万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アリゾナ州不法移民取り締まり法―州側に分があるのでは

2010年07月30日 15時36分40秒 | アメリカ
アリゾナ州知事が控訴=移民法めぐり混乱続く―米(時事通信) - goo ニュース
 不法移民の取り締まり強化を目的としてアリゾナ州が制定した法律が、連邦地裁において、差し止め命令が出されたそうです。州側は、即座に控訴を決めたようですが、この問題、18世紀に制定されたため、合衆国憲法の条文が曖昧であることも原因しているようです。

 合衆国憲法第1条9節1項には、「現存するいずれかの州が、受け入れを適当と認める者の移住(migration)、もしくは、輸入は、1808年以前において、連邦議会により禁止されないものとする。・・・」とあります。

 この条文をもって、司法省は、移民に関する権限は、連邦側にあると主張しているらしいのですが(確認していないので、間違っていましたら、ごめんなさい・・・)、この表現では、州が、憲法上”州境”のコントロールの権限を完全に連邦レベルに移譲しているのか不明瞭です。また、移住(imigration)という言葉には、二種類の移住、すなわち、他の州からの移住と外国からの移住が混在していますので、この点も、権限の内容がはっきりしません。

 また、この条文を縮小解釈しますと、連邦議会は、1809年以降は、移民の受け入れに制限を設けてもよい、ということになり、実際に、連邦レベルでの移民法が制定されているようです。しかしながら、その一方で、法の執行に関する手続き法の制定は、州に留保された権限と解釈することができます。議論を呼んでいるアリゾナ州の法律は、独自に移民法を制定するものでも、連邦法に違反するものでもなく、連邦レベルの移民法に反して入国した不法移民の取り締まりの強化を定めています。ですから、憲法違反には当たらないと考えられるのです。

 合衆国とは、独立した国家が自発的に結合した形態ですので、常々、連邦と州との間で権限争いが起きるものです。逆から見ますと、各州が、自立性を保つことを前提としているとも言え、連邦政府による強力な中央集権化は、州の自治権を侵害してしまう可能性があります。この議論、アリゾナ州側に分があるように思えるのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする