万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ソ連の参戦と北方領土併合の合法性は別問題

2010年07月29日 15時46分21秒 | 国際政治
領土問題、ロシアで認知度上昇=76%「知っている」―外務省調査(時事通信) - goo ニュース
 北方領土をめぐる議論の焦点として、しばしば、ソ連側による日ソ中立条約の一方的破棄の違法性が指摘されています。ソ連側の中立条約違反を問うことは、我が国の領有権の正当性を主張する上でも重要なことなのですが、本日は、もう一歩進めて、ソ連邦による北方領土併合の合法性を問うてみたいと思うのです。

 そもそも、参戦の合法性と併合の合法性とは、別次元の問題です。第二次世界大戦において、ソ連邦は、連合国側との同盟を根拠として参戦し、東京裁判や中立条約違反の議論も、この文脈にあります。その一方で、併合の合法性の問題は、第二次世界大戦による領土割譲の是非を問うものであり、ソ連邦による北方領土併合合法性は、ほとんど根拠のないものとなります(占領はできても、領土の併合はできないはす)。何故ならば、通常、戦後処理として領土を割譲する場合には、当事国のみならず、同盟関係にあった関係諸国の承認も必要であるからです。また、連合国は、不拡大方針を表明しており、大西洋憲章やカイロ宣言にソ連邦が加わっていなかったとしても、連合国の一員であることを対日参戦の根拠とした限り、ソ連だけが、この方針に反することはできないはずです。

 はたして、戦争による領土割譲を要求するロシアの主張に、国際社会は、支持を与えるでしょうか。日本国政府が、領土割譲を認めるとは考えられませんし、旧連合国を含む国際社会もまた、人類の”野蛮帰り”を意味するロシアの要求を認めるとは思えないのです。

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コメント (8)
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