最初は腰の痛みであったが、翌日は膝から上全体が痛むようになった。そのさらに翌日は脚全体が痺れるように痛むようになった。尤も、動けないほど痛いというわけでもないので、生活は普段とあまり変わらない。しかし、このまま動けなくなったらどうしようかと不安を覚える。
警察庁生活安全局地域課の資料によれば、平成18年に自殺によって亡くなったとされる32,155人のうち、10,466人が遺書を残している。遺書を残した自殺者の41.5%にあたる4,341人は健康問題を動機としている。以前にこの資料を読んだ時、病気で先が無いと思えば死にたくもなるだろうなと漠然と思ったが、ただ単に腰が痛いというだけでも死にたい気分に襲われるということが了解できた。
以前「完全自殺マニュアル」という本を読んだ時、どの方法も苦痛がありそうで、「マニュアル」と称するには今ひとつ力不足の感は否めないと感じた。最近は「硫化水素自殺」という言葉を頻繁に目にするようになった。これは塩酸系洗剤と硫黄系入浴剤を混合して硫化水素を発生させ、それを吸引することで死に至るということらしい。しかし、硫化水素というのは火山や温泉の近くで発生している卵の腐ったような臭いの気体のことでもある。嗅覚を麻痺させる作用があるので、当事者は、初めだけその臭いを我慢すればよいのかもしれない。発見者から見たらどうだろう? その臭気に、「げっ!この人、ウンコ漏らして死んでるぅ!」という誤解を受けるかもしれない。美的感覚という点では、やはりいまひとつという感じがする。そういえば、自殺死体のなかには、糞尿にまみれているものもあるそうだ。死んで括約筋が緩むので、溜まっていた汚物が出てしまうらしい。夜、寝る前に用を足すのだから、永眠する前にも用を済ませておきたいものだ。
それにしても、年間3万2千人が自殺するというのは、尋常なことなのだろうか。この統計での「自殺」の定義が不明であり、遺書が無いのに何故「自殺」と断定できるのかという説明もないので、この数字そのものの存在意義がよくわからないのだが、仮にこれだけの人が本当に自殺であったとしても、その多寡を論じることはできないだろう。
厚生労働省の人口動態総覧によれば、平成18年の死亡者総数は1,084,450人である。死亡者の約3%を自殺者が占める計算になる。ちなみに死因順位第1位は悪性新生物で死亡数は329,314人、第2位は心疾患173,024人、第3位が脳血管疾患128,268人となっており、これら上位3原因による死亡数を合計すると全死亡数の58%を占めている。ちなみに交通事故による同年の死者数は、警察庁の資料によれば6,352人である。単に統計から見て、多数を占める原因によって死ぬことが「尋常」だとするなら、自殺による死は「尋常」とは言えないだろう。しかし、死亡原因を「尋常」だの「普通」だのと分類することそのものに意味が無いように思うのである。尤も、そのような分類が意味を成さないのは、死亡原因だけに限ったことではないだろう。
話は戻るが、腰が痛い。脚も痛い。このまま死んでしまいたい。取り敢えず、風呂にバブを入れて入ってみることにする。