日曜日。一歩も家から外に出ることなく過ごす。我が家にはエアコンというものが存在しないので、あまりに暑い場合には近所のスーパーなどに避暑にでかけなければならないのだが、幸い終日風に恵まれ、家のなかで持ち堪えることができた。
午前中は以前から気になっていた台所のレンジの下と冷蔵庫の下を掃除する。ガスレンジをどかすと、油のような茶色い液状のものが染みのように広がっている。これをアルカリ電解水を含んだウエットペーパーで拭き取って、きれいにする。レンジフードの周囲も同様に掃除して、フィルターを交換する。我が家は料理にあまり油を使わないほうだと思うのだが、それでもけっこうな油汚れになる。冷蔵庫は自分が一人暮らしをしていた頃に使っていたものをそのまま使用していたが、昨年買い換えた。購入するときに電器店の搬入見積もりというものを取ったら、冷蔵庫売り場の表舞台に並ぶような立派なものを入れることができないと判明し、一人暮らし時代の一回り大きい程度のこじんまりとしたものになった。冷蔵庫の上に置いている電子レンジを下ろし、それほど大きくもない冷蔵庫をずらして、埃などがたまった床に掃除機をかけて雑巾をかける。冷蔵庫を設置するとき、搬入をしてくれた係の人に床が傾いているとの指摘を受けていたので、平準器を冷蔵庫の天板に置いて足の高さ調整をしながら慎重に設置し直す。居間にある腰の高さほどの棚の下は妻がきれいにする。その後は普段通りに掃除機をかける。そんなことをしていたら昼近くになった。
昼食の後、1時間ほど昼寝をする。けっこう汗をかいたのでシャワーを浴びようかと思ったが、浴室の排水口周りを掃除して水を使っていたら、汗も引いてシャワーを浴びる気がなくなった。午後になって風が強くなってきたので、風に吹かれながら畳のある部屋で座って昨日民藝館で購入した『民藝』の2017年6月号を一気に読み通す。
かつて民藝協会の会員になろうかと考えたこともあった。夏季学校に何度か参加したり諸々考えたりして、結局は日本民藝館の友の会に入るだけにした。柳宗悦の著作もずいぶん読んで、それなりに感心もした。しかし、所謂「民藝」というのは過去のものでしかないし、宗教のように闇雲に奉るものでもないし、夏季学校の雰囲気にも馴染むことができなかったので、協会の会員というのもどうかと思ってしまったのである。ただ、民藝館に並ぶものを眺めてみると、「私」というものを超えた世界を具象化したものとしての品々の力強さとか美しさを感じる。そういうところが宗教的と言えなくもない。しかし、「私」の問題は自分自身で解決するよりほかにどうすることもできず、他人様と徒党を組んでみたり他人様の言説に縋ってどうこうなるものではない。
陽が傾いて暑さが和らいだのだろう。それまで静かだった公園からボールが壁に当たる音が聞こえてきた。見るとテニスの壁打ちをしている人が一人、野球のボールを壁に当てている人が一人いた。
ふと思い立って、残暑見舞いのはがきを一枚書いた。明日、投函する。