万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

企業は無国籍化できるのか―グローバル化のパラドクス

2010年07月04日 15時25分38秒 | 国際経済
 日本国では、パナソニックが外国人の雇用を大幅に増やす方針を表明したこを始めとして、ファーストリーディングや楽天が公用語を英語とするなど、”脱日本企業”の動きが活発化しています。市場のグローバル化が進展する中、果たして企業は、”無国籍化”できるのでしょうか。

 現在では、多くの企業が、”多国籍化”しており、国境を超えてグローバルに事業展開を行っています。しかしながら、本社機能は、その企業が設立された国に通常は置かれており、本社の所在地をもって、企業の”国籍”として理解されています。このため、”自国企業”が、国内外で不当に不利益を蒙ったり、トラブルに巻き込まれたり、あるいは、海外への売り込みを行う場合、しばしば、政府が訴訟を引き受けたり、後ろ盾となったりしてきました(EUでは欧州委員会も・・・)。もし、企業が無国籍化しますと、企業は、こうした政府の保護は受けられなくなります。グローバル化の先端をゆく金融の分野でも、金融危機が発生しますと、民間金融機関が、”自国政府”の救済を受けることは稀ではないでのす。

 WTOの紛争解決手続きでも、政府の役割は重要であり、企業が、直接にWTOに提訴することはできません。企業が海外に事業を拡大すればするほど、ビジネス・チャンスと共に、紛争や摩擦が増加するのですから、企業の”無国籍化”には、自ずと限界があるように思うのです。

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コメント (14)
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