者の受診抑制が起こり、そのために死ななくても済んだはずの命が失われていくことになります。
これは、断言してもいい、疑いようのない事実です。
「小泉首相に殺される」と言っても過言ではありません。
それは「むごい」ことではないのか…。

医療改革についてはもう一度あらためて書きたいと思いますが、犯罪についてはすでに明らかなデータは出ています。これは直感的にも理解できることですが、所得格差が拡大すれば、犯罪発生率は高くなる。医療についても同じで、所得が低いほど要介護率が高い。

「アメリカ50州における所得格差と殺人発生率」(近藤克則:健康格差社会.月刊保団連2005.11)のグラフをみてみます。(スミマセン、ネット上で同じものを探せなかったので文章で説明しますが)
 横軸に所得格差(下位50%の世帯所得が全世帯の所得に占める割合)をとって、
  左(数字が小さい)ほど所得格差大
  右(数字が大きい)ほど所得格差小
 縦軸に殺人発生率(人口10万対)をとると、
見事なまでに、左上(所得格差大で殺人発生率高い)から右下(所得格差小で殺人発生率低い)に向けて州が並んでいます。左上の方から順に拾っていくとルイジアナ、ミシシッピ、ニューヨーク、アラバマ、テキサス、テネシーといった順になり、逆に右下の方からみていくと、メーン、アイオワ、ネブラスカ、アイダホ、ミネソタ、ハワイ、ユタといった州が並びます。

左上の“所得格差大で殺人発生率高い(ブッシュ大統領の支持基盤でもある)州”が、今年のハリケーン・カトリーナによる「二次被害」で大きな問題となり、大統領支持率低下の原因となったことは記憶に新しいところですが、そのニュースが駆けめぐっていたまさにその時に、ブッシュ=アメリカ型の所得格差拡大社会を目指す小泉政権が圧勝したわけで、医療改革の行く末も残念ながらこの国の「国民が選んだ選択」と言わざるを得ません。

そして、これからの話ではなく、日本はすでに所得格差拡大社会になっているということも各所で指摘されています。手元の資料に、所得格差をあらわす指標として【上位2割の最高所得層と下位2割の最低所得層の所得総額の比率】を示したグラフがありますが、この格差が1960年代から80年代前半まで10倍前後だったものが、90年代には30倍前後まで上がり、1997年から急上昇して2000年には100倍を越え、小泉首相就任後1年たった2002年には168倍にまで達しているのです。(このグラフや最新データも探せてません)

今回の犯罪に戻ると、片やペルー人、片や犯人未検挙の状態であり、一つ一つの事件は当然のことながら犯人が悪く、それぞれについて小泉首相の責を問うことはできませんが、社会全体というマクロの視点でみていけば、安全神話の崩壊と所得格差の拡大は密接な関連があるということも明白な事実なのです。

年々興味が薄れる「新語・流行語大賞2005」

2005年12月02日 | NEWS / TOPICS
いつのまにか師走、こんなものが発表になる季節になってしまいました。コトバと社会という2つの切り口から毎年チェックしてきたのですが、なんだか興味も関心も感嘆もサプライズもなくなってきてしまいました。

2005年新語・流行語大賞
 小泉劇場 想定内(外) クールビズ 刺客 ちょいモテオヤジ フォーー!
 富裕層 ブログ ボビーマジック 萌え~
 →ことばの解説
 →2005年候補語一覧と解説

小泉郵政選挙関連のコトバが多いのも白けムードを誘っているのかもしれないし、例によって知らない言葉もあったりする。ブログとか萌え~なんてのは今年の言葉という気がしないし。
この言葉の中で10年後に生き残っているものがあるとすれば、、さて、どれでしょうか。「萌え~」かな…。

ちなみに、昨年書いた流行語大賞2004を読むと、なんだ、同じようなことを書いているな…。(^^;;
 チョー気持ちいい 気合だー! サプライズ 自己責任 新規参入 セカチュー
 中二階 って言うじゃない… ○○斬り! …残念!! 負け犬  冬ソナ
この中では「自己責任」だけが肥大しながら生き残っていると言えるのでしょう。
嫌な言葉だけが生き残る。。

WHOが喫煙者を雇用しない政策を導入 付)市職員の喫煙と喪失コスト

2005年12月01日 | 禁煙・防煙
「喫煙者は雇いません」 WHO、職員採用で新政策
 【ジュネーブ1日共同】たばこを吸う人は雇いません-。世界保健機関(WHO)は1日、喫煙者を雇用しない政策を導入した。たばこが健康に有害であることを訴える国連専門機関として、政策の一貫性と「反たばこ」のイメージ強化を狙う。
 WHO当局者によると、職員の新規採用で喫煙者を排除するのは国連諸機関でWHOが初めて。
 WHOは、喫煙を原因とする疾患で毎年世界中で500万人近くが死亡していることを挙げ「たばこの害を減らす運動の先頭に立つ機関としての責任を雇用面でも果たさなければならない」としている。

参考『市職員の喫煙と喪失コスト』…某掲示板への書き込みの再録

[4153] 2005/11/07(Mon) 11:28

試しに計算してみましょう。
例えば、年収400万の職員が、年労働日数240日、一日実労働時間7時間とすると時給は2,381円…(A)
勤務時間内に5本喫煙して、ぞれぞれ5分かかるとすると、喫煙時間は25分/日=100時間/年…(B)
喪失コストは(A)×(B)で年間で一人あたり238,100円/年となります。

これに、職員数×喫煙率=喫煙職員数(C)を掛けると、その職場での総喪失コストが試算できます。(C)=300人とすると、
総喪失コスト=71,430,000円/年
(平均年収や職員数などの変数は各職場の数字を当てはめてみてください。八戸市のデータは私にはわかりませんので)

この試算方法は八戸市長(新旧)にも送ってあります。
(B)→1年のうち14日はタバコを吸うだけのために費やしている(!)。
市職員なら、一人14日分の喫煙のために市民の税金が使われていることになります。

[4158] 2005/11/08(Tue) 18:09

ここで議論するつもりはないので今回限りにしますが、事実を知って理解していただくことは大事です。
外で喫煙している職員はただサボっているわけではなく、ご指摘のように依存症でやめられない「病気」であり、そういう人たちが日本中に3000万人もいます。
問題は、喫煙者が悪なのではなく、タバコが悪だということで、そこで議論のすり替え(すれ違い)が起きています。

禁煙は家族、本人、周囲の人への愛です。
皆さんのお知り合いで、50代60代で亡くなった方はいらっしゃいませんか。その方は、タバコを吸ってませんでしたか。

社会的規制は、受動喫煙を防ぐのは当然のこととして、3000万人の依存症患者の命を救うために必要なことなのです。
中途半端な対策(建物内分煙など)は、喫煙者の命を救いません。「喫煙者に優しい対策」というのは、実は喫煙者を見殺しにすることです。

一見厳しいと思われる対策も、例えば千代田区の路上喫煙禁止条例は1年後に9割以上の人に支持されているという事実もあります。1割の人のために、9割が我慢し被害を受けていたということを、公的な立場にある人(市長や市職員を含む)は認識すべきでしょう。

ご紹介のようなタバコ税大幅増税が、実は最高の政策であり、日本のようにタバコが安い先進国はありません。喫煙者天国。
長野県では八戸市のような建物内禁煙はなく、県の施設は敷地内禁煙であり、職員の喫煙率も大幅に低下しています。社会的規制は「喫煙者を虐げるため」ではなく禁煙へと導くためであり、そのためには禁煙治療や知識の普及なども一緒に進めていくことが必要です。

[4159] 2005/11/08(Tue) 18:10

前記の試算は私が考えたわけではなく、諸外国でのデータでも大体喫煙者は1か月の給料分、非喫煙者よりも高くつくことがわかっています。

それだけでなく、ニコチン切れによる仕事の能率低下、喫煙室設置代、清掃代、高くつく医療保険費(これが大きい)、働き盛りの職員の病欠・早死による人的・業務損失などのコストなども加わることになり、最近では最初から喫煙者は採用しない企業や医療機関、喫煙者に奨励金を出して禁煙治療を受けさせる職場も増えています。

青森県でも、教職員の禁煙治療のために大幅な補助を出してます。一時的にお金をかけてでも、禁煙してもらうことが本人や家族のためでもあり、企業であれば株主の利益、自治体であれば納税者(職員の雇用主)である県民の利益になるわけです。

国内では、税収など2兆円に対して、社会的損失7兆円、差し引き5兆円もロスしていることになり、喫煙者の損失分を非喫煙者が払っている構造になっていることを「喫煙者に寛容な非喫煙者」にも知っておいてほしいと思います。

また、学校や職場や路上など公的なところで吸えないばかりか就職にも不利となれば、子どもたちもタバコを吸い始めないし、禁煙へのきっかけにもなります。

面白いですね。実はこういう反応が返ってくるのは一部の大人だけで、小中学生にタバコの話をすると「それならどうして国がタバコの販売を許可しているのか、禁止しないのか」という至極真っ当な質問・疑問を返してくれます。

実は国がJTの5割以上の株を所有している実質国営企業なのですが、そんなこともほとんど知られていません。国が国民の命を奪う商品を売って、その一部を税収にしていることこそが、この問題の本質なんです。喫煙者は国の政策の被害者なのです。(更に長くなりそうなので以下省略しますが)

[4166] 2005/11/10(Thu) 01:08

こうやって読ませていただくと、いかにJTや喫煙擁護派がまき散らした「迷信・幻想・ウソ・詭弁」(=ほかの先進国でこんなこと主張したら笑われるか呆れられるだけ)が、この社会に根深くはびこっているかがわかりますね。いくつかの質問がありましたのでお答えしますが、長くなりますのでご容赦下さい。(今度こそ今回限りにします)

子どもたちにタバコ問題を教えるときのポイントは以下の3点です。
kappaさんのおっしゃるように「有害性」をいくら言っても、ほとんど効果がないという事実があります。それを教えるのは重要ですが、以下のポイントを付け加えないと効果がありません。

(1)「タバコはストレス解消になる」というのは全くの大ウソであること

 麻薬中毒患者が麻薬を注射して気持ちよくなったからそれを「ストレス解消」と言いますか? タバコは麻薬そのものです(ニコチンは麻薬に分類されています)。多くの人がそうだと思いこんでいる「喫煙がストレス解消になる」というウソを、医療・教育関係者でも信じている場合があります(というよりも、そういう人の方が多いのも事実)。

 喫煙者は恒常的にニコチン切れというストレスにさらされているのであり、タバコはストレス解消になるのではなくストレスを増加させているのです。そして、禁煙すればストレスの程度が低下するということもきちんと確かめられています(実際に、禁煙に成功した人はタバコから解放された喜びを伝えてくれます)。喫煙者には、うつ状態や自殺が多いのも明白な事実です。

 ここが最大のポイントです。非喫煙者はタバコでストレスを解消しようなどと露ほどにも考えません。これはニコチン依存症という病気そのものの症状なのです。

(2)タバコがやめられないのは意志が弱いからではなく、ニコチン依存症という病気のためであり、その治療として医学的な治療法があるということ

 多くの人は禁煙に失敗してタバコを吸い続けていますが、それは意志が弱いからではなく、前記のように病気の症状であり、やめられない人には「楽にやめられる」禁煙治療があります。

 ちょうど、この治療が保険適応になるというニュースが報道されていました。私たちが長年主張してきたことが、また一つ認められたわけです。

 禁煙治療に保険適用へ、医療費削減狙う 厚労省方針
 http://www.asahi.com/life/update/1109/001.html

(3)タバコ会社のイメージ戦略にだまされないこと

 タバコ会社(日本の場合は国も)は常に綺麗事を言ってタバコ規制が強まるのを妨げようとしていますが、その広告・販売戦略が長年「未成年・女性・途上国」そして、ここに書くと誤解されそうですが(私が言ったり考えた言葉ではありません)「貧乏人・低学歴の人」をターゲットにしてきたことは裁判における数々の証言でも明らかになっています。

 先日ローソンに行ったら、レジのところにピンク色のパッケージで女性の好みそうな小物のオマケのついたタバコがこれみよがしに陳列されていましたが、あれに騙されて何人の女の子がタバコの道に引きずり込まれて命を落とすかを考えれば、コンビニ業界の社会的責任も問われるはずです。

 『悪魔のマーケティング タバコ産業が語った真実』
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822243427/qid=1131547210/sr=1-1/ref=sr_1_2_1/249-8475608-3386724
(聞こえのよい宣伝文句とは裏腹に、同産業は「未成年者にどうやってタバコを売り込んでいくか」に注力してきた実態があると糾弾。「タバコなんざ、ガキや貧乏人に黒人、あとはバカに吸わせておけ」など、耳を疑うような内部関係者の発言が次々に紹介されていく)

 JTが規制に反論 生活習慣病の厚労省部会
 http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20051108010009131.asp
(ここまでお読みいただいた方には、このJTやPMの主張が何を意味するかおわかりいただけると思います)
そのほかにも、

(4)世の中にはタバコに関する多くの「詭弁」がありますが、一つ残らず論破されていること

 大麻については(1)にもとりあげましたが、2つの点でタバコの方が悪質と言えるでしょう(だから大麻は良いということではありません、念のため)。一つは、タバコの方が依存性が高いこと。特に、未成年が吸うと簡単に依存症に陥ること。2つ目は、大麻は非合法でタバコは合法的であるということです。2つめについては説明不要かと思いますが考えてみてください。タバコは精神症状を来さすことが少ない(目立たない)という点がもう一つのポイントで、これも「だから良い」のではなく「だからかえって問題だ」と考えるのが普通だと思います。

 性の問題と絡めるのは問題提起としてはいい考えで、私も未成年の性とタバコについて一緒に話すようにしています。ただし、大きな違いは、性は人にとってなくてはならない大きなテーマであり、その意味と弊害をよく知って判断していく必要があること。そして、タバコは人には不要だということです(=必要悪ではなく、必要ない)。

 タバコは人類の歴史の中でたかだか400年前から知られるようになった“疫病”(麻薬)であり、現在のように大衆化したのは日本では戦後になってからです。元来タバコというものが存在しなければ(あるいはタバコ会社がその国に販売を拡大しなければ)、人は自然にタバコを吸い始めるとはありません。ニコチンが入っていなければ、わざわざ煙を好きこのんで吸う動物はいません。

 それが、前述の小中学生の至極真っ当な疑問・質問に対する答えです。

(5)タバコ問題の本質は、喫煙者が長年(国やJTに)だまされ続けていたことに気づいてもらうこと(=意識改革)

 例えば、1日1箱吸っている人なら、一生で500万円、2箱なら1000万円をドブに捨てて(タバコ会社と国に貢いで)、その結果として10年寿命を縮めて家族の健康も損なうだけだということ。それだけのことを最初から覚悟して吸い始めた人なんて、この世の中に一人もいないはずです。自分だけは大丈夫だと思っていた。でもやめられなくなった。

 ここで、喫煙者に働くのは「正当化」という心理です。でもストレス解消になるから、でも国が認めているから、タバコは文化だから、大人の嗜好品だから、ただの習慣に過ぎない、好きで吸っているんだしいつでもやめられる、禁煙活動はファッショだ、他にも交通事故もアルコールも害があるじゃないか、タバコを禁止したら禁酒法時代に舞い戻って犯罪が増えるじゃないか、などなど涙ぐましい限りですが、その裏でどれほどタバコ会社の幹部が喜んでいるか、少しだけでも想像力を働かせてみてください。

 今の日本で本当に構造改革が必要な分野は、タバコ問題です。これは比喩的表現ではなく、人の命がウソとお金で取り引きされているのが現実なのですが、コイズミ首相は決してこのことを取り上げようとはしません。どうしてかわかりますね?

ここで元の市職員の喫煙の問題に戻って考えてみてください。管理者である市長と、その市長を選んだ主権者であり納税者である市民が考えるべきこと、なすべきことは、市職員だけでなく市民の喫煙をいかに減らすか、子どもたちが一人も吸い始めないために必要な対策は何か、そういう考え方になるはずです。

今回書いたようなことについては、あらためてまとめたり、県内でもシンポジウムのテーマに取り上げるなどして、タバコに関するウソや欺瞞から皆さんの思考を解き放ちたいと考えています。その時にはまた案内したいと思います。
長くなってしまい失礼しました。

[4169] 2005/11/10(Thu) 13:52

κ氏へ。当然、タバコ農家の問題は最優先課題であり、私たちもその対策を提言してきましたが、対策はただ一つ。タバコ税(大幅増税)を財源とした転作補助政策を早急に進めることです。この地域のタバコ農家がJTというタイタニック号と一緒に沈んでしまってはいけませんから、政治や行政の責任は重大です。その意味で、八戸市長選や衆院選の候補者アンケートの項目にも入れ、三村知事とのわいわいミーティングでも提言するなどしてきましたが、知事も個人的には賛成してくれたものの、国や県・市の反応は鈍いのが実情です。禁煙活動はタバコ農家を敵にすることではなく、タバコ農家のことを真剣に考えて取り組んでいるのです。タバコ農家に“配慮”して禁煙政策を進めないのと、私たちの提言と、どちらが本当にタバコ農家のためなのか皆さんもよく考えてみて下さい。